小惑星のサンプルを採取し地球に持って帰るサンプル・リターン・ミッションは日本の「はやぶさ計画」が有名ですが、アメリカのNASAもまたサンプル・リターンを実施しており、この程そのミッションが成功し、無事に小惑星のサンプルを地球に持ち帰る事に成功しています。

そんなNASAがサンプルを採取した小惑星が今回取り上げる主役。この小惑星は、サンプル・リターンだけでなく、今後100年以上は注目され話題になり続けるかも知れない、そして人類はこの天体に目を傾け続けなければならない事になりそうなのです。

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小惑星ベンヌの試料回収に成功したNASA

アメリカ版の小惑星探査機「はやぶさ」と言われた、NASAの無人探査機「オシリス・レックス」が、小惑星「ベンヌ」の試料を採取し、2023年9月24日無事に地球に送り届ける事に成功しました。

「Copyright ©:NASA Goddard All rights reserved.」
オシリス・レックスが採取した小惑星ベンヌの試料は約250g(推定量)とされており、日本の「はやぶさ2」が地球に持ち帰った試料約5.4gより遥かに多い量です。

NASAは何故、小惑星ベンヌのサンプル・リターンを行ったのか?

NASAが小惑星ベンヌの試料を採取した大きな理由は、ベンヌの公転周期が1.2年と、地球と太陽との距離がかなり近い「地球近傍小惑星」であることで、ベンヌの組成が地球と似ている可能性が高いからです。
すなわちベンヌは、太陽系誕生時(約46億年前)から地表の岩石などの性質がほとんど変化していない事が考えられており、太古の地球の情報を持っている可能性があり、採取したベンヌの試料を調べる事で地球の成り立ちや生命の起源などを知れる事が期待されているからです。

「Image Credit:小惑星ベンヌ(Wikipediaより)」

地球に危険を及ぼす可能性がある小惑星ベンヌ

オシリス・レックスが持ち帰った小惑星ベンヌの試料の分析はこれから詳しい分析が始まり、その分析結果に期待が高まるところですが、地球に近い公転軌道を持つベンヌには、太陽系誕生時の情報を持っている事以外に、地球にとっては今後厄介な天体になってしまう可能性が高いとされています。

「Image Credit:地球と小惑星ベンヌの公転軌道(NASAより)」
上図↑↑は、地球と小惑星ベンヌの公転軌道を表したモノですが、1.2年の公転周期を持つベンヌの軌道が楕円を描く事で地球の公転軌道と重なっており、6年に一度地球に接近はしています。
もちろん、軌道が重なっていて接近しているとは言え、ベンヌがそう簡単に地球に衝突するモノではないのですが、ただ、今後の軌道計算を行ったところ非常に不安となる予測が出たそうなんです。
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それは、2182年9月24日にベンヌが地球に急接近し、場合によっては地球衝突に繋がる危険があるそうなのです。

「Image Credit:iStock」
直径が約500m、質量は約790億トンもある小惑星ベンヌ。この天体が秒速10キロ以上もの速度で地球に衝突した場合、広島型原爆の約8万倍に相当する爆発が発生すると予想され、もしこれが都市部に落下した場合、都市もろとも消滅する程のエネルギーがあると考えられています。

「Copyright ©:メタボールスタジオ All rights reserved.」

小惑星ベンヌに地球衝突の危険があっても今の人類なら乗り切れる!?

小惑星ベンヌが地球最接近するとされる2182年9月24日。とは言っても必ずしもこの日に地球に衝突すると断言しているのではなく、衝突の確率は0.037%(2,700分の1)と非常に低いモノ。
ですが、万が一ベンヌの地球衝突が避けられない事態となった場合、人類に危機を回避する方法はあるのでしょうか?

実は、ベンヌに限らず、今後もし地球に危険を及ぼす天体がやって来るとなった場合、人類はその備え(対策)を既に始めています。
それが、以前も紹介した「DART計画」がそのひとつです。

「Image Credit:DART計画の想像図(Wikipediaより)」
2022年9月に行われたDART計画は、直径170メートルほどの小惑星に、質量500キロの人工物(無人探査機)を秒速約6キロで衝突させ、小惑星の軌道を変えようとする実験で、衝突させた小惑星の公転周期を32分も遅らせる事に成功したのでした。

つまり、人工物を天体に衝突させれば軌道を変えられる事がこの実験で証明出来たワケですから、もし今後、小惑星ベンヌの地球衝突が現実的になった場合、地球に接近する遥か手前でベンヌに人工物を衝突させれば軌道を変えられる可能性が高いのです。

もちろん、ベンヌは直径500メートルもある巨大な天体ですから軌道を変える事はかなりの困難が予想されます。でも、地球から数千万~数億キロ離れた地点でわずか1度でも軌道を変えられば、地球に接近する頃には軌道角度を大きく逸らせる事が出来ます。すなわち、地球衝突を数年~数十年前にわかっていればDART計画のような危機回避対策は有効になって来るのです。
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