先月までほとんど話題に上がらなかった「アトラス彗星(C/2019 Y4)」。今月になり視等級が7等級を超え、だいぶ明るく観測しやすくなって少しずつ注目されつつあります。
しかしここに来て残念な情報も!?核が崩壊して徐々に暗くなりつつあるとか?
順調に光度を増せば、満月よりも明るくなる今世紀最大の大彗星と期待されていただけに非常に残念ですが、もしかしたらまだ諦めるのは早いかも知れません。

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アトラス彗星とはどんな彗星なのか?

2020年4月。世界中が新型コロナウイルスで大騒ぎしている中、今世紀最高の大彗星になるべくひっそりと?太陽に接近しつつあるアトラス彗星。

アトラス彗星が発見されたのはつい最近の2019年12月28日。
ハワイにある小惑星地球衝突最終警報システム(Asteroid Terrestrial-impact Last Alert System)通称ATLAS(アトラス)により発見された事からその名が付けられました。
この彗星は太陽系の遥か外縁部からやって来る長周期彗星で公転周期は6,124年もあるとの事。つまり、私たちが今回の大接近を逃がせば、事実上もうこの彗星を見る事は出来ないワケです。

「Image Credit:国立天文台 天文情報センター
当初の予想では、最も明るくなった状態で満月並み以上だと言われており、今世紀最大の大彗星との呼び声も高かったアトラス彗星ですが、太陽に接近するに連れてその期待度の高さもトーンダウンしつつあるようです。

アトラス彗星の期待度が示す軌道経路

アトラス彗星はこのまま順調に軌道を進むと2020年5月31日には最も太陽に接近する近日点を通過します。
この時に、太陽熱でコマ(核)から噴き出したガスや塵で一気に光度が増し、木星の直径(139,820キロ)の2倍以上の30万キロメートルまで広がると予想されています。

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もしこの状態になった時、地球から観測出来るアトラス彗星の光度はマイナス20等級以上と、満月の光度がマイナス12.7等級ですから漆黒の闇を明るく照らす満月よりも遥かに明るく輝く事になります。
しかしこれはあくまでも机上の計算上での事で、実際の彗星は非常に予測不可能な動きしており、予測される明るさに大きな誤差が生じるため、本当の明るさは誰にもわからないというのが現実です。
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アトラス彗星の観測位置と明るさや今後の見え方

太陽に接近しつつあるアトラス彗星。
そのため徐々に明るさも増しつつあり、見頃は4月後半から6月中旬にかけてで、天体望遠鏡を持っていない人でも双眼鏡があれば北西方面の夜空を見上げ十分に観測する事が出来ます。

「Image Credit:AstroArts
尚、アトラス彗星を観測する際に目印となるのが、この時期とても明るく輝いている金星(宵の明星)。日の入り後、西の空を見上げれば誰でもハッキリとわかるひと際明るい金星が見えます。
そこから北極星(ポラリス)との中間あたりにアトラス彗星を確認する事が出来ます。
また、今後のアトラス彗星の見え方ですが、5月末の近日点まで徐々に光度が増して来ると予想されますが、残念ながらマイナス20等級までは明るくならないのが大方の予想で、おそらくは1等級前後ではないか?と予想されています。

期待外れ?崩壊でアトラス彗星は明るくならない?

今世紀最大の大彗星と期待されていたアトラス彗星ですが、どうもコマ(核)が崩壊してしまったとの情報が!?
つまり、元々脆かったコマが太陽に近ずくに連れて崩れていき、崩壊してしまった可能性があるとの観測報告が複数あるようなのです。
これが事実なら「大彗星」の可能性はほぼゼロ!2013年に大いに期待されたアイソン彗星に続き、期待外れに終わりそうです。

2020年は新型コロナウィルスの影響で行動自粛が叫ばれている中、自宅からでも楽しめる大彗星に期待していたのですが残念です。
ただ、大彗星という過度な期待ではなく、彗星を観測出来るという星空観測の楽しみのひとつとして静かにアトラス彗星の動きを追ってみるのも良いのではないでしょうか?
もしかしたら、2011年に南半球で観測されたラヴジョイ彗星くらいにはなるかも?

「Image Credit:2011年、オーストラリアで観測されたラヴジョイ彗星(Wikipediaより)」

彗星の基本知識を身に着けよう!

過度な期待はしないにせよ、彗星がやって来るのは事実です。
そこで彗星を観測するにあたり「彗星ってどんな天体なのか?」という基礎知識を覚えておきましょう。

まず、彗星と聞いて多くの人が思い浮かべるのが有名なハレー彗星のような長い尾を引く星の姿ではないでしょうか?

「Image Credit:1986年に訪れたハレー彗星(Wikipediaより)」
通常、彗星はぼんやりとでありますが輝く本体と、そこから長く伸びる光の尾で構成されていますが、彗星の本体は”汚れた雪玉”と称される数百メートル~数十キロ(通常は数キロ程度)の氷や岩石で出来たコマ(核)の小さな塊に過ぎません。
それが太陽熱で熱せられる事で、ガスや塵がコマからジェット状に噴き出し、時には数キロほどの小天体が木星並みになるほど見た目上で巨大化します。

「Image Credit:彗星探査機ロゼッタが撮影した「チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星」のコマ(核)(ESA/Rosetta/NAVCAMより)」
そして彗星の構造ですが、コマ(核)から噴出したガスや塵が太陽風に煽られて長い尾を引いた状態になり、その尾も2つあり、太陽の正反対側にほぼ直線状に伸びて行くイオンの尾と、放出時期や塵の大きさの分布等で分かれ、いくつかの要素が絡み合って曲線状に伸びて行くダストの尾があります。

「Image Credit:国立天文台 天文情報センター」
これが彗星という天体の基本知識ですが、中には彗星と流星(流れ星)を同じモノと誤解されている人もいます。
もちろん彗星と流れ星は全く違うモノですし、流れ星は塵が地球の大気圏に突入する事による大気摩擦で一瞬だけ明るく光るモノ。
彗星は解説したように、氷と岩石の小天体が太陽熱で膨れ上がって輝く天体であるという事を知っておけば、より彗星観測を楽しめるのではないでしょうか。
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