地球に隣接している惑星は金星と火星ですが、地球に近いが故に、昔からこの惑星には金星人や火星人が住んでいると想像されて来ました。
しかし、観測技術が発達した現代において、金星人や火星人はおろか生命すら存在し得ない惑星であることが判明しています。
ただ、最新の研究によると、太古の金星や火星は地球に似た環境だった可能性があるらしいのです。
大昔の金星や火星ってどんな惑星だったのでしょうか?また、地球に似た環境だったなら生命も存在していたのでしょうか?
現在の金星の環境とは?
金星は地球に最も近い惑星(最接近距離:約4,000万キロ)で、大きさや密度も地球に似ていることから地球と金星は”姉妹惑星”とも呼ばれて来ました。「Image Credit:Wikipedia」
しかし、地球と似ているのはそれだけで環境は地球とは全く別モノの惑星であり、
地表の平均温度は摂氏500度近い灼熱。
気圧は水深900mの深海に相当するほど強烈な圧力のある90気圧。
大気中はブ厚い雲に覆われており地表には太陽光は届きません。
そんな過酷な環境を持つ金星には、当然ながら生命などいるハズもなく生命の源となる水も蒸発して存在していないのです。
太古の金星は地球に似た環境だった
約30億年前までの金星は、現在の姿からは想像も出来ない環境だったとNASAの研究チームが発表しています。その姿は、非常に地球に似た環境だったとの事で、その頃の金星には海が存在し、大気層も薄く気候も穏やかで生命が存在出来る環境だったと言います。
「Image Credit:約30億年前の金星の想像図(Goddard Space NASAより)」
ただこの時代に金星に生命が居たか?どうかは不明で、30億年前の地球ですらようやく原始生命体が誕生した頃です。
金星の環境が激変した原因
現在の金星は、とても生命が存在出来る環境ではなく超高温・高圧の過酷な環境なのですが、30億年前は温暖だったとされる金星が何故このような環境になってしまったのでしょうか?その原因の1つは太陽に近過ぎた事。(金星の太陽からの平均距離1億820万キロ)と、そして最も大きな原因となってしまったのが金星の自転速度の遅さにあるようです。
地球の自転速度が1周24時間なのに対し、金星は1周するのに243日もかかってしまい、自転が遅いことにより大気や熱が宇宙空間に放出されず溜まってしまい、二酸化炭素を中心とした厚い大気層が出来てしまいます。
これにより極端に温室効果が高まり、高温・高圧な環境になってしまったと考えられています。
「Image Credit:厚い大気に覆われた金星(Wikipediaより)」
現在の火星の環境とは?
地球のスグ外側を公転する火星と地球との距離は最も地球に接近したときで約5,500万キロで、大きさは地球の半分ほどで質量は10分の1ほどの惑星です。「Image Credit:Wikipedia」
また、火星には地球の100分の1程度の希薄な大気も存在し地表の平均気温はマイナス40度以下。
超高温・高圧な金星に比べると火星はまだ地球に近い環境だと言えますが、生命が存在出来るほどの環境ではないようです。
太古の火星もまた温暖な環境だった?
今から40~30億年の昔。火星もまた厚い大気に覆われ、地表には海の広がる温暖な環境だったとの研究結果が出ています。当時の火星は豊富な水を湛えた海が存在し、その面積は火星全体の20%を占めるほどだったといい、実際、これまでの火星探査で火星に水が豊富にあったという痕跡は見つかっており、もしかしたら生命も生息していた可能性もあるかも知れません。
火星が変貌してしまった原因とは?
太古の火星内部の活動も活発で、地球のように高温の核とマントル流で磁場が発生し火星全体を覆い大気を守っていたと考えられています。しかし、質量の小さい火星内部は徐々に冷えてしまい、それと同時に磁場も失われて行き厚かった大気も少しずつ宇宙空間に流失し、豊富だった水も蒸発した事で現在のような赤茶けて荒涼とした火星になってしまったようです。
「Image Credit:Wikipedia」
金星と火星に生命が存在する可能性
太古の金星と火星は、地球のような温暖な環境があったとされていますが、当時そこには生命がいたのか?どうかは定かではありません。しかし、もしかしたらかつての金星と火星に生命が居て、今もその生き残りがいるかも知れないという示唆があるそうです。
では、その示唆とは何なのでしょうか?
これについては、驚きの発表がありましたのでご紹介したいと思います。
過酷な環境の金星でも雲の中は快適で生命も生き残れる?
ある科学雑誌に掲載された金星の生命についての驚きの発表。金星の地表は超高温・高圧で生命にとっては過酷な環境ですが、実は、金星大気の上層部は比較的温度が低く摂氏0~60度ほどで気圧も0.4~2気圧の領域があると言います。
この領域を撮影したJAXAの金星探査機「あかつき」は、大気上層部にある黒いシミを捉えているのです。
「Image Credit:金星大気に見られる”黒いシミ”(NASAより)」
この黒いシミの正体について専門家は、光吸収性を持った地球のバクテリアのような微生物が繁殖しているのではないか?との推測しています。
かつては温暖だった金星。
もしこの時代に生命が誕生していたとしたら、その後過酷な環境に変貌したこの惑星で生命が生き残るため、大気上層部に避難し、現在も生きながらえているかも知れません。
環境の変化で蒸発した火星の水も地下に残っていた
かつては豊富な水を湛えていたであろう火星。現在では、地表に水があった痕跡と一部氷として残ってはいるものの液体の水はどこにも見当たりません。
しかし、火星の南極の地下約1,500mの地下に液体の水として維持されている、幅20キロほどの領域(湖)が発見されています。
「Image Credit:USGS ASTROGEOLOGY SCIENCE CENTER, ARIZONA STATE UN」
火星軌道上から探査を行っている欧州宇宙機関(ESA)の火星探査機「マーズ・エクスプレス」のレーダーによる観測で、南極部の地下に液体の水(上図の濃い青色の部分が水)らしきモノを確認し、また南極の地下だけでなく、ほかの場所にも湖が存在し火星にはまだ豊富な水が残っている可能性あると考えられています。
さらに、磁場の存在しない火星。
もし地表に水があったとしても磁場に守られていまないため、有害な宇宙線で汚染されてしまい生命の生息には適さない環境になってしまうかも知れません。
ですが、深い地下なら宇宙線も届かず、生命生息が可能な水の領域が確保されている事も考えられます。
もちろん、それは可能性であって、これからの詳細な調査が必要になって来ますが、火星もまた太古の生物の生き残りが地下で進化を続けているかも知れません。
いずれにせよ、これまで生命の存在が絶望視されて来た金星と火星。
大昔が温暖な環境だったのに加え、現在も生命存在の可能性は残されています。
今後の調査で、私たち人類が初めて目にするかも知れない地球外生命体は、金星か火星のどちらかになる確率も大きな期待となって来ました。