水星は、太陽系惑星の中で太陽に最も近い惑星である事は誰もが知り、そして質量と直径の両方でも太陽系で最小の惑星です。
また、太陽に近いという事もあり、探査機を送り込む事が困難なのも水星なのですが、それでも人類は水星に探査機を送り込み詳しい調査に挑んでいます。
そんな中で判明した水星の謎解明。今回は分かって来た水星の新たな情報について簡単ですが、少し解説してみたいと思います。
水星ってどんな星なのか?
最初にもお伝えしましたが、水星は太陽系で最も太陽に近い軌道を公転する太陽系第一惑星で、太陽との平均距離は約5,800万キロと約88日間で太陽を1周していますが、水星は太陽系惑星の中で最大の軌道離心率(約0.21)を持つ楕円軌道を描いて太陽を公転しています。「Image Credit:水星(左)と水星の公転軌道(右)(Wikipediaより)」
太陽系第三惑星である私たちが住む地球と太陽の距離が約1億5,000万キロという事を考えると、水星からは太陽が地球の3倍の大きさで見るのかも知れません。
それだけ太陽に近い水星ですが、当然ながら地表温度は超高温になってしまい日中の温度は摂氏400度以上なのですが、一方、夜や太陽光の当たらない影の部分の温度はマイナス160度と極端な温度差があり、常識的に考えればこの惑星はとても生命が存在出来る環境ではないと思われます。
また、水星は太陽系の惑星の中でも大きさ・質量ともに最小で、それは衛星である木星のガニメデよりも小さく、月よりも少し大きい程度。それが惑星・水星です。
「Image Credit:NASA」
小さな惑星・水星は質量や重力も小さく、そのため大気維持が困難で太陽風の影響を受けやすいという太陽との距離関係もあり、水星に大気はほどんどなく月のようにむき出しの地表が露わになっています。
水星探査を行う目的
質量も小さく大気もほとんどない水星のため、一見、この惑星を探査する魅力はあまりないと考えがちですが、それでも人類は水星に3機の探査機を送り込んでいます。最初に水星探査を行ったのは1973年のマリナー10号。
マリナー10号は、金星と水星の内惑星の探査を目的としてNASAが打ち上げ、水星表面の撮影と磁場や表面温度の観測を主に行っています。
「Image Credit:Pics about Space」
次に水星に向かったのがNASAが2004年に打ち上げたメッセンジャー探査機。
メッセンジャーが水星探査に向かった大きな目的は、水星に太陽系形成の謎を解くヒントが眠っていると考えられた事と、これまで注目度の低かった水星への探査が遅れているという事があったと言われています。
「Image Credit:Wikipedia」
そして最も最新の水星探査機は2018年に打ち上げられた、日本の宇宙航空研究開発機構 (JAXA) と欧州宇宙機関 (ESA) の共同プロジェクトによる水星探査計画「ベピ・コロンボ」。
このミッションは水星磁気圏探査機(MMO)と水星表面探査機(MPO)の2機の探査機から構成され、MMOはJAXAが運用し水星の磁場観測、MPOはESAが運用し水星の画像の撮影等を行っています。
2度の探査でわかった水星の事実
水星は質量の小さい惑星ですが、密度は太陽系の惑星の中でも地球に次いで高く、水星の大きさの3分の2から4分の3にも及ぶ巨大な核が内部に存在するという事が判明しています。この巨大な核により、強力な磁場を持っているということをマリナー10号が発見しています。
「Image Credit:Wikipedia」
灼熱の惑星に水が存在した!
探査機メッセンジャーが発見した水星の真実のひとつが、太陽に最も近いハズの灼熱の惑星にも関わらず水の存在を確認したという事です。もちろん、表面温度が摂氏400度を超える大地に水が存在することは考えにくいですが、水星の極地方には、永久に太陽光が射さないクレーターの内部(永久影)の部分があり、そこに大量の氷が存在することが確認されています。
「Image Credit:水星の北極圏に見られる水の氷(Wikipediaより)」
なお、水星で確認された水の氷は、もともと水星にあったワケではなく太陽系創世期に彗星や小惑星が衝突したことでもたらされたと考えられており、地球に大量の水が存在するのも同じではないか?とも考えられています。
激しい地殻運動が創り出した地形
これも探査機メッセンジャーによってもたらされた発見ですが、地表に深さが3キロ、長さが400キロにも及ぶ巨大な渓谷があることが確認されています。さらには、高さが3キロ、長さが1,000キロもある断層があることも判明しており、何故このような巨大な渓谷や断層が出来たのか?現段階では推測の域ですが、水星の岩石で覆われた内部にはマントルの対流があり、地球と同様に地殻変動が起こっていると考えられ、それに伴う地殻の収縮で断層や渓谷が形成され頻繁に地震活動も起こっているため断層が形成されたのではとも考えられています。
「Image Credit:アベディンクレーターの内側に見られる断層(Wikipediaより)」
日本のJAXAが行う水星磁場観測ミッション
日本のJAXAと欧州宇宙機関ESAとの共同で水星探査計画「ベピコロンボ」ですが、6年の航海を経て水星軌道に入り、JAXAの磁気圏探査機(MMO)は水星の磁場の詳細な解明、希薄な大気の解明、地殻活動の解明等といった様々なミッションを行います。これまで計3回の水星探査が行われていますが、水星探査が少ない理由のひとつに探査機を水星軌道に乗せるのが困難だという事があります。
水星は太陽に近いため太陽の重力の影響を受けやすく、水星に探査機を接近させる際に、太陽の重力に引っ張られて自然に探査機の速度が増してしまうため減速のための燃料を多く必要とします。
水星探査ミッション「ベピ・コロンボ」が水星に到達するのに6年もかかるのも、燃料消費を抑えるために時間をかけて少しずつ接近させる計画が立てられているようです。