地球に最も近い惑星でありながら、謎多き惑星「金星」。
この惑星には、これまで何度か探査機が送り込まれ調査が行われて来ましたが、人類の介入を阻む特殊な環境故、なかなか調査が進まないのが現状です。
そんな金星にNASAとESAはかなり踏み込んだ探査を行おうと計画しているようで、その計画のひとつに人類が移住可能か?と調べる事も含まれているようです。
この計画を聞いて、金星がどんな惑星なのかを知っている人は「えっ?」って思うかも知れません。
果たしてその計画の真意は何なのでしょうか?
地球と似ているようで全く似ていない金星の実態
今回のテーマは「金星が移住できる惑星に当てはまるのか?」なんですが、その前に金星がどんな惑星なのか?を理解する必要があります。お隣りの惑星・金星は地球との最短距離が約4,000万キロとかなり近く、地球からも大きくハッキリ見える惑星です。
「Image Credit:国際宇宙ステーション(ISS)から見た金星(NASA/JAXAより)」
そんな金星は近いだけでなく、大きさや質量、密度等が地球と良く似ており「地球の姉妹惑星」とも呼ばれて来ました。
「Image Credit:Wikipedia」
しかし、金星が地球と似ているのがはそれだけで、実際は地球とは似ても似つかぬ過酷な環境である事が調査が進むに連れて判明して来ています。
例えば、地球の平均気温が約15度なのに対し金星の平均気温は約450度以上と灼熱環境であり、その原因となっているのが外からは地表が見えないくらい厚く立ち込めている二酸化炭素の大気で、これが極端な温室効果をもたらし熱を封じ込めており、また地表の気圧も約90気圧と地球の海の水深900メートルに匹敵する超高圧環境となっています。
「Image Credit:金星地表の想像図(ESA/Christophe Carreauより)」
このような金星の荒々しい環境が原因という事もあり、なかなかその調査が進んでいないという事もあったのです。
本格的な探査計画で金星は身近な惑星になれる?
こんな過酷な環境を持つ金星に対しNASA(米航空宇宙局)は「DAVINCI+」と「VERITAS」の2つのミッションを計画し、ESA(欧州宇宙機関)は「EnVision」の3つの探査計画を2029~2031年にかけて実施する予定になっています。DAVINCI+ミッションの概要
2029年に打ち上げ予定になっているDAVINCIミッション(正式名称:The Deep Atmosphere Venus Investigation of Noble gases, Chemistry, and Imaging)は2031年に金星に到達し、これまで探査が難しかった金星大気圏への突入を目指しています。DAVINCIミッションでは、金星の大気に突入する事によって大気成分の化学的分析や地表状態を高解像度で撮影し情報を取得する事等の調査が行われる予定となっています。
VERITASミッションの概要
VERITASミッションでは、探査機が金星の軌道上から地表の高解像度でマッピングをし、金星の表面構造や火山等の地殻活動データ分析等を行う事になっています。「Image Credit:金星地表をマッピングする探査機の想像図(NASA/JPL-Caltechより)」
EnVisionミッションの概要
EnVisionミッションの目的は惑星科学による謎に迫る事にあります。「Image Credit:EnVisionの概念図(ESAより)」
隣接し合った地球と金星が大きさや質量、組成がほぼ同じにも関わらず、何故これほどの環境の変化に至ったのかを調べ金星のこれまでの歴史にも迫って行き、また太古において金星が地球に近い環境で生命を宿していた可能性があるのか?等についても調べる予定となっています。
金星が居住可能なのかを調べる目的も?
この3つのミッションにおいて金星の実態を調べる事も重要な目的ですが、これに加え、かつての金星の環境が居住可能だったのか?について調査する目的もあるようです。それには2020年の探査で見つかった金星の上層大気に生命の痕跡ではないか?と思われるホスフィンと見られる物質が検出された事にあります。
「Image Credit:金星の上層大気にホスフィンと見られる黒いシミ(NASAより)」
ただ、このホスフィンと見られる物質は再検証で二酸化硫黄である可能性もあり、生命の痕跡とは関係ないとの見方もあり、この正体を調べるためにもNASAとESAが実施予定のミッションは重要な意味を持っており、もしかしたら他に生命の痕跡がみつかるかも知れません。
しかし、条件的にはとても移住可能との結論は出ないでしょう。それほど金星の環境は生命にとって絶望的と言えるほど過酷なのです。