今、人類の宇宙探査ではカイパーベルト天体探査がアツい!
とは言っても、カイパーベルト天体って何?と思う人も多いのではないでしょうか?
カイパーベルト天体(エッジワース・カイパーベルト)とは、地球から遥か遠くの深宇宙にある太陽系外縁天体群の事です。
この天体に目を向けている人類。いったい、そこに何があるのでしょうか?
カイパーベルト天体とは?
カイパーベルト天体は、太陽系8番目の惑星・海王星の外側に位置する天体群の事で冥王星もこのカイパーベルト天体に含まれています。「Image Credit:自然科学研究機構 国立天文台」
カイパーベルト天体は、正式にはエッジワース・カイパーベルト天体と呼び、1950年代に2人の天文学者(ケネス・エッジワース氏とジェラルド・カイパー氏)が、彗星の故郷だと提唱した太陽系外縁部に存在する天体で、この2人天文学者の名前をとってエッジワース・カイパーベルトと名付けられました。
しかし、このとき、両氏の提唱するカイパーベルト領域の存在を予測したワケではなく、実際にカイパーベルト天体が発見されたのは1992年でした。
また、冥王星もカイパーベルト天体なのですが、当時は冥王星の外側の軌道を周る天体がカイパーベルト天体とされていましたので、海王星軌道の外側に冥王星に匹敵する大きさの天体が発見されるようになり、冥王星もそれらに含まれる天体と位置づけされるようになったことから、冥王星は惑星から準惑星に格下げになり、現在ではカイパーベルト天体に含まれる天体と定義されています。
「Image Credit:冥王星(右)衛星カロン(左)(NASA/JHUAPL/SwRI)」
なお、エッジワース・カイパーベルト天体は、軌道半径も広大で、海王星軌道の外側から数百億キロにも及ぶと考えられており、そこにある天体のほとんどが、岩塊や氷の塊などの小さな天体で構成されていると考えられています。
カイパーベルト天体を旅する無人探査機「ニュー・ホライズンズ」
地球から、遥か遠くにあるカイパーベルト天体ですが、人類はすでにその領域に足を踏み入れています。その領域に足を踏み入れているのが、太陽系外縁天体探査機「ニュー・ホライズンズ」です。
2015年1月に、地球から約50億キロ彼方にある冥王星に到達したニュー・ホライズンズは、約1年間に及ぶ冥王星と衛星の探査を行ったのち、さらに深宇宙に向かって進路をとりカイパーベルト天体の中を進み、2019年1月には、地球から約70億キロにある長径が31キロ程度の大きさの小天体アコロスでフライバイを行い、現在はさらに深宇宙の中へ進み、次なるカイパーベルト天体の捜索を行っています。
「Image Credit:ニュー・ホライズンズが撮影した歪な形状の接触二重小惑星アロコス(NASA/JPL)」
冥王星発見に匹敵するカイパーベルト天体
1992年以降、観測技術の進歩により次々と発見されているカイパーベルト天体の数は、既に1,000個を超えているのですが、冥王星のような大きな天体はなかなか発見されておらず、最近になって「2015 RR245」という推定の大きさ700キロほどの準惑星(候補)が発見されています。この準惑星は、非常に長い公転周期を持つ事が特徴で周期は何と700年。つまり太陽の周りを700年かけて一周している天体なのです。
「Image Credit:準惑星候補「2015 RR245」の公転軌道(Wikipedia)」
ちなみに冥王星の公転周期が248年ですので、2015RR245が如何に遠い軌道を周回している天体であるかがわかります。
発見間近のプラネットナインもカイパーベルト天体?
2016年初頭。大きな話題となった「太陽系第9惑星発見(プラネットナイン)発見か?」のニュースをご存じでしょうか?このニュースは、既に発見されているカイパーベルト天体6つの軌道を科学者たちが調べているときに、おかしな現象があることに偶然に気付いた事に始まります。
そのおかしな現象は、6つの天体が何か巨大な重力に弾かれるように同じような傾いた楕円軌道を描いている事だったのです。
「Image Credit:CalTech/R」
これを発見した科学者たちは、何か未知の天体の影響で軌道がこのようになったと結論づけ、そこには太陽系第9番目の惑星が存在する証拠だと、世界中に発表した事で大きなニュースになったのでした。
ただ、このプラネットナインが存在しているとなれば、とんでもなく遠い場所だと考えられており、それは8番目の惑星である海王星軌道から20倍以上も遠い場所であり、1万年~2万年の公転軌道をとっている惑星ではないかとされています。
●参考記事:【太陽系第9惑星を発見か?!】
これだけ遠い場所に存在するかも知れないプラネットナインもまた、カイパーベルト天体の1つではないか?と考えられ、エッジワース・カイパーベルトの領域は果てしなく広く、太陽系の最深部まで広がっているのでは?と考えられています。
カイパーベルト天体を探査する理由
太陽系外縁部の天体群・カイパーベルト天体の探査にチカラを入れる人類。この領域には太陽の光もほとんど届かず、暗黒で超極寒の世界だということが想像出来ます。
そのため、この場所に生命がいるとは考えにくく生命を探すために探査を行っているというワケではないでしょう。
しかし、この場所には太古の太陽系の記憶が残っていると考えられ、地球に生命をもたらしてくれた水や、有機物質などの起源も眠っていることが期待されています。
果てしなく遠い天体、カイパーベルト天体の探査・研究が進めば、もしかしたら我々人類を含む地球の生物の起源、ルーツの手がかりがそこにあるかも知れないのです。
“カイパーベルト天体とは?冥王星やプラネットナインの深宇宙の謎” への1件のフィードバック