太陽系天体の中で、厚い大気と表面を液体の川が流れ海(湖)を形成している天体は、地球以外では土星の衛星タイタンしかありません。
そんなタイタンですが、地球からあまりにも遠いため調査がほとんど進んでおらず、謎に包まれている事もあり、天文学者をはじめ多くの研究者が注目している天体でもあります。

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現時点で判明している衛星タイタンの基本情報

地球からの距離は平均で約14億キロ。太陽からの距離だと15億キロは越える距離にある土星は、太陽から受ける恩恵は地球と比べると圧倒的に低く冷たくて暗い領域にあります。

「Image Credit:土星から見た太陽(イメージ図)(Ron Miller)」
そんな土星が従える衛星タイタンは、衛星としては太陽系で2番目に大きく地球の衛星・月の約1.5倍もある天体です。

「Image Credit:土星の衛星タイタン(NASAより)」
上画像は、2005年にタイタンに接近した土星探査機カッシーニが撮影したタイタンの全景画像ですが、ご覧のように素人でもこの星に大気が存在している事がわかるのではないでしょうか!?

実際、カッシーニがタイタンの上空から探査を行ったところ、この星の驚くべき素顔がわかって来たのです。

タイタンの驚くべき素顔①~地球に似た山や山脈

これまで人類は多くの地球以外の天体を探査して来ましたが、そのほどんどは表面がクレーターが空けた穴だらけの地形でした。しかし、タイタンにはクレーターらしき地形はほぼ見当たらず、そこに広がるのは地球に良く似た山や山脈が立ち並んでいるといった地形でした。

「Image Credit:山が立ち並ぶタイタンの地形(NASA)

タイタンの驚くべき素顔②~液体が流れる川

そして更に驚いたのは、タイタンの厚い大気で形成される雲からは雨が降り、その雨が液体の川を造り流れているといった光景。

「Image Credit:タイタンを流れる川(NASA)」
しかし、土星の衛星タイタンは太陽からの恩恵が少ない極寒領域であり、その温度はマイナス180度以下とも言われています。つまりそんな環境下で水が液体の状態でいられるワケはなく、タイタンに降る雨や流れる川の正体は、マイナス180度でも液体を維持出来る炭化水素系の物質であるメタンやエタンだったのです。
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タイタンの驚くべき素顔③~川が流れ着いた先にある湖や海

雨が降り川が流れた先に出来るモノ。それは海であり湖です。
そのような自然環境はタイタンでもつくられており、表面のあちこちには湖が点在し海も形成されている事が確認されたのです。

「Image Credit:タイタンの湖(NASA)」
そして表面に溜まった炭化水素の液体は、また蒸発して雲を形成するといった、液体が水ではなかったモノの地球と同じような自然の循環がタイタンでも繰り返されていたのでした。

タイタン研究で新たに示唆されるタイタンの砂の正体

山があり川が流れる土星の衛星タイタンですが、この天体には砂丘(主に赤道域)が広がっている事も確認されており、この砂丘がどのようにしてつくられたか?についてはまだわかっておらず、研究者たちはこの砂丘の砂の正体についても謎の解明に挑んでおり、最近の研究結果で、おそらく砂丘の砂は有機物の微粒子から出来たモノではないか?と考えられるそうです。

「Image Credit:タイタンの砂丘(NASA/JSC)」
まるで枯山水のようなタイタンの砂丘(上画像↑)ですが、タイタンの大気圧は地球の約1.6倍あり、それにより風が吹いているとされ、その風の影響でこのような砂丘の地形が形成されていると考えられています。
なお、2005年1月に探査機カッシーニから投下された小型探査機ホイヘンス・プローブはタイタン地表の軟着陸に成功し、ホイヘンス・プローブはタイタンの地表に吹く風の音を録音し地球に送り届けてくれています。

●参考サイト:【Sounds of Titan(ESA)】
※ タイタンの音声データを聴くには、上記ESAホームページ内にあるFile1:acoustic during descentというリンクをクリックして下さい。

「Copyright ©:NASA Jet Propulsion Laboratory All rights reserved.」

2030年代に計画されているタイタンの本格的探査

極寒の世界だとは言え、タイタンには厚い大気があり液体が流れる大地が存在している事で、この天体の謎解明に向けて期待が高まって来ているのは事実です。
そこでNASAは、2030年代に史上初となるドローン型探査機「ドラゴンフライ」による探査で、タイタンの地表を詳しく調査するミッションを計画しています。

「Copyright ©:NASA Video All rights reserved.」
タイタンの大気圧は地球の1.6倍ですが大きさが地球の40%ほどなため、大気密度は地球の4倍にもなってしまいます。
その高い大気密度を利用しドロ-ンを飛ばして、タイタンの地表をより広い範囲(移動範囲170キロ以上)で調査しようとするこの計画。成功すれば、タイタンの様々な素顔が人類のもとに届けられる事と思いますが、地球に似た環境を持つタイタンにも生物がいる可能性もゼロではなく、もしかしたら地球の生命環境とは全く異なるメタンで生きる生物が居るかも知れません。
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