先日、木星の衛星数が土星の衛星数を抜いて太陽系でトップに立ったとお伝えしましたが、あれからほんの数カ月で再び土星が木星を抜き返し太陽系の衛星数でトップを奪還!しかも断トツでナンバーワンになったそうなんです。
木星の95個を余裕で抜いた土星の衛星総数
木星の衛星と言えば、市販の天体望遠鏡でも見る事が出来る4つのガリレオ衛星が有名ですが、それに加え木星には91個の衛星が存在し、総数で95個と木星が太陽系最多の衛星数を誇っていました。(うち12個は2021~2022年の観測で新衛星に追加)「Image Credit:木星のガリレオ衛星(Wikipediaより)」
衛星の総数で木星に抜かれてしまった土星ですが、わずか数カ月でナンバーワンの座を奪還!しかもその数は木星の95個を余裕で抜き145個の衛星数になったそうなんです。
「Image Credit:NASA」
新たに62個も見つかった土星の新衛星
カナダのブリティッシュ・コロンビア大などの国際チームの観測によって発見された土星の新衛星の数は何と62個も発見し、衛星総数は太陽系最多の145個となった土星。観測が行われたのは2019~2021年、ハワイのマウナケア山頂にあるカナダ・フランス・ハワイ望遠鏡によるモノで、発見された新衛星はどれも小さく数キロ程度(最小は2.5キロほど)しかなく、1回の観測で発見する事は難しく、断続的に撮影した画像を複数重ね合わせて、わずかな光を増幅する事で新衛星を検出出来たそうです。
また新たに発見された62個の衛星は、全て不規則衛星と呼ばれる天体で、これらは主星である土星との離心率が大きく傾いた楕円軌道を持ち、そのいくつかは惑星(土星)の自転に逆行した軌道を持っているそうです。
「Image Credit:不規則衛星の軌道図(NASAより)」
このような不規則衛星の多くは、数億年前に起こったとされる巨大衛星の崩壊に由来するのでは?と推測され、このときに土星の環(リング)も形成されたのではないかと考えられており、その崩壊の一部の破片が衛星となり土星を周回している可能性もあると考えられています。
新衛星は土星の環と関係している?
土星には巨大で美しい環(リング)があると、誰もが知っているかと思います。「Image Credit:Wikipedia」
この土星の環はいつどのようにして形成されたのか?については長年の謎でした。しかし、近年になって少しずつその謎が解明されつつあり、かつての土星には直径1,500キロほどもある巨大衛星・クリサリス(Crysalis)が存在していたと仮説が立てられ、衛星クリサリスは土星に近過ぎたためロッシュ限界を超え、バラバラに破壊されてしまったのでは?と考えらています。
土星の巨大な潮汐力でバラバラに破壊されてしまった衛星クリサリスの破片は約99%が土星に落下し、残された残骸が環(リング)となり、そして今回発見されたような衛星になって土星の軌道上に残されたのでは?と考えられています。
まだ見つかる可能性がある土星の衛星
土星の環(リング)形成の謎解明については、まだ可能性の範囲内であり完全に解き明かされたワケではないですが、仮に環の形成に関係しているのが衛星クリサリスの崩壊だったとすれば、今回見つかった62個の新衛星以外にもまだ発見される可能性があるかも知れません。また、同じ巨大ガス惑星である木星にもその可能性は残されており、木星にも不規則衛星は多数確認されていますので、今後の観測によって土星と木星の衛星数トップ争いが続くかもしれませんが、流石に今回の発見により145個という断トツの衛星総数になった土星が、簡単にはトップの座を譲る事はないかと思われます。