私たちの太陽系は約46億年前に銀河(天の川銀河)の中で誕生したとされており、そして今も銀河の中では、年間あたり1個のペースで太陽のような恒星が誕生し、現在の銀河は2,000億個以上というとてつもない”大所帯”の星の集団へと成長しています。
しかし、広大過ぎる宇宙では私たちの銀河は平均的な規模の星の集団だと言え、さらに巨大な銀河もいくつも存在し、中には超ハイペースで成長しているモンスター銀河と呼ばれる天体もあります。
そもそも銀河って何なのか?
おそらくは小学校の理科の時間などに、私たちの地球がある太陽系は銀河系(天の川銀河)の一部だと誰もが習ったかと思います。さらに銀河と言って思い浮かべるのが、アンドロメダ銀河に代表されるような渦巻き型の天体で、私たちの天の川銀河もそれに似た棒渦巻銀河とされています。
「Image Credit:天の川銀河の想像図(Shutterstockより)」
天の川銀河の大きさは直径約10万光年。秒速30万キロで進む光の速さでさえ、銀河を端から端まで横断するのに10万年かかる大きさです。
また、無数の星の集合体である銀河。平均的な銀河は、約1,000億個の星(恒星)が集まっており銀河の大きさも大小様々。
私たちの太陽系が属す天の川銀河は約2,000億個の星の集合体ですが、中には100兆個以上の星が集まった直径が600万光年もある超巨大銀河(IC 1011銀河)も存在します。
「Image Credit:超巨大銀河・IC 1011銀河imgur.com」
さらに気になるのが、これだけの数の星たちを引き付けている重力源は何なのか?
つまり、私たちの太陽系の中心には太陽があり、重力源となる太陽が地球を含む惑星たちを引き付けているように、銀河もまた中心に大きな重力源になっている天体が存在します。
それが、超大質量ブラックホールであり、天の川銀河の中心にも太陽質量の400万倍以上とされる巨大ブラックホールがあり、他の銀河のほとんどに大質量ブラックホールが存在すると考えられています。
ちなみに地球は、太陽を1年かけて1周していますが、太陽はブラックホールの周りを約2億年かけて1周しています。
明るいハズの銀河が良く見えない理由とは?
銀河系の話をしていて良く質問されるのが、「2,000億も星があるのに何故良く見えないの?」という疑問です。私たちが普段夜空見上げて、星の集団の銀河として見えるのが「天の川」ですが、しかし、肉眼で見る天の川はキレイですが薄っすらとぼやけてしか見えません。
それは何故なのでしょうか?
答えは、私たちがいる地球が天の川銀河の中にあるからです。
とは言っても、意味が良くわからないかも知れません。
私たちの地球がある太陽系は、銀河の中心から約2万6,100光年離れた場所にあり、その位置から銀河の中心を見るとこんな感じです。
「Image Credit:国立天文台」
つまり、銀河の中に居る私たちは天の川銀河全体を見渡すことは出来ず、ほんの一部しか見えないワケです。
さらに、見る方角には光を遮断する星や暗黒物質といった障害物もあり、これらが原因で本来は明るく見えるハズの銀河を見えにくくしており、私たちの眼には一部の光しか届いていないワケです。
しかし、周りに星の光を妨害する灯りも無く澄んだ空気の中なら、こんなにも明るく美しい銀河が見える場所があるのも事実です。
「Image Credit:iStock」
モンスター銀河は時間を遡った初期銀河の姿
さて、国立天文台の研究チームが観測に成功して話題になった「モンスター銀河」。モンスター銀河とはどんな銀河の事なのでしょうか?
例えばそれは、IC 1011銀河のような直径が600万光年もある巨大な銀河の事なのか?
確かにIC 1011銀河もモンスター銀河に違いないのですが、ここで言うところの”モンスター”とは意味が異なります。
天の川銀河を含む多くの銀河は現在も成長を続けており、天の川銀河の場合年間当たり太陽数個分の質量の星が誕生しているのですが、モンスター銀河ではその数十倍以上のペースで星が生み出されています。
そんなモンスター銀河の中で国立天文台の研究チームが観測したのは、天の川銀河の1000倍もの超ハイペースで星を生み出している「スターバースト銀河」と呼ばれるタイプのモンスター銀河で、安定している天の川銀河とは対照的に、次々に星が誕生している荒れ狂った銀河が宇宙には存在している事になります。
しかし、それらのモンスター銀河は地球から数十億光年以上離れた遠い位置に存在しています。
例えば、日本の観測チームが発見した約120億光年離れた天体・オロチもモンスター銀河だとされ、さらに124億光年離れた銀河でも、天の川銀河の約1,000倍ものペースで星が生み出されているモンスター銀河「COSMOS-AzTEC-1」の観測にも成功しています。
「Image Credit:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Tadaki et al.」
上画像を簡単に説明すると。
左側の画像は星を形成する材料となる分子ガスの雲で、右側は塵の分布を示した画像。
ここに集まった分子ガスが重力で潰れ、そこに塵も集まる(矢印部分)ことで多くの星が誕生していると考えられています。
これらの分子ガスの集合体は銀河全体で見られ、あちこちで星が誕生しやすい状態が創り出されているそうです。
またこれらのモンスター銀河の様子が地球に届くのに数十億年以上かかっており、同時にこれは宇宙が誕生した初期の状況を意味しており、国立天文台の研究チームが観測に成功したモンスター銀河は124億年前の銀河の様子であり、この事から、宇宙が誕生した初期の段階では銀河の生成も活発に行われていたという可能性が高く、現在、宇宙全体に分布する銀河もモンスター銀河の成長後の姿ではないか?と推測されています。
モンスター銀河の解明で宇宙誕生・ビッグバンの謎に迫れるか?
モンスター銀河の観測に成功した事で、宇宙創世記(初期)には、銀河の活動が活発だったのでは?という推測が出来ます。また、宇宙が始まったのが約138億年前。
これをビッグバンと呼び、ビッグバンは想像を絶する超高密度・超高圧・超重力が集中した1つの点が爆発を起こしたことにより宇宙が誕生し今も広がっていると考えられています。
つまり、宇宙初期の段階でモンスター銀河が多く存在したという事は、当時の宇宙は今よりも狭く、そこに高密度の物質が集中し宇宙全体が大きな重力で覆われていた事で、銀河や星の活動が活発だったのではないか?とも考えられます。
いずれにせよ、宇宙創生の謎を解明するにはさらに高性能・高解像度の望遠鏡や観測機器が必要になるでしょう。
そうなると、運用開始が待ち遠しいのが最新鋭の宇宙望遠鏡「ジェームス・ウェッブ宇宙望遠鏡」。
「Image Credit:ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(NASAより)」
「ジェームス・ウェッブ宇宙望遠鏡」は2021年に打ち上げ予定で、ハッブル宇宙望遠鏡のように地球衛星軌道上ではなく、地球から150万キロ離れた地球を追尾する軌道上(ラグランジュ点)に投入され、この場所は、深宇宙観測にはうってつけで観測機器に最適な低温を保て、尚且つ地球からの邪魔な電波や太陽光等の遮断も出来ると言います。
運用待ち遠しい「ジェームス・ウェッブ宇宙望遠鏡」の主な任務は深宇宙探査。
特に、ビッグバンが起こった2億年後以降に誕生したとされるファーストスターの観測を目指し、宇宙誕生の謎解明に近づく事。
他にも、太陽系外惑星探査も任務に入っており、もしかしたらこの望遠鏡の活躍があれば、ビッグバンの謎解明以外に地球外生命体にファーストコンタクト出来るかも知れません。
※ 追記:ジェームス・ウェッブ宇宙望遠鏡は2021年12月に無事打ち上げられ運用を開始し、新たな宇宙の情報を次々に私たちに届けてくれています。