一般的に「銀河」と言うと、有名なアンドロメダ銀河のような渦巻き型をした美しく壮大な天体をイメージするかも知れません。
しかし、銀河にはその渦巻きを取り巻く希薄な天体群が存在し、その部分は「銀河ハロー」と呼ばれ、銀河ハローまで含めた全体が一つの銀河として構成されています。

ただ、あまり知られていない銀河ハロー。
いったいそこにはどんな天体が存在し、どんな構造をしているのでしょうか?
銀河全体の構造を含め簡単に解説出来るよう調べてみたいと思います。

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銀河の構造

私たちの太陽系がある天の川銀河を含めた、宇宙に存在する多くの銀河の構造は中心部分に物質の密度が濃い領域「銀河バルジ」が存在し、さらにバルジの周りを取り囲む「ディスク(スパイラルアーム含む)」で構成されているのが一般的に知られているところではないでしょうか。
◆天の川銀河(銀河系)の構造を示す解説動画


「Copyright ©:European Space Agency, ESA All rights reserved.」
しかし、銀河の構造はそれだけではなく、銀河には周りを球殻状に取り囲む「銀河ハロー」と呼ばれる領域が存在しています。
多くの人は、ハッキリと見えるバルジとディスクと合わせて一つの銀河が構成されていると思いがちですが、広大な領域を取り囲む銀河ハローはあまり知られていないようです。

「Image Credit:天の川銀河全体の構造(国立科学博物館より)」
では、銀河全体の構造とはどのようになっているのでしょうか?

銀河中心部~バルジの構造

銀河バルジは銀河の中心部分の天体やガス等の星間物質の密度が高く、銀河を横から見ると凸状に膨らんで見えるのも特徴的です。

「Image Credit:NASA」
銀河の中心部に位置するバルジですが、多くの銀河ではこの中心部分に太陽質量の数千倍~数億倍に及ぶ超大質量ブラックホールがあると考えられており、私たちの太陽系がある天の川銀河の中心部にも太陽質量の400万倍以上の巨大ブラックホールの存在が確認されています。
また、銀河バルジが明るく輝き膨らんで見える理由は、ブラックホールの巨大重力により集まったガス等の星間物質を、ブラックホールから放出されたエネルギーが温めているためではないか?とも考えられています。

銀河を渦巻く~ディスクの構造

銀河全体を円盤状の渦巻きのように取り囲む銀河ディスク。
私たちの居る太陽系もまた、ここの部分の外縁部に位置し約2億年の長い年月をかけて銀河を一周しています。

また、銀河ディスクで特徴的なのは、銀河を渦巻くように囲む複数の腕(スパイラルアーム)。

「Image Credit:Shutterstock」
スパイラルアームではガスや星の密度も高く、さらには星々の活動も活発で頻繁に星の生成が行われているモノと考えられており、高エネルギーの宇宙線も飛び交う、言わば生命にとっては危険地帯ではないかと考えられています。
ただ、太陽系は銀河ディスクの中に位置していますが、現在はスパイラルアームの外縁部にあり、この領域は星の密度も低く穏やかな空間だと考えられ、太陽系がこの位置にあるおかげで、地球に生命の恵みが育まれ進化が進んでいるとの推測されているのですが、ただ、太陽系が銀河を公転する過程で何度もスパイラルアームの中を通過しているとも考えられており、スパイラルアームに突入することで寒冷化等、過去の地球環境の変化に少なからず影響を与えているのではないか?との推測もあります。
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銀河を包み込む~銀河ハローの構造

私たちの太陽系がある銀河系(天の川銀河)の直径は約10万光年だと言われていますが、実際の銀河は銀河全体を球状に包み込むような構造になっており、その球状に取り巻く領域のことを「銀河ハーロー」と呼び、ハローまで含めた銀河の大きさは約15万光年にも及びます。

「Image Credit:天の川銀河を取り巻くハロー領域のイメージ(AFP PHOTO/EUROPEAN SPACE AGENCY/GAIA/DPAC)」
では、この銀河ハローの領域には何が存在するのでしょうか?
この領域における近年の調査結果によると、ハロー領域には多くの古い星々で構成された球状星団が広く分布し、現在約150個ほどハロー領域内で発見されています。

「Image Credit:Robert Gendler/SPL,nature」
球状星団は数千個~数百万個程の星が互いの重力により集まっていると考えられており、そのため非常に星の密度が高いため星同士の近接相互作用で星の重力の影響も大きく、中には星同士の衝突も起こっているのではと考えられています。

銀河ハローの正体は銀河の衝突の名残り?

現在、2,000億個以上の恒星の集合体である天の川銀河ですが、かつて天の川銀河は現在よりももっと小規模な矮小銀河だったのではないかと考えられており、複数の矮小銀河の衝突を繰り返した事により現在の銀河が誕生したと推測されています。
この銀河同士の衝突の名残りが古い星々で形成されいる球状星団であり、これらがリボンのように球状に銀河を取り巻いている事が最新の研究により判明しています。

「Image Credit:YouTUBEより」

地球外知的生命体は銀河ハローにいる?

これは一部の科学者が示唆している事ですが、古い星々で構成されている銀河ハローにある球状星団には知的生命体が育成出来る環境があるのではとの考えがあるようです。

この考え方によると、星(恒星)が古い事によりその星系に存在する惑星は生命が進化する時間が十分につくられ、その環境により、もし人類のような知的生命体になり得る生物が誕生した場合、球状星団には高度な文明が生まれる条件を持つ星が多く存在する可能性があるとの事で、もちろんこれは推測でしかありませんが、球状星団の特徴は星同士の密集にあり、この密集が原因で近接相互作用や星間放射線で生命が育成される環境そのものが成り立たない意見もあります。
しかし、球状星団に知的生命体の育成環境を示唆する科学者は、全ての星々が密集しているのではなく、球状星団内には生命を育くむ惑星が生き残れそうな場所も存在しているとの事。
つまり、現在進行中の地球外知的生命体探査(SETI)は、この球状星団に探査の目を向ければ、銀河系内で地球外生命体の通信を傍受出来る可能性があるとも指摘しています。

「Image Credit:GO FOR LAUNCH
ただ、球状星団が多く存在する銀河ハローは地球からは遠く離れ、近くてもその距離は数千光年先にある事もあり、この距離で知的生命体の通信を傍受できるのか?そこは疑問が残るところです。
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