現在、大気圏外を航行する宇宙船や無人探査機等の宇宙機は、燃料を化学反応させて推進力を得ていますが、新しい技術を使った航法として、太陽のチカラを利用した推進力を得るソーラーセイル(太陽帆)が注目を浴びています。
このソーラーセイルの原理は夢のような最新技術で、太陽から発せられる光やイオンのチカラを利用して、宇宙船を進ませる推進力として利用出来る技術で低コスト化と速度もかなり上がるとの事。
もしこれが実現し運用出来れば、人類の宇宙探査・開発は飛躍的に発展すると期待されています。

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これまでの宇宙船の推進

人類の宇宙進出が始まって以降、宇宙空間で推進力を得る方法として利用されてきたのが、燃料を宇宙船エンジンのシリンダー内で燃焼させ、燃焼ガスをノズルから宇宙空間に噴射させて推進力を得る方法がほとんどでした。

「Image Credit:iStock」
また、JAXAの小惑星探査機「はやぶさ」などにも採用されているイオンエンジンも最新の技術で、マイクロ波を利用して生成したプラズマ状イオンを噴射させて推進力を得る電気推進とも呼ばれています。

「Image Credit:JAXA」
これらの推進方法はデメリットも多く、燃料噴射式は燃費が悪く大量の燃料を必要とする事。イオンエンジンは少ない燃料で長時間噴射させることは出来るのですが、出力が低いのが弱点です。
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ソーラーセイル(太陽帆)とは?

従来の推進方式に代わる新世代の宇宙航行方法として、実現可能で注目されているのがソーラーセイル(太陽帆)です。
この推進方法は日本のJAXAが原理を生み出し、実際に実験に成功した太陽光やイオンのチカラをソーラーセイルと呼ばれる帆に受けて推進力を得るという、言わば”宇宙ヨット”のような航行方法です。

JAXAが実験に成功したソーラーセイル推進「イカロス・ミッション」

ソーラーセイルはJAXAが2010年に実験機「IKAROS(イカロス)」を打ち上げ、太陽光を受けて進む光子加速の実証に成功しています。

「Copyright ©:JAXA宇宙航空研究開発機構 All rights reserved.」
イカロスに取り付けられたソーラーセイルは、宇宙空間で帆を広げ、その帆に太陽光やイオンをを反射させて推進力を生み出すというもの。
またソーラーセイルには薄膜の太陽電池も取り付けられており、推進力を得ると同時に発電を行うことでイオンエンジンを駆動させる事が出来、ほとんど燃料を必要といしない省エネ・ハイブリッド推進も実現出来るという画期的な航法を実現する方法として、今後の宇宙開発に大きく貢献出来る技術として実用化に向けて動き出しています。

実用化に向けて動き出したソーラーセイル探査機

ソーラーセイル推進が実用化出来れば、これまで以上に高速で航行することが出来、太陽系外縁部の天体にも短期間で行く事が可能になるとも言われています。
そして早速、このソーラーセイルを使った探査機が打ち上げられようとしています。
それが2018年以降にNASAが打ち上げを予定している地球近傍小惑星探査機「NEA Scout(ニア・スカウト)」

「Image Credit:NASA
ニア・スカウトは、これまでの探査機とは違い、かなりの抵コスト(日本円で約200億円ほど)で製造され、小惑星1991VGの探査に向かう予定で、ソーラーセイルを太陽に向けて前回広げ加速し、さらに月の自転する引力を利用したスイングバイを行い、これにより加速も増大。最終的には秒速28.6キロというスピードに達するといいます。
このようにソーラーセイルのメリットは、燃料の節約だけでなく低コストでスピードも従来型より遥かに速く航行出来ることが特徴。
そのため将来的にはソーラーセイルを使った太陽系外の天体の探査も可能になるのでは?と期待されています。
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