現時点において、太陽系の天体の中で生命がいるのは地球だけであり、残念ながら現時点で他の惑星や衛星などの天体には生命体の存在が確認されていません。
しかし、それはまだ発見されていないだけで「(地球外生命体が)もしかしたらいるかも?」と可能性を感じさせる天体はいくつか確認されています。
ここでは、そんな地球外生命体がいる可能性を持つ太陽系天体を、発見の確率が高い順に5つほどご紹介したいと思います。

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① 地球外生命が真っ先に見つかるのは火星か?

火星は地球のスグ外側を公転しており、2018年7月には6,000万キロを切る距離まで地球に大接近し、大きな注目を集めた”地球のお隣り”に位置する惑星です。
そんな火星は地球の”お隣り”にあるだけあってか、太陽系の中では最も探査のしやすい惑星でもあり、これまで何度も無人探査機が送り込まれ少しずつその実態が判明しつつあります。

「Image Credit:火星探査ローバー・キュリオシティ(Wikipediaより)」
火星には希薄ですが大気も存在し、地表の平均気温もマイナス40度前後。
大気もあり極端に寒いというほどの環境ではないこともあり、生命存在の可能性も期待され調査が行われて来ましたが、残念ながら今のところ地表付近には生命の痕跡は見つかっておらず、おそらくは生命は存在しないのではないか?!とほぼ諦めの状況でした。
しかし、地表がダメなら地下なら可能性があるのか?かどうかはわかりませんが、ESA(欧州宇宙機関)の「マーズ・エクスプレス」が火星軌道上からレーダーによる探査を行ったところ、南極付近の地下約1,500メートルの深い場所に幅約20キロにも及ぶ液体の水を湛えた湖らしき場所が発見され大きな話題になっています。

「Image Credit:USGS ASTROGEOLOGY SCIENCE CENTER, ARIZONA STATE UN」
※ 上画像のレーダーに映った青い部分が水のある湖か?

これが液体の水かどうかは今のところ確証はないようですが、もし水であればそこは火星の地熱で温められた温暖な場所である可能性があり、また、磁場がない火星の地表は太陽や宇宙からやって来る生命にとっては有害な宇宙線の影響を容赦なく受けていますが、地中深い地下なら宇宙線の影響もないと思われます。
さらには、数十億年前の火星は地球と似た温暖な環境で磁場に守られた濃い大気があり、地表には水が流れていたという確かな痕跡も見つかっておりこの時代に生命が誕生していた可能性もあります。
現在の火星は磁場が無くなった事と重力が低い影響により、大半の大気が剥ぎ取られた状態になっていますが、もし太古の昔に火星で生命が誕生していたとしたならば、安全な地下に逃げ延びて今も生息しているかも知れません。

そんな火星ですが、他の天体に比べ探査のしやすい事を考えれば、人類初の地球外生命体との接触は火星なのかも知れません。

② 灼熱地獄の金星にも生命?

金星は地球に最も近い惑星で大きさや質量も地球に近いため、地球と金星は”姉妹惑星”と呼ばれています。

「Image Credit:カラパイア
しかし、姉妹でもその性格は全く違い、温暖な環境で生命に溢れた地球とは異なり、金星の地表は摂氏500度近い高温と、深海900メートルに相当する90気圧という超高圧。
とても生命がいるなどと想像すらできない過酷な環境です。

そんな場所に生命がいるなどと絶望的な金星ですが、上空50キロ前後の高層は温度が0~60度で気圧も0.4~2気圧程度と比較的穏やかな環境を保っており、しかもその層の成分は硫黄や酸性エアロゾル・二酸化炭素など生命に優しい化合物で構成されており、生命が宿ることが可能な領域である事が上空からの探査で判明しています。

そしてその層に見つかった謎の黒いシミ。

「Image Credit:金星大気に見られる”黒いシミ”(NASAより)」
このシミの正体について研究者は、金星の上空を浮遊する微生物の集まりではないか?と示唆しています。
もちろん、これが微生物である証拠はありませんが、今後は、金星の大気中を飛行し調査する無人探査機の計画もあり、ここでサンプルを採集出来れば黒いシミの正体が掴めるかも知れません。

③ 最も地球外生命体の期待度が高いエウロパ

エウロパは木星の代表的な衛星のひとつで、イオ・ガニメデ・カリストの3つの衛星を加えた4つでガリレオ衛星と呼ばれています。

「Image Credit:木星と4つのガリレオ衛星(Wikipediaより)」
エウロパは、ほぼ全体が厚い氷に覆われた天体で生命がいるとは思えないのですが、この天体こそが近年「地球外生命体存在の可能性が大きい」がとして注目が集まっています。
その理由は、エウロパの厚い氷の下に隠された世界。
この氷の厚さは最低でも1,000メートルあると考えられていますが、巨大なガス惑星・木星の強い潮汐力と他の衛星(イオやガニメデ)の軌道共鳴によって、エウロパ内部が摩擦で熱せられて氷の下は溶けた水で広大な海が広がっていると考えられています。

「Image Credit:エウロパの地下に広がる海の想像図(Wikipediaより)」
事実、地上からの観測でもエウロパの表面に内部からと思われる氷水が噴き出す様子が確認されており、今後NASAはエウロパに探査機を送り、噴き出す氷水を採集するなど生命の証拠を探る調査(エウロパ・クリッパー)を2020年代前半に行う計画に着手しています。

この探査計画の目的は実際に生命を探るのではなく、エウロパの地下に本当に海が存在するのか?内部構造を調査し、海が存在するのであれば、生命が存在し得るエネルギー源はあるのか?調査する事にあります。
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④ 生命存在の期待が急浮上した土星の小さな衛星

土星の衛星エンケラドゥスは、直径500キロほどの小さな天体です。
また、エウロパと同様に衛星全体を氷に覆われており、その氷の反射率が高いため”太陽系で最も白い星”とも呼ばれていますが、これまではそれほど注目を集めるような天体ではありませんでした。
しかし、土星探査機カッシーニによりエンケラドゥスは一躍大注目の天体となります。

まずカッシーニは、エンケラドゥスに主成分が水蒸気と見られる微量な大気を発見します。
ただ、これには大きな疑問があり、小さな天体であるエンケラドゥスでは重力が弱いため大気を留めておくほどのチカラが無いハズなのです。
重力の弱い天体に大気が存在するという事は、それを安定して供給できる源があるのでは?と考え、そして突き止めたのがエンケラドゥスの内部から噴き出す水蒸気と見られる間欠泉。

「Image Credit:NASAジェット推進研究所の動画より」
つまり、エンケラドゥスはエウロパと同じように内部に熱源を持っており、厚い氷の下には溶けた水で出来た海が存在する可能性が高いと推測されたのです。

そして更に探査機カッシーニは、エンケラドゥスから噴き出す間欠泉に突入しサンプルを採集します。

「Copyright ©:NASA Jet Propulsion Laboratory All rights reserved.」
採集したサンプルを分析した結果、微生物のエネルギー源となる水素分子が発見され、さらにエンケラドゥスには生命存在の期待が高まることになります。
しかし、探査機カッシーニの探査は2017年9月で終了し、その後エンケラドゥスの探査は行われていません。
生命存在の期待が高まる土星の衛星エンケラドゥス。
果たしてこの天体の詳しい調査はいつ行われるのでしょうか?
今のところ(2018年現在)は未定ですが、これだけ注目の的となっている天体の探査が行われないという事は無いと思いますが、いつになるのか?期待したいモノです。

⑤ 地球に似た自然環境を持つタイタン

最後にご紹介するのが、これも土星の衛星であるタイタンです。
タイタンもまた探査機カッシーニにより詳しい情報がもたらされました。

タイタンは、太陽から遠く離れた(太陽からの平均距離14億キロ以上)極寒の地にありながら地球に似た厚い大気を持っています。

「Image Credit:土星第6衛星・タイタン(Wikipediaより)」
そして大気の下では雲が湧き、風が吹き、雨が降り、川が流れ海(湖)が出来ているという、まるで地球のような自然環境がある事が判明しています。

「Image Credit:タイタンを流れる川と湖(NASA)
地球と似た自然環境の衛星タイタン。しかし、それは見た目が似ているだけで環境そのものは全く別のモノであり、マイナス180度以下の超極寒のタイタンで水が液体の状態で維持できるハズもありません。

そんなタイタンでの雨や川の正体は、マイナス180度以下でも凍らないメタンやエタン等の炭化水素である事も判明しており、また、カッシーニの探査では、タイタンに生命の痕跡を発見する事は出来ませんでしたが、炭化水素とは言え地表には液体が存在する事は確かです。
液体の水に溢れた地球の常識では考えられませんが、この液体があることによって地球の生命とは全く異なる化学物質から誕生した生命が存在する可能性はあります。
そんなタイタンに対しNASAは、「ドラゴンフライ」と呼ばれる探査ミッションを提案しています。

「Image Credit:ドラゴンフライ・ミッションの想像図(NASA)」
ドラゴンフライ・ミッションは、上画像のようにタイタン表面でロボット・ドローンを飛ばし探査を行い生命の有無を確認する計画で、また「タイタン・サターン・システム・ミッション(略称:TSSM)」と呼ばれるタイタンの海を探査する計画も提案されており、早ければ2020年代後半にも実施される予定との事です。

まとめ:地球外の太陽系天体に生命がいる確率はどれくらいなのか?

エウロパやエンケラドゥスの地下に水がある可能性が高まった事で、多くの科学者たちは地球外生命体存在に確信を持っているようです。
しかし、生命がいたとしても地球のように多種多様の生命ではなく、限りなく原始的な生物ではないか?と推測しています。

つまり、これだけ生命が生息するのに適した天体は太陽系のどこを探しても地球だけで、他の天体ではほとんどが過酷な環境のため生命が生きられるのは極限られた場所のみではないか?という考えからであり、間違っても金星人や火星人といったオカルト的な発想は無いでしょう。
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