生命を育む地球にとって、命を与えてくれている源となっているのが最も身近にある恒星「太陽」です。
そんな身近な存在である太陽ですが、まだ謎が多い未知の天体でもあります。
しかし、近年の観測研究の発展により少しずつではありますが謎の解明は進んで来ており、最近になってわかって来た事の一つに、他の恒星に比べ太陽は非常に穏やかな恒星だった事が判明。
この穏やかさこそが、私たちの地球に生命を育ませてくれている大きな要因になっているようです。
太陽(恒星)の仕組みと基礎知識
私たちの太陽の大きさは地球約109倍。質量に至っては約33万倍もあり、実に太陽系の全質量の99.86%を占めている巨大過ぎる天体です。「Image Credit:Planet Compare」
そして私たちの住む地球に光と熱の恵みを与えてくれている源が太陽表面の絶対温度は5,800K。その熱を生み出しているのが、巨大な重力によって超高圧・超高密度に圧縮された中心部で起こっている熱核融合反応であり、4個の水素原子核が融合し1つのヘリウム原子核に変化するする事で巨大なエネルギーを発生させています。
「Image Credit:Wikipedia」
これが太陽の仕組みであり宇宙の恒星全てが、熱融合反応で巨大なエネルギーを生み出しながら存在し続けているのです。
太陽の活動は非常に穏やかだった事実が判明
近年、謎を解明すべく探査機が太陽の近くまで送り込まれたり、地球からも最新の技術によって観測の目が向けられていますが、そんな中、Timo Reinhold氏(マックス・プランク太陽系研究所(MPS)、ドイツ)らの研究チームは、太陽の活動レベルを確かめようと、同じ天の川銀河にある太陽に似た恒星369個に観測の目を向け、明るさ・活動の変動の分析を約5年間に渡り行い、このほどその結果が明らかになり驚きの声が挙がっています。その研究結果とは?
「太陽は他の恒星に比べると活動レベルが極端に穏やかだった。」
約5年に及ぶ分析期間、太陽の平均的な明るさの変動幅が約0.07パーセントだったのに対し、他の恒星は太陽の5倍も明るさが変動していたことが判明したのです。
「Image Credit:MPS/hormesdesign.de」
上図のグラフは、観測対象になった369個の恒星の内のひとつ、太陽に似た恒星KIC7849521と太陽の明るさの変動を比較したモノですが、グラフを見ておわかりのとおり、その変動幅は大きく異なり、実に太陽の5倍以上にもなります。
つまり、私たちの太陽の活動は非常に穏やかであまり変動が見られていない事実が判明したのです。
太陽の活動の激しさは黒点の出現率でわかる!
太陽のような恒星表面に不規則に現れる黒いシミのようなモノを黒点と呼びます。「Image Credit:NASA/SDO」
黒点は恒星の活動が活発になると内部から強力な磁力線が飛び出し、その磁力線が出ている部分が他の表面部分よりも若干温度が低くなるため黒い点のように見え、また、この黒点が多ければ多いほど明るさにも変動が見られ恒星の活動レベルの指標にもなっています。
つまり太陽は他の恒星と比べると黒点の数が圧倒的に少ないという事が判明したのです。
太陽は宇宙でも稀な生命に適した恒星だった可能性!?
恒星の活動が活発だと、もしかしたら「星(恒星)が元気でいいんじゃないか?!」なんて思う人もいるかも知れません。しかし、恒星の活動が活発になり過ぎるのは生命にとっては決して良い事ではなく、むしろ生命存在の危機であり、そもそも活発が故に生命そのものの誕生を阻む結果にもなってしまい、また、恒星に黒点が多く出現する事で磁場の活動も活発になり、極めて高温で電離したプラズマといった危険な放射線が放出される「太陽風(恒星風)」も多く吹き荒れることになります。
「Image Credit:NASA, ESA and D. Player」
このような活動が少ない太陽は、研究結果によれば太陽のような穏やかな恒星は稀な存在だとも言え、つまり、太陽が穏やかなお陰で私たち地球に住む生物は安全でいられる可能性が高いのです。
ただ、研究チームはこのような事も指摘しています。
確かに太陽は、同種の恒星と比べると穏やかな性質を持つ可能性があるが、地球に生命が誕生した期間は太陽の46億年という歴史に対してはかなり短く、現在の太陽はたまたま穏やかさを維持している期間に当たる可能性もあり、また太陽は、本質的に他の恒星と同じような活動が出来る恒星である可能性もあり、いつ太陽が牙をむき出しにして地球に襲いかかって来るかも知れないという危機感についても言及しています。