
NASAが40年以上前に打ち上げた無人惑星探査機・ボイジャー2号を覚えているでしょうか。
現在、このボイジャー2号は地球から遠く離れ、太陽圏を脱出したとのニュースが流れ話題になっています。
でも、ボイジャー2号よりも先に打ち上げられ、もっと遠くにいるの探査機もあるハズ!?
何故、ボイジャー2号だけが話題になるのでしょうか?
実は、この探査機、地球か最も遠く離れた通信可能な唯一の人工物だからなのです。
初めてグランドツアーを実現したボイジャー計画
ボイジャー2号が打ち上げられたのは1977年。ほぼ同時期に同型機のボイジャー1号も打ち上げられています。
この2機の無人探査機のミッションは、人類で初めて複数の外惑星を訪れ探査を行う事。
ボイジャー1号が探査対象とする外惑星は木星と土星。
そして、今回の主役であるボイジャー2号は、木星と土星、そして未だにボイジャー2号以外に訪れた事のない天王星と海王星の4つの外惑星でした。
1機の探査機で何故、4つもの惑星を一度に探査する事が出来たのか?
それは、約175年に1回やって来るという探査を行うのに最も適した惑星の配置が整う”グランドツアー”という稀な条件を満たしていたからです。
●参考動画
「グランドツアー~ボイジャー1号(Voyager-1)とボイジャー2号(Voyager-2)の軌跡」
このボイジャー計画でもたらされた成果は大きく、
木星では環や衛星の発見、大赤斑の観測、衛星・イオでの火山活動の発見等。

「画像参照:イオの火山活動(Wikipediaより)」
次に向かった土星では、これまで謎の多かった環の複雑な構造を解明し、
衛星タイタンの大気調査等を行いました。

「画像参照:ボイジャー1号が撮影した土星の全景(Wikipediaより)」
グランドツアーのチャンスで初めて天王星に訪れたのはボイジャー2号。
このときの天王星観測時間はわずか24時間弱だったと言います。
それでも、天王星の環や大気の観測、さらには新たに10個もの衛星を発見しました。

「画像参照:ボイジャー2号が撮影した天王星の大気(Wikipediaより)」
そしてボイジャー2号が最後に訪れた天体は8番目の惑星・海王星。
海王星では、大気や衛星・トリトンの調査、そしてここでも6個の衛星を発見しています。
星間ミッションへ向かう2機のボイジャー号
4つの外惑星探査を終えたボイジャー号に最後に与えられた任務は星間ミッション。つまり、太陽系の外からやって来る星間物質を観測しながら太陽系を脱出する事。
しかし、ここで気になるのはこれらの探査機は太陽系の外に出てどこに向かっているのか?です。
正直なところどこに向かうか?については特定はされておらず、
ボイジャー1号はへびつかい座方向。
ボイジャー2号は、りゅうこつ座のカノープス方向。
ちなみに、ボイジャー号が向かっている方角は、外惑星探査を終えた際に飛行方向がその方角になっただけで、へびつかい座やりゅうこつ座にターゲットを絞ったワケではないそうです。
また、この星間ミッションでは可能性は極めて低いですが、
人類以外の知的生命体に接触した場合に備え、人類のメッセージを刻んたゴールデンレコードが積み込まれています。

「画像参照:ボイジャー号に積み込まれたゴールデンレコード(Wikipediaより)」
このゴールデンレコードには、太陽系での地球の位置や人類の声、動物の鳴き声など、様々な”地球の情報”が収録されています。
ボイジャー号は本当に太陽系を脱出したのか?
ネットニュース等では、「ボイジャー2号太陽系を脱出!」と情報が伝えられていますが、正確に言うとまだ太陽系を脱出したワケではなく、太陽風が届く領域である”太陽圏”を離脱したに過ぎません。
また、ボイジャー2号より以前に先に打ち上げられたボイジャー1号も太陽圏を離脱しています。

「画像参照:ボイジャー1号、2号の現在地(NASAより)」
現在(2018年12月)ボイジャー2号は、地球から110億マイル(約177億キロ)の位置を飛んでいます。
この場所は、エッジワース・カイパーベルトの外側に到達したモノだと考えられており、太陽系の縁はまだ遥かに遠く、”彗星の故郷”と呼ばれる最外縁部の「オールトの雲」に到達するには約300年。
さらには、完全に太陽系を脱出するまで約3万年はかかると推測されています。
何故、ボイジャー2号だけが注目されるのか?
今回、ネットニュース等で話題になったボイジャー2号の太陽圏離脱。実はボイジャー2号ほどは話題になっていませんが、それ以前に3機の探査機が既に太陽圏を離脱しています。
まずは、前記したボイジャー1号は2013年に太陽圏を離脱しています。
更にその前には、同じくNASAが打ち上げた惑星探査機・パイオニア10号、11号の2機もあります。

「画像参照:太陽圏を離脱した4機の探査機の航路(Wikipediaより)」
これらが何故、それほど話題になっていないのか?
その理由は、ボイジャー2号だけがまだ”生きている”からです。
”生きている”・・・それはボイジャー2号の通信装置がまだ稼働しており、地球に情報を送り続けているからです。
しかし、ボイジャー2号から届く電波は非常に微弱で、光の速さで進む電波でさえ地球まで約18時間もかかっています。
まだ完全には太陽系を脱出していないとは言え、人類史上最も遠い、通信が出来る人工物であるボイジャー2号。
そんな偉業を達成したボイジャ-2号との通信が途絶えるのは2030年前後頃だと予想されています。