
1997年に打ち上げられ、約20年に渡り土星探査を続けて来た探査機「カッシーニ」。
カッシーニのミッションの功績は大きく、土星領域の謎を数々と解明して来ました。
そんなカッシーニに与えられた任務は2017年9月まで。
最期に与えられたミッションは、まさに決死の探査。
土星の大気に突入しながら地球にデータを送り、そして燃え尽きてしまいます。
ここでは、これまでカッシーニが行って来た土星領域の探査と、最後のミッションについて少し振り返りたいと思います。
土星探査機「カッシーニ」の任務とは?
土星やリング(環)、そして土星の衛星の探査を主な目的として、NASAとESAで共同開発されたカッシーニが打ち上げられたのは1997年10月。約7年の歳月を経て、2004年に土星軌道に到着。
以降、様々な土星領域の探査を行って来ました。

「画像参照:土星探査を行うカッシーニの想像図(Wikipediaより)」
カッシーニに与えられた任務は、土星の環の詳細を調査する事と、
太陽系最大の衛星で大気も存在するタイタンの調査。
その他、衛星の探査や発見をする事。
そして、最後のミッションである土星本体の探査です。
カッシーニの最大の功績は衛星「タイタン」ではなかった?!
当初、カッシーニの最大の探査目的であったのが衛星「タイタン」の調査。
「画像参照:大気を有する土星の衛星「タイタン」(Wikipediaより)」
カッシーニにはタイタンの地表に着陸させるためのホイヘンス・プローブという探査機が搭載されており、土星で真っ先に行った本格的な探査で2004年12月にホイヘンスのタイタン投下に成功。
タイタンの地表の様子や大気の分析等の調査が行われました。
参考サイト:【ホイヘンスが記録したタイタンに吹く風の音】
※ タイタンの音声データを聴くには、上記ESAホームページ内にあるFile1:acoustic during descentというリンクをクリックして下さい。
タイタンには地球に似た厚い大気があり、もしかしたら生命がいるのでは?と期待もされましたが、カッシーニやホイヘンスの詳しい調査により、そこに生命がいることは確認されず、超極寒の世界であることが判明。
しかし、カッシーニのミッション過程で、当初はまったく期待されていなかった意外な星に大きな注目が集まることとなります。
それが、氷で覆われたわずか500キロほどの小さな天体・衛星「エンケラドス」でした。
地下に生命存在が期待される海洋世界が広がるエンケラドス
太陽系で最も白い天体と言われる。星全体が厚い氷に覆われた衛星・エンケラドス。2014年カッシーニは、天体の引力を利用し方向を変えるスイングバイを行うため、エンケラドスに接近します。
その時、偶然にもエンケラドスの地表から噴き出す謎の物質を発見。
それは、エンケラドスの氷の裂け目から噴き出す間欠泉であることが判明。
つまり、間欠泉が噴き出すということは、厚い氷の下には溶けた水があるという証拠になり、エンケラドスの地下には海洋世界が広がっている可能性が大きいとの重大な発見をカッシーニがすることになったのです。

「画像参照:カッシーニが撮影したエンケラドスから噴き出す間欠泉(Wikipediaより)」
人類の宇宙探査史上、最大級とも言える発見をしたカッシーニ。
このカッシーニの発見をさらに詳しく調査するため、今後人類はエンケラドスに向けて探査機を送る計画をしています。
カッシーニ最期のミッション
打ち上げから約20年もの間稼働を続けていたカッシーニの最期のミッションは、土星のリング(環)の内側を調べる事と、土星の大気圏に突入し燃え尽き、完全に運用を終える事です。最期のミッションである土星の環の内側を探査することは人類初。

「画像参照:Wikipedia」
その探査当初の予想としては、内側には環の欠片など氷や岩石、宇宙塵等が浮遊していることが考えられましたが、実際には、そこにはほぼ何もない空間が続き、この結果に多くの科学者たちが驚きの声をあげているといいます。
さらにカッシーニは、土星の環の内側を通過する際、土星の大気の様子を至近距離で捉えており、その画像をNASAが公開しています。
カッシーニが土星の内側を通過する際に、どのような軌道をとったかは動画でも説明されていますが、最短で土星大気から3,000キロの上空まで接近するそうです。
22回に渡り土星周回ミッションを成し遂げるカッシーニ。
大きな功績を残したこの探査機の最期は大気圏突入での焼却処分。
でも、カッシーニの偉大な探査の旅は、人類の宇宙探査の歴史に永遠に残ることでしょう。