太陽系外惑星の探査が本格的もに始まったのは21世紀に入ってからですが、既に6,000個以上の系外惑星が見つかっています。
ですが、その中で生命が居る可能性があると考えられる惑星はほんのわずか。
しかも、発見された系外惑星のほとんどは、私たちの太陽より遥かに小さく暗い恒星を公転しており、その惑星に生命が存在していたとしても、将来、私たち人類が居住出来るかについては大きな疑問が残ります。

そんな中、ある科学者たちが私たちの太陽に似た恒星へ向け探査機を送り、系外惑星を直接探査しようという計画があるそうです。
もし、そんな計画が実現すれば時空を超えるような壮大なプロジェクトになるとの事。いったいそれはどんな計画なのでしょうか?

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太陽系外惑星の大半は赤色矮星を公転する惑星

冒頭でも触れましたが、21世紀になり人類の観測技術は大きく進歩し、これまで発見が難しいとされて来た太陽系外惑星の探査も出来るようになり、既に6,000個以上(2023年現在)の系外惑星が発見されています。

「Image Credit:Jack Madden/Cornell Universtiy」
そんな6,000個以上見つかった系外惑星の大半は、私たちの太陽よりも遥かに小さく暗い赤色矮星と呼ばれる低質量恒星を公転している惑星たちであり、すなわち、私たちの太陽と類似している恒星ではないため、その赤色矮星を公転している惑星も地球と類似しているとは考えにくいと言っても良いのかも知れません。

では何故、赤色矮星ばかりに系外惑星が見つかっているのでしょうか?
その理由は単純に「見つけやすい」という事であり、現在、主に系外惑星探査で用いられている手法が赤色矮星を周る惑星の探査に適しているからに他ならないからです。


「Copyright ©:ESA Science & Technology All rights reserved.」
上↑↑解説動画が「トランジット分光法」と呼ばれる現在、主に用いられている太陽系外惑星の探査方法なのですが、赤色矮星は小型の恒星であるため惑星も主星(太陽)に近い距離を公転しています。
そのため、惑星が主星の前を横切る度合いもわかりやすく、そのときに起こる恒星の減光から惑星を発見する事出来るのです。

しかし、私たちの太陽のように、恒星と惑星の距離が離れている場合トランジット分光法では発見が難しく、他の探査方法を使っても現在の観測技術ではかなり困難だと言え、これまでの6,000個の系外惑星が見つかったとは言え、実際は本当に太陽系のような惑星系はほとんど見つかっていないのが現状なのです。
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太陽系外惑星探査で見つかった惑星は人類の居住条件に合わない

ところで何故、赤色矮星が低質量とは言え太陽と同じ恒星なのに”類似の恒星”ではないのでしょうか?

それは、赤色矮星が放つ光に理由があります。
私たちの太陽からは可視光と呼ばれる波長域の長い光が放出されており、私たち人類を含む地球上の生物たちは可視光の下で生きています。しかし、赤色矮星からは可視光よりも波長の長い近赤外線の光が多く放出されているため、仮に赤色矮星を公転する惑星に生命が宿っていたとしても、その光の性質の違いから地球の生命とは異なる生命が生息している可能性が高く、また、人類にとっても居住可能とまでは言い難い事も予想されるのです。

「Image Credit:赤色矮星を公転する惑星表面の想像図(Wikipediaより)」

太陽類似恒星に直接探査機を送り込む計画

現在の観測技術で見つかった系外惑星は、赤色矮星を周る惑星を含め、大気の組成や惑星に水があるか無いか等の大まかな情報を掴む事は出来ますが、仮にその惑星に生物が住んでいたとしても、どんな生物がいるのかまではわかりません。

そこで、惑星科学を専門とする科学者たちが立ち上げた計画は、直接、探査機を系外惑星に送り込んで惑星表面を調べようというモノでした。
その計画の名前は「プロジェクトRIGEL」(Robotic Interstellar GEologicaL probe)

この「プロジェクトRIGEL」では、太陽類似恒星で太陽系に最も近いとされる「くじら座タウ星」を探査目標に選び、タウ星を公転する生命が存在する可能性を持つ惑星「くじら座タウ星e」に、ロボット地質学者を乗せた探査機を送り込み、惑星に着陸し詳しい調査を行うといった試みに挑戦すると言います。

「Image Credit:くじら座タウ星eの想像図(The University of Hertfordshire:2012より)」
なお、くじら座タウ星系までは約12光年の距離があり、現在の技術では片道1,000年以上はかかってしまうと言います。
ただ、それは最新の技術を使って秒速3200キロメートル(光速の約1%)の速さを達成した場合の事であり、探査機の重量も超軽量にする必要もあり、目的地に到着した時に減速し、惑星の軌道に入り着陸するための技術も必要。また、12光年先から地球と交信する方法等、技術的にかなり課題は多く、実現に向けてはまだまだ時間がかかる見通しのようです。

「Image Credit:くじら座タウ星eの地表想像図(Forbes JAPANより)」
この「プロジェクトRIGEL」初期の計画(コンセプト)は2030年までには方向性を決定するようで、それ次第では目標の惑星も変更になるかも知れません。

ただ個人的に気になるのは、地球型惑星とされる「くじら座タウ星e」はトランジット分光法で発見されたのではなく、恒星が惑星の引力でふらつく現象を捉えた「ドップラー分光法」によるモノで、この方法では直接、惑星を捉えるのではなく恒星のゆらぎによる間接的な検出であり、探査機が目的地に到着した時、予想を裏切る惑星の可能性があるかも知れません。
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