近年、地球外生命探査のターゲットとなっている恒星の赤色矮星。
この赤色矮星の周りを公転する地球型惑星が次々と見つかり、その中には生命生存が可能と思われるハビタブルゾーン惑星も発見されており地球外生命発見に大きな期待が寄せられています。

しかし、赤色矮星にはいくつかの問題点がある事もわかっているため、この事からこの恒星を周る惑星には生命存在は困難じゃないか?との懐疑的な声も挙がっています。

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赤色矮星に続々と見つかる地球型の系外惑星

現在、宇宙に存在する恒星の4分の3は赤色矮星ではないか?と推測され、宇宙の大半を占めると考えられています。
また、赤色矮星が放つ光のスペクトル型がM型で、これは天体自体の大きさや質量が小さいため比較的低温で輝く恒星の事を指しており、私たちの太陽はG型の恒星に分類され黄色く輝くため黄色矮星とも呼ばれています。

「Image Credit:スペクトル分類(型)によりO型からM型まで並べられた恒星と分類表(Wikipediaより)」
では、G型である太陽とM型の赤色矮星ではどれくらい違うのでしょうか?
例えば、最近、7つもの地球型惑星が発見されて大きな話題になった赤色矮星・TRAPPIST-1と太陽を比べてみるとこんなにも違います。

「Image Credit:YouTube
TRAPPIST-1の場合、質量は太陽の8%ほど、太陽の表面温度が約6,000度なのに対しTRAPPIST-1は約2,600度程しかありません。
他の赤色矮星もかなり小型で大きくても質量・直径ともに太陽の半分以下で、明るさに至っては200分の1以下程度しかありません。

近年、このような小型の恒星に次々と地球型の惑星が見つかっており、その中には水が液体の状態で存在出来る領域ハビタブルゾーンに見つかった惑星も数十個ほどあります。
つまり、水が蒸発もせず凍結もしないのであれば、必然とその惑星に生命が居る可能性も出て来るワケで、地球外生命発見か?と大きな期待に変わって来る事にもなって来るのです。

ポジティブ思考①:赤色矮星の惑星には地球と違う生物がいる可能性

赤色矮星を周る惑星が地球に似たサイズの岩石惑星で、尚且つその惑星がある場所がハビタブルゾーンだった場合、惑星に大気と水が存在した時に生命が宿る可能性は十分にあります。
それが仮に地球とほぼ同じ環境だったとすると、そこに生息する生物は地球と似ているのか?とも想像する事も出来るのですが、おそらくは全く違うとは言えないでしょうが、かなり異なる生物がいる可能性があるかも知れません。
その理由として挙げられるのが紫外線の強い太陽光とは異なり、赤色矮星が放つ光は赤外線が多く惑星の昼間は赤く照らされ、そこに生える植物も近赤外線を使って光合成している事が考えられ、その植物を摂取する動物もまた環境に合った地球とは違う生物に進化している事でしょう。


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ポジティブ思考②:赤色矮星の惑星には知的生命体がいる可能性

赤色矮星の特徴の一つは異常に寿命が長い事が挙げられます。
何故なら、赤色矮星のような小さい恒星は熱核融合反応の燃料となる水素量は少ないですが、質量が小さい分燃料消費も遅いため核融合反応は穏やかに進み言わば燃費の良い星となり、一方、赤色矮星より遥かに質量の大きい太陽は燃費効率がそれほど良くなく寿命は100億年前後だと考えられており、それに対し赤色矮星は最低でも数百億年の寿命があると推測されています。

では、この長寿命が意味する事は何なのでしょうか。
それは、太陽の恵みを受けて人類が進化するまで約45億年かかった事を考えれば赤色矮星に知的生命体が存在した場合、もっと長い時間の間にさらに進化が進み人類以上の知性のある生命がいても不思議ではありません。

「Image Credit:iStock」
昔からオカルト的に騒がれているUFOに乗ってやって来ているとされる宇宙人のウワサは、それがもし本当なら、あの特徴的な大きな目は赤色矮星からの弱い光を効率的に取り込むために進化した目ではないか?と、勝手ながら想像もしてしまうと同時に、彼らはどこかの赤色矮星の惑星系からやって来た”赤色矮星人”であるかも知れないと考えてしまいます。
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ネガティブ思考①:赤色矮星の激しい活動は生命には致命的影響アリ?

赤色矮星に次々と見つかる地球型の惑星。
この発見により、地球外生命体が居る可能性が高まって来た!と言いたいところですが、どうもそんなに楽観視は出来ないようです。

その理由は、赤色矮星の多くは活動が活発な傾向にあり、活動によって明るさが変化する変光星の特徴を持っており、赤色矮星に”変光”が見られる原因として考えられるのが、非常に大きな恒星の表面爆発であるスーパーフレアが良く発生する事だと考えられています。

「Image Credit:国立天文台」
このスーパーフレアは生命に致命的な影響を与えてしまう危険があり、この現象が頻繁に起きている赤色矮星の惑星には生命が芽吹かない可能性もあるそうです。

ちなみに、地球から約4.2光年という太陽系に最も近い恒星・プロキシマケンタウリもまた赤色矮星で、尚且つ活動が活発な変光星でありますが、このプロキシマケンタウリにもハビタブルゾーンに位置する惑星(プロキシマb)が発見され、生命の存在や将来人類の移住先候補になるのでは?と期待もされていますが、主星であるプロキシマケンタウリが変光星である事で「生命はいないのではないか?」と懐疑的な声も聞かれています。

ネガティブ思考②:赤色矮星のハビタブルゾーンは太陽に近過ぎる

赤色矮星の場合、恒星の質量の小さい事により、ハビタブルゾーンも主星にかなり近距離になってしまう事がわかっています。

「Image Credit:赤色矮星TRAPPIST-1と太陽系のハビタブルゾーン比較図(Wikipediaより)」
ハビタブルゾーンにある生命生存可能な惑星が太陽(主星)に近い事が意味する事は、太陽の強い重力に影響され自転と公転の同期である”潮汐ロック”起きてしまう事にあり、これをわかりやすく説明すると地球と月の関係が参考になるかと思います。
つまり、月が常に同じ面を地球側に向けている現象~それが潮汐ロックであり、この現象が赤色矮星の惑星にも起こっている事が考えられ、常に同じ面を太陽側に向けている可能性があり、この状態になっていた場合、昼側は太陽熱で熱せられ続け灼熱状態になり、夜側は永遠に陽が当たらないので極寒の環境になっている可能性が高い事になります。
もしこのような状態になってしまっている場合、いくら惑星がハビタブルゾーン内にあったとしても生命生存にとっては難しいかなり過酷な環境になってしまう事が考えられます。

しかし一部の科学者たちは、その惑星に十分な大気と水(海)があれば昼側で熱せられた大気と水が夜側へ流れ、逆に冷えた大気と水は熱い昼側へ循環し、潮汐ロックの状態でも温暖な環境が保たれる可能性があるとの事も推測しているようです。
また、このような効率の良い循環が無くても、昼と夜の境目~トワイラトゾーンは生命が住むには最適な環境が存在する可能性もあるとの推測もあります。

「Image Credit:赤色矮星の惑星でのトワイラトゾーンの想像図(Wikipediaより)」

それでも赤色矮星には生命が居る可能性がある!?

宇宙にある恒星の大多数を占めると言われる赤色矮星。これらの多くに生命がいるとあれば宇宙は生命で溢れている!?という事になるのですが、現実問題として私たちは未だに地球外生命に出会えていません。
となれば、宇宙での生命存在はネガティブ思考が正しいのか?と、ちょっと残念な気もしてしまいます。
しかし、赤色矮星全てが生命存在に向いていないワケではなく、中には期待が持てる星も発見されています。

例えば、地球から約12.5光年離れた場所に見つかったティーガーデン星という赤色矮星があります。
ティーガーデン星の特徴は、誕生から80億年ほど経過しており非常に安定した活動を続けている恒星である事で、つまり、スーパーフレアといった活発な太陽活動はあまり見られず、生命が進化するには最適な環境の可能性があると言われています。
また、80億年という恒星の年齢からも生命が誕生し進化するには十分過ぎるほどの時間があり、もしかしたら人類より遥かに文明が進歩した知的生命体もいるかも知れません。

「Image Credit:ティーガーデン星の惑星系の想像図(University of Göttingen, Institute for Astrophysicsより)」
そんな期待させてくれる赤色矮星・ティーガーデン星には、ハビタブルゾーンに地球型の岩石惑星も発見されています。
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