人類が初めて月面に到達してから半世紀以上経過していますが、現時点(2021年)までにおいて人類が月面に立つ事はありませんでしたが、半世紀を経た今、再び月に向けて宇宙飛行士を送る計画が実現しようとしています。
それが、月軌道プラットフォームゲートウェイ「Lunar Orbital Platform-Gateway」計画。
この計画は2019年から本格始動し、2020年代の中頃には宇宙飛行士を派遣し月軌道ステーションとして運用を開始するそうです。

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月軌道プラットフォームゲートウェイ「Lunar Orbital Platform-Gateway」とは?

NASAが計画を主導する月軌道プラットフォームゲートウェイ「Lunar Orbital Platform-Gateway」。(略称:LOP-G)
これは月面ではなく、月に近い軌道上に宇宙飛行士数名が長期間滞在できる宇宙ステーションを建設するというモノで、言わば、国際宇宙ステーション(ISS)の後継と呼べるべき設備だそうです。

「Image Credit:月軌道ステーションの想像図(Wikipedia)」
このLOP-Gは、建設方法もISSで得た技術を応用したモノで居住棟や実験棟を建設地(月軌道)まで運び、ドッキングさせて組んで行く方式でこれを段階的に行い少しずつ拡張して行くと言います。
しかし、地球上空約400キロの低軌道で建設されているISSとは違い、約40万キロ近い月軌道まで建設資材を運ぶのは高度な技術とともに莫大な費用もかかることが予想されます。

現在のところ、月軌道ステーション建設にどれだけの費用がかかるのか?については公表されていませんが、NASAだけで計画を実行して行くことは難しく、アメリカとロシアが中心となり欧州宇宙機関 (ESA)や日本も含めた各国の協力で進めて行く予定になっています。

この計画が実行されるのは2020年代中を目指しており、まずは無人で順次軌道上に居住棟などの資材が打ち上げられ、その後、直接宇宙飛行士が月軌道に乗り込み建設を行う事になっており、実際に月軌道ステーションに宇宙飛行士が乗り組むのは2020年代後半だとされており常駐クルーは4名との事です。

月軌道プラットフォームゲートウェイの運用目的

ところで、何故、わばわざ地球から遠く離れた月軌道に新たな宇宙ステーションを建設するのでしょうか?
その理由は、LOP-GがISSとは違う目的で運用されるからに他なりません。

ISSでは、地球低軌道で地上の観察や大気の調査、また無重力を利用した様々な実験が行われていますが、LOP-Gは今後開拓が行われる月面基地や2030年代に計画されている火星有人探査の中継基地として利用され、他、小惑星探査等の中継にも使われるとの事です。
つまり、火星に行くためには、地球上からロケットを打ち上げるより、LOP-Gで準備を整えてから火星に向かう方が燃料節約などコスト削減にも繋がると言います。
また、月軌道上では、地球と月の重力の作用で姿勢制御に必要なエネルギーが少なくて済み、利便性の面でもこの場所が建設地に選ばれたとの事です。

さらに、このLOP-G建設はNASAが提唱する「深宇宙ゲートウェイ構想」の一環であり、将来的には火星以外にもさらに遠い天体の深宇宙を目指す計画があるようです。
なお、ここで言う「深宇宙」とは木星や土星などにも向けた探査を目指すモノで、いずれはLOP-Gを拠点に木星等にも有人宇宙船を飛ばす構想を立てているそうです。

「Image Credit:映画「2010年宇宙の旅」より」

月軌道ステーション最初のミッション

LOP-G最大のミッションは火星有人探査の拠点とする事。
しかし、そのミッションが行われるのは2030年代に入ってからとされており、その前の2020年代には小惑星のサンプルを採集して持ち帰る「サンプルリターン」の中継地点にLOP-Gが使われると言います。
その中継の方法は、無人探査機が小惑星で採集したサンプルを直接地球に持ち帰るのではなく、月軌道上に投入しそれを宇宙飛行士が回収し調査する方法が考えられています。
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月軌道ステーションのミッションに日本も参加?!

国際宇宙ステーション(ISS)には日本も参加し、何人もの日本人宇宙飛行士がISSに滞在しています。
もし、これから月軌道ステーションの建設が始まれば日本もこれに投資し、ミッションに参加するということが前向きに検討されているとの事。
まだ検討中なので具体的なミッションはわかっていませんが、実現すれば日本人に月面探査、月面基地建設の任務にあたらせるとあります。

「Image Credit:月面基地の想像図(JAXA宇宙情報センターより)」
これがアメリカ主導とあれば、追従する日本が参加する可能性も大で、ましてや、莫大な費用がかかるであろうこの計画には日本の投資にも期待がかかることでしょう。

実際、日本政府機関で真剣な協議が行われているとの事で、近日中に参加するかどうかはハッキリとするかと思います。

何故、月軌道ステーションを建設するのか?

月軌道ステーション建設の意図は、月面や火星などの宇宙進出の拠点にする事ですが、そもそも何故、宇宙進出をしていくのか?という疑問もあるかと思います。
もちろんそこには「宇宙の謎を解明する」という事もありますが、その先には、宇宙に進出し開拓することで膨大な資源を採掘するという目的もあります。

「Image Credit:小惑星の資源活用のイメージ図(NASAより)」
これまでの人類は地球の資源だけに依存し、その資源も枯渇の道を辿っています。
地球資源が枯渇してしまっては、今後の人類の未来が無くなる可能性もあり、これは決して大げさな表現などではないでしょう。
となれば、どうしても内(地球)ではなく外(宇宙)に目を向けて、資源の確保に当たらないといけなくなる。
その資源確保のための出発点になるのがこのLOP-Gであり、まずは膨大な鉱物資源、さらには将来のエネルギー源となるかも知れないヘリウム3の採掘が出来る月面の開拓が必要になって来ます。

そして、さらには火星や他の天体にも進出して行き、もしかしたら、将来的には人類そのものを宇宙に移住させて行く・・・
とにかく、LOP-G計画が実行に移されて来たという事は、人類の宇宙開拓が大きく躍進する意味も持っているのではないでしょうか。
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