太陽系6番目の惑星は、その特徴的で巨大なリング(環)を持つことで有名な誰もが知る「土星」です。
そんな土星が今、2つの発見で話題になっており、それは以前から生命が宿るかも知れないとウワサされている衛星・エンケラドゥスに新たな発見があった事と、また一気に20個もの衛星が発見され、木星の衛星数を抜いて太陽系最多の衛星を持つ惑星になった事です。
今回は、土星に関するこの2の話題について解説してみたいと思います。

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いよいよ衛星・エンケラドゥスに生命存在の可能性が濃厚に!

土星の第2衛星・エンケラドゥス。

「Image Credit:Wikipedia」
当初は、一面を厚い氷に覆われた直径500キロほどのこの小さな衛星はあまり注目されていませんでした。
そんなエンケラドゥスが注目を浴びるきっかけとなったのが、土星探査において歴史的な成果を残した探査機・カッシーニが、2005年3月に軌道変更のため、衛星の重力を利用してフライバイを行おうとしてエンケラドゥスに接近した時でした。
このときカッシーニは、エンケラドゥスに対して観測の目を向けたところ水蒸気で出来たと思われる微量の大気を発見し、さらに大気の供給源となっている可能性がある地表から噴き出る氷粒の間欠泉も発見。

「Image Credit:NASAジェット推進研究所の動画より」
この発見によりエンケラドゥスの厚い氷の下には熱源があり、それにより氷が溶けた液体の水の領域(海洋)があると推測され、そしてカッシーニが採取した間欠泉物質の成分分析した結果、原始的な微生物のエネルギー源となり得る水素分子が確認された事で、もしかしたら氷の下に生命が宿っているのではないか?という期待が高まったのです。

新たに検出された有機化合物で生命存在はさらに濃厚に!

2017年9月に10年以上に渡る土星及び土星の衛星の調査を行い、歴史に残る成果をあげて任務が終了した探査機・カッシーニですが、カッシーニによる膨大な量の探査データは未だに解析が行われており、今回、その解析データの中から、カッシーニがエンケラドゥスで採取した水蒸気に含まれる成分をさらに分析したところ、アミンと呼ばれる分子が発見されメディアでも大きく取り上げられるほどの話題になる事となります。
アミンは窒素や酸素を含む有機化合物で、生命の源になるアミノ酸に似た分子。
つまり、アミンが見つかった事でエンケラドゥスには先に発見された水素分子に加え、生命を構築するパーツが複数存在しているという事になります。
この事により想像できるのは、エンケラドゥスの厚い氷の下には氷を溶かす熱源があり、そこには光の届かない世界で生活する、言わば地球の深海生物のような生き物がいる可能性があるのです。

「Image Credit:Wikipedia」

衛星・タイタンの湖は地下の爆発で形成されていた!?

続いては土星第6衛星・タイタンの話題。
こちらも探査機・カッシーニによる調査で判明した事で、タイタンには地球の1.5倍もの濃い大気が存在しており、ただ、その成分が地球とは異なり大半が窒素で、残りがメタンとエタンといった成分で構成されていて視界的には窒素スモッグのモヤのかかった世界だと言います。
さらにこの衛星には河川、湖といった地形も存在し雨も降っている事が判明しています。
しかし、表面温度がマイナス180度以下という超低温では川や湖を水が流れるハズもなくその成分は液体メタンとエタンといった炭化水素であり、降る雨も液体メタンで地球とはまったく異なる世界です。

「Image Credit:窒素スモッグでモヤのかかったタイタンの湖風景(想像図)(ILLUSTRATION BY NASA/JPL-CALTECHより)」
そんなタイタンを分析する中で最近わかってきた事は、湖がどうやって形成されたのか?という謎について、あくまでもこれは仮説で可能性の域でありますが、タイタンでは窒素が予想以上に多く地下にも多く窒素が溜まっており、それが爆発的の放出された事によりくぼみが出来、そこに液体メタンやエタンが流れ込んで湖が形成されたとの事と推測されると言います。
さらには、タイタンにも有機化合物が見つかっており、これが地球生命の常識とはまったく異なる窒素や炭化水素に順応した生命を誕生させ、液体メタンの湖の中で生息している可能性もあるとの事。
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新たに20個も衛星を発見!土星が太陽系最多の衛星保有惑星に!

これまで太陽系の惑星で最多の衛星数を誇っていたのは木星でその数は79個でした。
しかし2019年。地球から高性能望遠鏡を使って観測したところ、土星の外周部に新たな衛星を20個発見しました。
これにより、土星の衛星数は82個となり太陽系最多の衛星保有惑星に躍り出る事になりました。

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でも気になるのは、何故一度に20個もの衛星が見つかったのでしょうか?
それは、過去にハワイにある日本の「すばる望遠鏡」で2004~2007年に集めた観測データを分析した事で見つかった事にあり、発見された衛星たちはいずれも直径5キロほどの小さな天体だったという事も一度に発見された理由の一つのようです。

「Image Credit:新発見の土星衛星の軌道図(Illustration is courtesy of the Carnegie Institution for Science. Saturn image is courtesy of NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute. Starry background courtesy of Paolo Sartorio/Shutterstock.)」
ちなみに上図↑の軌道図を解説すると、土星に近い青色軌道図の2衛星が約45~47度の軌道傾斜角を持つ「イヌイット群」に属する衛星で、このイヌイット群には他にも5個の衛星が存在しており、約2年の周期で土星を一周しています。
次に緑色の軌道図にある1個の衛星は「ガリア群」と呼ばれる33~41度の軌道傾斜角の衛星群の1つで、公転周期は約3年でここには他に4つの衛星が土星を周回しています。
そして最後に紹介する赤色の軌道図で注目すべき残り17個の衛星。
この領域は「北欧群」と呼ばれ土星で最も多くの衛星が発見されている場所でもあり、軌道要素もばらつきが大きいのが特徴。この不安定な軌道要素もあってか、発見された17個の衛星は全て逆行(土星の自転方向と逆)した公転軌道を持っており、元々は土星の引力に捉えられた別の天体が、潮汐力でバラバラに破壊され破片が衛星として土星を周回しているのかも知れないとの推測もあります。
なお、新発見の20個の衛星たちは、まだ名前が決まっていないそうで(2019年10月現在)、Twitter経由で一般から名前を募集しているとの事。
●参考サイト:【命名キャンペーンの公式ページ(英語表記)】
また、この衛星命名の条件は、これらが属する「イヌイット群」「ガリア群」「北欧群」それぞれの神話に由来しないといけないらしく、言わば好き勝手には付けられないというのが難点。
それでも、自分が衛星の命名者になるのですから非常に名誉のある事ではないでしょうか?
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