太陽よりも重い恒星の最期は華々しく爆発して散るとされており、私たちはこれを「超新星(Supernova)」と呼んでいます。
そんな超新星爆発をもうまもなく起こそうとしている恒星(ウォルフ・ライエ星)を最新鋭の宇宙望遠鏡(JWST)が捉え、その高解像度画像をNASAが公開しています。

ところでウォルフ・ライエ星とはどんな天体なのでしょうか?今回はNASAが公開した画像をもとに、ウォルフ・ライエ星について解説してみたいと思います。

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JWSTが捉えた超新星爆発間近の恒星の画像

下画像↓↓は、NASAの最新鋭宇宙望遠鏡・ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が「ウォルフ・ライエ星」を近赤外線と中間赤外線で撮影した画像です。

「Image Credit:NASA,ESA,CSA,STScI,Webb ERO Production Team」
ウォルフ・ライエ星とは恒星そのものの名前ではなく、恒星の進化段階におけるカテゴリーの名称で、星の寿命が尽きる前、水素に富む外層が強い恒星風で吹き飛び、高温の内部がむき出しの状態になっている大質量恒星を総称して「ウォルフ・ライエ(Wolf-Rayet)」と呼んでおり、公開画像のまるで一輪のバラの花のような美しい天体は、地球から「いて座」方向約1万5,000光年の位置にある青色巨星「WR124」(中心の星)と、周囲を取り巻く花びらのような形状が、WR124が放出したガスの散光星雲「M1-67」で形成されたウォルフ・ライエ星です。

また、欧州宇宙機関(ESA)はこのウォルフ・ライエ星のズーム画像を動画に編集しています。


「Copyright ©:HubbleWebbESA All rights reserved.」

ウォルフ・ライエ星とはどんな恒星なのか?

ウォルフ・ライエ星(WR型星)とは、質量が非常に大きい恒星が進化の最終段階を迎えた状態にあり、恒星の大きさの指標(HR図)の光度とスペクトル型でも最上位に位置する恒星でもあります。

「Image Credit:Wikipedia」
大質量恒星の最上位に位置するウォルフ・ライエ星は、超高温(表面温度は2万5,000度~10万度以上)光度は太陽の3万倍~100万倍にも輝く青色巨星で、恒星の最終段階であるプロセスの膨張期に、自らが出す恒星風で表層のガスを吹き飛ばしており、「WR124」の場合、時速15万キロ以上の速度で高温ガスが宇宙空間に広がっています。
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超新星爆発間近のウォルフ・ライエ星

大質量恒星のプロセスで最終段階にあるウォルフ・ライエ星は、もう間もなく超新星爆発を起こすと運命にあると言います。
画像が公開された恒星「WR124」は、質量が太陽の30倍程あると考えられており、ウォルフ・ライエ星になった事で質量の約3分の1が失われたと推測され、この後は一気に重力崩壊が進み超新星爆発を起こすと考えられています。

「Image Credit:iStock」
現在、私たちの太陽系が属している銀河系(天の川銀河)内には200以上のウォルフ・ライエ星が発見されており、うち6割以上に伴星がる事が確認されています。

地球に近いウォルフ・ライエ星は?

これまで200以上発見されたウォルフ・ライエ星ですが、その中で太陽系の近隣に存在し、地球に影響を及ぼすような天体は今のところ確認はされていないようで、現在、最も地球に近いウォルフ・ライエ星は「はくちょう座」方向約6,200光年に位置する「WR134」だとされています。

「Image Credit:ウォルフ・ライエ星「WR134」(Wikipediaより)」
自身の強力な放射と恒星風によって吹き飛ばされた薄い泡状の星雲を纏った「WR134」の大きさは太陽の約5倍程で、6万度を超える高温によって太陽の約40万倍の明るさで輝いています。

また、ウォルフ・ライエ星へと進化する大質量恒星は短命(数百万年~数億年)でも知られ、進化の最後に超新星(重力崩壊)になると考えられていますが、その超新星のタイプもいくつかに分かれており、WN型(ヘリウムと窒素の輝線が強い恒星)、WC型(ヘリウムと炭素の輝線が強い恒星)が超新星爆発を起こすとIb型超新星。ヘリウム層の大半を失ってしまったWO型(酸素の輝線が強い恒星)が爆発した場合はIc型超新星になると予想されています。
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