このサイトでも何度も紹介しているオリオン座の一等星・ベテルギウスの動向ですが、ここに来てベテルギウスが急速に暗くなる減光現象が起きています。
変光星であるベテルギウスの急速減光が示す意味を推測できる人達からは、「いよいよ”その時”が近づいて来たか?」と大きな話題になっています。

ところで、その時とはいったい何なのでしょうか?
それは、人類史上初で誰も見た事が無い最大で最高の天体ショー幕開けの前触れなのかも知れないのです。
◆参考記事:【オリオン座のベテルギウスが減光から増光へ転じた理由とは?】

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何故ベテルギウスの動向は注目され話題なのか?

冬の星座の代表格として誰もが知るオリオン座。
そのオリオン座には2つの一等星・ベテルギウスとリゲルがあり、中でもベテルギウスは冬の大三角の一角を担っているとても有名な星でもあり、一等星の中では9番目に明るく輝く恒星です。

「Image Credit:Yahoo!JAPAN きっず図鑑
そんなベテルギウスをさらに有名にしているのが、この星がもう間もなく寿命を終えてしまうという事なのです。

通常、太陽を含む恒星は末期を迎えると大きく膨張するのですが、ベテウギウスは今まさにその段階にあり、赤色超巨星という太陽の1,400倍にも達する大きさまで巨大化している状態にあり、その大きさを具体的に太陽系で置き換えてみると、地球の軌道を遥かに超え木星の軌道まで到達するほど膨張をしています。

「Image Credit:mail Onlineより(※ 左下0.015″は太陽と地球の距離である1天文単位を表します。)」
宇宙には他にも寿命が末期で膨張を続けている恒星はたくさんあるのですが、ベテルギウスには他の星とは違う注目を集めている理由があります。
それは、太陽質量の8倍を超える恒星が最期を迎えると大爆発を起こす超新星になるとされており、ベテルギウスの質量は8倍を遥かに超える約20倍もあり、おそらく間違いなく超新星爆発を起こすだろうと推測されている事に加えそれが明日起こっても不思議ではない状態にある事です。

そして、その超新星爆発は人類がこれまで経験した事の無い近距離で起こる事にあり、普通、ベテルギウスまで秒速30万キロで進む光の速さで640年もかかる距離があると聞くと、とてつもなく遠いという印象を受けるのですが、広大過ぎる宇宙のスケールで考えると640光年という距離は非常に近く、言わば「ご近所さん」と言ってもいいくらいの距離になってしまうのです。

そんな”ご近所”で起こるとされる超新星爆発。実は、人類はこれまでそれほどまでの近距離で起こる超新星爆発は経験した事がありません。
それが、ベテルギウスに注目が集まる理由なのです。

ベテルギウスの急激な減光が意味する事

恒星は、内部にかかる強大な圧力による熱核融合で生じる膨張するチカラと、恒星自体が持つ重力で収縮するチカラの均衡が取れる事で星としての形状を保っています。

「Image Credit:恒星の重力バランスのイメージ(YouTubeより)」
太陽のような主系列星は水素が内部で熱核融合反応が起こしヘリウムを形成していますが、その水素が尽きた時は徐々に核融合反応が進行し、ヘリウムから炭素、ネオン、ケイ素と徐々に重い元素が形成され最後には鉄元素が造られます。

また、最も重い元素である鉄は核融合反応を起こさないため重力の均衡が崩れてしまい、ベテルギウスのような大質量の恒星は核融合反応が暴走してしまい、最期には重力崩壊で一気に内部に落ち込んで行き、その衝撃波によって大爆発(ショックブレイクアウト)~超新星爆発を起こしてしまう事になります。

「Image Credit:超新星爆発・ショックブレイクアウトのイメージ図(YouTubeより)」
現在のベテルギウスは恒星としての寿命が末期段階のため、熱核融合反応が進行し次々に重い元素が形成されながら膨張し続ける事で非常に不安定な状態にあり、そのため増光と減光を繰り返しています。

そんなベテルギウスは今、これまでの観測の中では最も急激な減光をしているとの事。

「Image Credit:ベテルギウスの変光グラフ(ベテルギウスの光電測光より)」
この現象が起こっている一つの原因として考えられるが、超新星爆発を起こす一歩手前の熱核融合反応の段階にあるのでは?という事であり、つまり、最終段階である鉄元素形成の前であるネオンからケイ素への核融合の時、恒星自体が急激に収縮する事で大きな減光も起こり、もしかしたら今のベテルギウスの減光はその段階に入っているのでは?との推測も出来るそうです。
さらにネオンからケイ素、そして鉄元素が形成されるまでの期間は非常に短くわずか数年ほどと言います。
この推測が正しければ、ベテルギウスの超新星爆発はあと数年、もしくは数カ月かも知れないという可能性もあるのです。
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ベテルギウスの超新星爆発は人類史上最高の天体ショーになる?!

現在、急激な減光となっているオリオン座の一等星・ベテルギウスは、爆発寸前の状態にあるという見方もあります。
では、ベテルギウスがもし超新星爆発を起こしたらどうなるのでしょうか?

「減光中のベテルギウス(2019年12月撮影)」

「Image Credit:AstroArts」
※ 上写真は実際に撮影されたオリオン座です。
ベテルギウスの下(対角線)に見える同じ一等星・リゲルは少しベテルギウスより明るい星ですが、それでもリゲルと比べててみるとかなり暗く見える事がおわかりかと思います。


超新星爆発はまさに巨大な恒星の最期を飾る一大天体ショーと言ってもいい現象で、その破壊力は凄まじく、太陽が一生かけて放出するエネルギーを一瞬で放つと言われています。
そのため、ベテルギウスから600光年以上離れている地球でもその光景を見る事が出来、爆発の光はもう一つの太陽が出現する程明るいと推測されています。

「Copyright ©:masaharu yajima All rights reserved.」
おそらくはこの爆発による天体ショーは数カ月続いた後、徐々に暗くなっていき、数年後には完全に見えなくなってしまい、そして、これまで冬の星座の代表として夜空を飾っていたオリオン座は永遠に失わてしまう事になるのです。

ベテルギウスの爆発は地球に影響しないのか?

凄まじいエネルギーを放ち爆発するであろうベテルギウスですが、この爆発の影響が地球まで及ぶ事はないのでしょうか?
爆発による衝撃波の影響は半径数十光年に及ぶと考えられており、その範囲内にある星々は壊滅的な被害を受けるかも知れませんが、幸いな事に地球は640光年も離れていますので影響はないと思われます。
しかし、もしベテルギウスの自転軸が太陽系の方角を向いていたとしたら、640光年離れていても被害を免れない可能性があると言います。

それは超新星爆発時に星の自転軸から放たれる強烈な放射線で、これをガンマ線バーストと呼び、地球がこの直撃を受けてしまった場合、オゾン層が破壊され人類を含む地球生命に甚大な被害が出てしまう可能性があるとされています。

「Image Credit:ガンマ線バーストの想像図(東京大学宇宙線研究所より)」
これについては科学者たちが詳しく観測し、自転軸が太陽系方向に向いていない事が判明しており、とりあえずはこの危機は回避できるとの事です。

ベテルギウスの爆発はいつになるのか?

急激な減光状態に入っているベテルギウスですが、実際のところ本当に超新星爆発を起こす前触れなのか?はまだわかっていません。
変光星であるベテルギウスの減光がたまたま地球から暗く見えているだけかも知れませんし、もしこれが前触れであったとしても、いつ爆発を起こすのか?は誰にもわからないのが現実なようです。
つまり、ベテルギウスの爆発は明日かも知れないし、百年後、千年後かも知れませんし、もしかしたら爆発を起こさない可能性もあると言います。

ただ、今回のこの急激な減光はベテルギウス観測でははじめての現象だと言います。
という事は、やはりベテルギウスに異常な何かが起こっているという事でしょうか?
いずれにせよ、今この天体に目が離せないのは確かなようです。
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