これまで見つかって来た太陽系外惑星の中で、主星(恒星)との距離感も生命が居住可能な領域にある「ハビタブル・ゾーン」の惑星はいくつかありましたが、実際にそこに生命が居るかどうかまでは判っていませんでした。
しかし、NASAのジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の観測によって「生命のサイン」が検出されたと話題に!しかもそれはかなり強烈な”サイン”だとか!?
天文ファンとしてはとても気になる話題ですが、いったいどんな生命のサインだったのでしょうか?そして、そこには本当に生命がいるのでしょうか?

Sponsored Link

124光年先で見つかった「生命のサイン」を出す惑星

科学雑誌「The Astrophysical Journal Letters」に2025年4月17日付けで掲載されニュース。
地球から見て「しし座」の方角へ、124光年離れた質量が太陽の約36%程で赤色矮星に分類される「K2-18」という恒星を公転する2つの惑星の1つに話題が集まっています。
その惑星の名は「K2-18b」といい、質量は地球の8.6倍、大きさは2.6倍にも達する地球よりはかなり重たく大きな星です。

「Image Credit:赤色矮星K2-18と惑星k2-18bの想像図(Wikipediaより)」
この惑星に注目が集まる理由は2つあり、1つは恒星と惑星の位置関係において、惑星に水が存在した場合、生命にとって不可欠な水が液体の状態を維持出来る温暖な領域である「ハビタブルゾーン」に位置する事に加え、水素に富んだ大気を持つ海洋を持つ星を意味する「ハイシアン惑星」の最有力候補である事と、2つめが特に注目の集まる要因になっており、その水が豊富にある可能性がある惑星の大気中に「生命の兆候(バイオシグネチャー)」と考えられている2種類の化学物質の存在が検出された事にあります。
Sponsored Link

惑星「K2-18b」で検出された生命の兆候とは何なのか?

人類最高峰の超高性能宇宙望遠鏡「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)」は中赤外線機器を使い、惑星「K2-18b」の詳細な観測を行って来ました。
その観測で、K2-18bの大気中に見つかったのが「ジメチルスルフィド(DMS)」と「ジメチルジスルフィド(DMDS)」と呼ばれる2つの化学物質であり、この化学物質は地球上にもある物質で、主に有機物の海洋藻類等から生産される植物プランクトンに含まれる微細な物質である事が知られています。
ただ必ずしも、この2つの化学物質は有機物から生産されるワケではなく、無機的なプロセスでも生成されている事も確認されているのですが、JWSTの観測によると検出された2つの化学物質は、地球上のレベルの数千倍にも達している事が判明。

「Image Credit:iStock」
すなわち、これだけ生成されているのであれば、何らかの有機物が関与している可能性が高く、これが惑星K2-18bでの「生命のサイン」であるのではないか?!と示唆されているのです。

惑星「K2-18b」とはどんな天体なのか?

惑星「K2-18b」は、主星~つまり私たちの太陽系でいうところの太陽に該当するのが「K2-18」と呼ばれる恒星を33日間で公転しており、主星との距離はわずか約2,100万キロ。ちなみに地球と太陽との距離が約1億5,000万キロですので、この距離が如何に近いかがわかります。
しかし、恒星「K2-18」は大きさが太陽の半分以下(約41%)、質量は太陽の約36%程で表面温度は約3,500℃とかなり小型で、M型主系列星と呼ばれる赤色矮星に分類される恒星のため、主星と惑星の距離が近くても水が液体の状態を維持出来るハビタブルゾーンに該当すると推測されているのです。

「Image Credit:k2-18星系とハビタブルゾーン(Wikipediaより)」
これまでのk2-18bの観測では、バイオシグネチャーの化学物質を検出する前に大気中に水蒸気やメタン、二酸化炭素も確認されており、これは太陽系外惑星を観測した中で初めての発見であった事もあり、詳しい調査次第では生命の兆候も見つかるかも知れないと期待されて来ました。
そしてJWSTの詳細な観測で明らかになったバイオシグネチャーの存在。これによりk2-18bに生命が居るかも知れないという可能性が高まったワケですが、ただ、このk2-18bは非常に大きな惑星であるため、地球のような岩石惑星であったとしても、かなり重力の大きいスーパーアース、もしくは、水素やヘリウム等の厚い大気を持つガスや液体を主体とした海洋惑星(サブネプチューン)である可能性が高いとされており、k2-18bは地球のように海や陸地で形成された惑星ではなく、星全体が液体やガスで覆われている可能性があるのではないか?とも考えられています。
Sponsored Link

惑星「K2-18b」はハイセアン惑星である可能性

k2-18bは「生命が存在しうる有力候補の惑星」として注目されているワケですが、天文学者たちはこの星は、地球とは異なるタイプの「ハイセアン惑星」である可能性があるとし、視点を変えながら生命存在の有無を確かめようとしています。
「ハイセアン惑星」とは、重力の大きい惑星の中には、高圧環境下において水素主体の大気の下に広大な海洋を持つ惑星が存在しているとされ、k2-18bはまさにそのハイセアン惑星に該当する天体ではないか?と考えられています。

「Image Credit:ハイセアン惑星のイメージ図(Wikipediaより)」
重力の大きい高圧環境下のハイセアン惑星では、そのほとんどが深い海で覆われており、海の中も高圧下ではあるものの、そこに適応した海洋生命が繁栄していても不思議ではない環境が広がっているかも知れないとしています。
また、仮に今後の詳細な調査でK2-18bがハイセアン惑星である事が確認された場合、”第二の地球”とは言い難い星という事になってしまいますが、それでも地球以外に生命存在の証拠が確認されたとなれば画期的な事ですし、今後の地球外生命探査にも大きな弾みとなることは間違いないでしょう。
Sponsored Link