カノープス」って星をご存じでしょうか?
「カノープス」は全天で観測出来る太陽を除いた星の中で2番目に明るく見える恒星で、1番目に明るい恒星の「シリウス」は有名なんですが、「カノープス」についてはあまり知られていないのではないでしょうか?

「カノープス」があまり知られていない最も大きな理由は、私たちの住む北半球ではなかなか見る事が難しいためで、それ故にカノープスを見つける事が出来ると寿命が延びるとまで言われる幸運の星なんです。

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カノープスってどんな星なの?

北半球・南半球を含めた全天で明るく輝く恒星は太陽を除いて21個あります。
この21個の恒星は1等星であり、ここで言う1等星とは”見かけの等級”または実視等級と呼び、実際に肉眼で見て最も明るく見える恒星を1等星から暗く見える順番に分類して行き、肉眼でやっと見える恒星の6等星までを定めています。
そんな全天で見える21個の恒星の中で、今回ご紹介するカノープスは2番目の明るさで21番目までのランキングは以下のようになります。
 
順位     名 称    星 座 見かけの等級 距離(光年)
1 シリウス おおいぬ座 -4.46 8.60
2 カノープス りゅうこつ座 -0.74 309.00
3 アークトゥルス うしつかい座 −0.05 36.70
4 リギル・ケンタウルス ケンタウルス座 0.01 4.39
5 ベガ こと座 0.03 25.03
6 カペラ ぎょしゃ座 0.08 42.78
7 リゲル オリオン座 0.13 862.43
8 プロキオン こいぬ座 0.37 11.46
9 ベテルギウス オリオン座 0.42 642.22
10 アケルナル エリダヌス座 0.46 139.38
11 ハダル ケンタウルス座 0.60 391.83
12 アクルックス みなみじゅうじ座 0.667 320.00
13 アルタイル わし座 0.76 16.72
14 アルデバラン おうし座 0.86 66.61
15 アンタレス さそり座 0.91 553.48
16 スピカ おとめ座 0.97 249.62
17 ポルックス ふたご座 1.14 33.77
18 フォーマルハウト みなみのうお座 1.16 25.11
19 デネブ はくちょう座 1.25 1,411.26
19 ミモザ みなみじゅうじ座 1.25 278.39
21 トリマン ケンタウルス座 1.33 4.39
では、この明るい1等星の「カノープス」とはどんな恒星なのでしょうか?

「カノープス」は「りゅうこつ座」のα星であり、つまり「りゅうこつ座」では最も明るい星です。

「Image Credit:りゅうこつ座(スタディスタイル 自然学習館より)」
地球からカノープスまでのおよそ310光年の距離があり、1等級ランキングをご覧いただくとわかるかと思いますが、上位に5以内に入る恒星の中でもカノープスが圧倒的に地球から遠い事がわかります。
これは、カノープスが大きく重たい(質量)恒星である事を意味し、推定では太陽質量の10倍以上で非常に若く(誕生から数百万年?)、輝きも青白い事から表面温度も高く星の内部では激しい核融合反応が起こっているモノと思われます。

「Image Credit:カノープスの拡大写真(NASAより)」

見る事が出来たら寿命が延びる?ラッキーな星・カノープス

全天で一番明るい恒星のシリウス(マイナス1.5等)は有名ですが、2番目に明るいカノープス(マイナス0.7等)の名前を知っている人はあまりいないかも知れません。
2番目に明るい星なのに、何故カノープスはメジャーではないのでしょうか?
その大きな理由になっていると思われるのが、私たちの住む北半球での観測は難しく、観測出来ても水平線や地平線ギリギリの高さにしか見る事が出来ないからです。
つまり、なかなか見る事が出来ないカノープスは、激レアな星と言えるかも知れません。
しかも、低い高度で現れるため短い時間しか見えない事もあり、実際は表面温度が高く青白い恒星なのですが、見える高度が低いため大気の影響で赤みがかって見える事から、昔から中国では寿老人の星南極老人星と呼ばれ、見る事が出来れば寿命が延びるとの伝説もあるほどです。
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また、日本では信仰の対象でもあったカノープス。
海に囲まれた日本では、古来から水葬が行われており、水平線の彼方に見えるカノープスは亡者たちの世界がある目印として、言い伝えでは布良星(めらぼし)」と呼ばれ、荒れた海で亡くなった漁師の魂が海の彼方から仲間の漁師を呼んでいるのだという信仰めいた事も言われて来たといいます。

カノープスの見つけ方と観測チャンスの時期は?

秋から冬の夜、水平線ぎりぎりの高さで見えるため、空気中の水蒸気や塵で光が歪められる事でぼんやりと輝く赤い星に見えるカノープス。
カノープスがあるりゅうこつ座は南天の空で見える星座であり、日本ではなかなか見る事が難しく特に北日本で観測する事はほぼ絶望的と言えます。

ですが、関東方面以南では見る事は可能で、特に2月の時期が絶好の観測チャンスです。
それに冬の時期は比較的空気も澄んでいますので、かなり寒いかも知れませんが南の空、水平線(地平線)を見上げれば見つける事が出来、その見つけ方も意外と簡単です。
例えば、見つけ方として東京で観測する場合を基準とすると、夜20時から22時頃にかけて観測すると、水平線から約2.0度のかなり低い高さで観測する事が出来ます。
また見つけやすい目印もあり、まずは冬の代表的な星座であるオリオン座を探してから冬の大三角の一角である一番明るく輝くシリウスを探します。
そして、シリウスからずっと目線を下げて行くと、水平線(地平線)ギリギリの高さで赤く輝く明るい星・それがカノープスです。

「Image Credit:国立天文台 天文情報センター」
カノープスの見つけ方はそれほど難しくはありませんが、観測する事が難しい稀星と言われるこの星を確実に観測するには、カノープスの高度が最も高くなった時間帯でなくてはならず、2月は20時~21時頃がねらい目です。
また、1月や3月も観測は可能ですが、見える高さがかなり低いため、あまりおすすめは出来ないかも知れません。
ちなみに、カノープスがいくら明るい1等星だと言っても、見える位置が位置だけに、月明かりや街明かりがある時は観測を避けましょう。
そしてなんといっても、建物や山などで視界を遮らない場所で観測する事。
それだけは観測の必須条件です。
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