全天で最も明るく見える星(恒星)と言えば当たり前ですが太陽ですが、でも太陽以外で明るく見える星ってご存知でしょうか?
更に、それらの星はどんな特徴を持っているのか?などについて今回は、北半球で見える星に限定してご紹介してみたいと思います。
この記事でわかること
星の明るさを表す等級とは?
星(天体)の明るさを表す単位として用いられるのが等級です。等級は明るい順からマイナス表記され、0等級を境に暗く見えれば見えるほど等級の数値が大きくなって行きます。
ちなみに全天で最も明るい星である太陽の等級は-26.74。当然ながら、この明るさだと肉眼で直視するのは危険で眩し過ぎます。
さらに月の場合は、満ち欠けや地球との距離によって若干明るさの強弱はありますが満月時の明るさで-12~-13等級程です。
「Image Credit:Wikipedia」
この2つの天体は極端に明るく見えるためあまり等級表現はされませんが、その他の天体(恒星)については最も明るい星で1等級前後で、一般的に肉眼で見えると言われる6等級までの明るさを持つ星は約3,000個程あると言われ、そんな中で1等級にカテゴリーされている星はわずか21個しかありません。
全天で見える1等級の星一覧
全天の肉眼で見える星の数は3,000個と言われている中、とても明るく見える1等級の星は、北半球(北天)・南半球(南天)含めてもたったの21個ですが、少ない数だからこそこの21個の星の名前と位置を覚えておけば、星空を眺める際にとても便利で役立つのではないでしょうか?というワケで、全天で見える1等星(等級)全てを、明るい順にリスト化して挙げてみました。
順位 | 等級(見かけ) | 恒星名 | 星座 | 位置 | 主な観測季節 | 地球からの距離 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | -1.5 | シリウス | おおいぬ座 | 北天 | 冬 | 8.7光年 |
2 | -0.7 | カノープス | りゅうこつ座 | 南天 | 200光年 | |
3 | -0.1 | リギル・ケンタウルス | ケンタウルス座 | 南天 | 4.3光年 | |
4 | -0.0 | アークトゥルス | うしかい座 | 北天 | 春 | 36光年 |
5 | 0.0 | ベガ | こと座 | 北天 | 夏 | 26光年 |
6 | 0.1 | カペラ | ぎょしゃ座 | 北天 | 冬 | 50光年 |
7 | 0.1 | リゲル | オリオン座 | 北天 | 冬 | 860光年 |
8 | 0.3 | プロキオン | こいぬ座 | 北天 | 冬 | 11光年 |
9 | 0.4 | ベテルギウス | オリオン座 | 北天 | 冬 | 640光年 |
10 | 0.5 | アケルナル | エリダヌス座 | 南天 | 100光年 | |
11 | 0.6 | ハダル | ケンタウルス座 | 南天 | 400光年 | |
12 | 0.8 | アルタイル | わし座 | 北天 | 夏 | 17光年 |
13 | 0.8 | アクルックス | みなみじゅうじ座 | 南天 | 400光年 | |
14 | 1.0 | アルデバラン | おうし座 | 北天 | 冬 | 70光年 |
15 | 1.0 | スピカ | おとめ座 | 北天 | 春 | 250光年 |
16 | 1.1 | アンタレス | さそり座 | 北天 | 夏 | 600光年 |
17 | 1.2 | ポルックス | ふたご座 | 北天 | 冬 | 35光年 |
18 | 1.2 | フォーマルハウト | みなみのうお座 | 北天 | 秋 | 22光年 |
19 | 1.3 | デネブ | はくちょう座 | 北天 | 夏 | 1,500光年 |
20 | 1.3 | ミモザ | みなみじゅうじ座 | 南天 | 500光年 | |
21 | 1.4 | レグルス | しし座 | 北天 | 春 | 70光年 |
さらに以下では、北半球(北天)で見る事が出来る1等星ベスト10を順にご紹介して行きます。
北半球で見る事が出来る1等星ベスト10
私たちの住んでいる北半球の日本で眺める夜空では、どの季節にどの位置にどんな1等星(等級)の星があるのでしょうか?そしてその星ってどんな星なのか?について、少し詳しくご紹介してみたいと思います。
第1位:冬の夜空にひと際明るく輝くシリウス
おおいぬ座のシリウスは、冬を代表する冬の大三角を形成する星のひとつで最も明るく輝いていますのでスグに見つけられるかと思います。「Image Credit:Yahoo!JAPAN きっず図鑑より」
冬の大三角には、8位のプロキオンと9位のベテルギウスも含まれていますが、この2つの恒星については後ほどご紹介するとして、シリウスを探す事が出来れば他の2つの星も簡単に見つかるほど明るく輝く目立つ星です。
シリウスが最も明るい恒星である理由のひとつは、この星が地球にとても近い事(8.7光年)にあり、さらに明るい理由であるもうひとつが表面温度が非常に高い事で、太陽の表面温度が約6,000度なのに対しシリウスの温度は1万度近くもあります。
地球に近くて温度が高い。そして大きさも明るく見える要因のひとつで大きさは太陽の約1.68倍で質量は約2倍。
また特質すべき事は、シリウスは一つの星ではなくシリウスAとシリウスBの2つの星から成る連星である事も覚えておくと良いでしょう。
「Image Credit:Wikipedia」
私たちから肉眼で大きく明るく見えているのはシリウスAの方で、シリウスBは既に寿命を終えた白色矮星です。
第2位:南天の星・カノープスを見つけられたらイイ事がある?
南天の星として分類されているりゅうこつ座のカノープスは、南半球では非常に高い位置で見る事は出来るのですが、北半球である日本では関東から南側で11月中旬~3月中旬くらいの間に南の空の非常に低い位置で見る事は出来、特に時期的には2月頃が見頃で夜の8時頃に比較的良くみる事が出来ます。そんなカノープスの探し方は比較的簡単で、先ほどご紹介した冬の大三角が目印で、シリウスからベテルギウス、プロキオンを結んだラインからシリウスに向けて目線を下げて行くと、水平線、もしくは地平線近くに見えて来ます。
「Image Credit:Wikipedia」
カノープスの探し方は難しくないですが、その位置関係から大気の影響もあり見えにくく確認が難しいため、中国ではカノープスの事を「南極老人星(なんきょくろうじんせい)」と呼び、この星を見ると寿命が延びるという言い伝えがあるそうです。
第3位:春の大三角で最も明るい星・アークトゥルス
うしかい座のアークトゥルスは春、北の空に見える”春の大三角”の一角(頂点)を成しています。「Image Credit:国立天文台 天文情報センターより」
全天で3番目に明るいアークトゥルスは、春の夜空では最も明るく見えるため比較的見つけやすいと思います。
なお、アークトゥルスは恒星としては晩年を迎えた赤色巨星でもあり、表面温度も太陽より低く約4,500度程で、晩年を迎え大きく膨張し巨星となったアークトゥルスは、太陽の直径の26倍もあり地球からの距離が36光年と近い事もあって明るく見えるそうです。
第4位:七夕のヒロイン~織り姫星のベガ
夏の夜空と言えば七夕の織り姫と彦星を思い浮かべる人もいるかも知れません。天の川を挟んで輝く2つの星のひとつ織り姫星が第4位・こと座のベガです。
そしてベガのもうひとつの顔が夏の大三角の一角を形成する星。
「Image Credit:Yahoo!JAPAN きっず図鑑より」
ベガの質量は太陽の約2倍で、誕生してからまだ数億年とかなり若い星である事もわかっており、最近の観測でベガには惑星系も形成されつつある事が分かって来ています。
第5位:冬のダイヤモンドを形成する星・カペラ
冬の大三角の外枠を六角形で大きく囲むのが”冬のダイヤモンド”で、その一角を形成しているのがぎょしゃ座のカペラです。「Image Credit:Yahoo!きっず図鑑」
肉眼では1つに見える恒星・カペラは、実は2つの恒星から成る連星が2組ある4重連星で、うち2つの恒星は晩年に近い主系列星の段階を終えた巨星の進化過程にある事がわかっています。
第6位:冬のダイヤモンド&オリオン座の一等星・リゲル
誰もが知ってる?冬の代表的な星座・オリオン座の左踵の位置に該当する一等星・リゲル。「Image Credit:Yahoo!JAPAN きっず図鑑より」
地球から860光年も離れているのに明るく見えるリゲルは、太陽の12万から27万9,000倍の光度を持つ青色超巨星です。
また、リゲルも連星系を成しており、質量が非常に重い青色超巨星のリゲルAは、数千万年後には寿命が尽き超新星爆発を起こすと考えられています。
第7位:冬の大三角の一角・プロキオン
冬の大三角の一角を形成するこいぬ座のプロキオンは、目立つシリウスに隠れて影が薄くも感じますが、それでも0.3等級もある明るい星です。プロキオンが明るい理由は、この星もまた地球に近い約11光年の距離にあり太陽の直径の約2倍で、表面温度はシリウスより低い6,500度ほどのため少し地味感があるのは仕方のない事なのかも知れません。
第8位:最も注目されている一等星・ベテルギウス
星の明るさランキングでは8位ですが、今、最も注目されているのがオリオン座の一等星で冬の大三角の一角・ベテルギウス。
何故この星が注目されているのか?については、このサイトでも何度も取り上げているベテルギウスは爆発寸前の星でだという事にあります。
地球から約530光年離れた位置にあるベテルギウスは、太陽の20倍ほどの質量を持つ巨星で、代謝(熱核融合反応)も速くもう既に寿命を終えようとしている考えられ、寿命を迎えたベテルギウスは核融合反応は不安定な状態になり激しく膨張し、その膨張を続けるベテルギウスの現在の大きさは直径14億キロ程。これを太陽に置き換えると木星の軌道に達する程に超巨大化しています。
「Image Credit:mail Onlineより(※ 左下0.015″は太陽と地球の距離である1天文単位を表します。」
このベテルギウスの現状に多くの専門家たちは「いつ超新星爆発を起こしてもおかしくない!」と警鐘を鳴らしており、もしこの星が爆発した場合には、少なからず地球でも爆発の大天文ショーが見られると推測しています。
ベテルギウスが超新星爆発を起こした場合に地球に影響があるかどうか?は現時点では不明ですが、おそらくは、ほとんど影響は無いモノと考えられています。
第9位:潰れたカタチの七夕織り姫の恋人~彦星のアルタイル
夏の大三角の一角を形成するわし座のアルタイルは、別名が彦星と呼ばれ、織り姫・ベガと並び七夕の主役になっている星です。アルタイルは太陽の約1.8倍の質量と約11倍の明るさを持つA型主系列星で表面温度は7,700度。この恒星が特質している事は、これほどの大きさなのに自転速度が異常に速く赤道付近の表面速度が約286km/sに達する程高速で、この自転速度を太陽と比べると、太陽が25日程度なのに対しアルタイルは9時間ほどで自転しているそうです。
そのためアルタイルは太陽のような球状はしておらず、異常な自転速度の速さで、赤道付近の直径は極直径よりも20%ほど長く潰れたような形状になっているとの事です。
「Image Credit:アルタイルの形状(Wikipediaより」
第10位:すばるを探すときの目印。おうし座・アルデバラン
おうし座のアルデバランも冬のダイヤモンドの一角を成す星。アルデバランは、明るさはシリウスに及ばないモノの、冬の星空を眺めているとシリウスの次に見つけやすい星とも言われています。
それは前記した冬のダイヤモンドの星図をご覧いただければわかると思いますが、オリオン座の真ん中に並ぶ3つの星を東から西に結んで延長していくと、最初に突き当たる明るい星がアルデバランであるのと同時に、そのスグ横には昴(すばる)で有名なプレアデス星団を見つける事が出来ます。
「Image Credit:プレアデス星団(Wikipediaより)」
アルデバランもまた寿命が尽きかけ、温度変化によって橙色から赤色巨星に移行しつつある段階で、現在のアルデバランは太陽半径の44.2倍まで膨張していると言います。
なお余談ですが、1972年にNASAが打ち上げた惑星探査機パイオニア10号は現在太陽圏を抜けようとしており、その向かう先がアルデバラン方向で、アルデバランまで約65光年ありますが、パイオニア10号がアルデバランに到達するのは約200万年後だそうです。
「Image Credit:パイオニア10号(Wikipediaより)」
補足:恒星以外で明るく見える天体
太陽以外の恒星で明るく見える星ベスト10をご紹介しましたが、太陽系の惑星はどれくらいの明るさで見えるのでしょうか?これを知っているのも星空観測の中で重要かと思いますので、参考までにご紹介をしたいと思います。
ただ、惑星の明るさをご紹介していると、この記事自体が長くなってしまいますので別記事にてご紹介します。
● 参考記事:【太陽系の天体で明るく見える星ランキング】
もし、よろしければコチラ↑↑をご参照ください。