一般的に良く聞く天文イベントと言えば、日食や月食、彗星接近等、太陽系内で起こる”身近な天文現象”ですが、太陽系の外で起こってしかも肉眼で見る事が出来る天文イベントなんてそう滅多にありません。
そんな滅多にない天文イベントがもう間もなく起ころうとしています。
この情報については以前もお伝えしましたが、「もう間もなく見える」等とネットを中心ににわかに騒がしくなって来ましたので、今一度情報を整理してお伝えしようと思います。

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肉眼で見える太陽系外の天文イベントとは?

肉眼で見える(正確には肉眼で見える可能性が高い)、もう間もなく太陽系外で起こるであろう天文イベントとは、地球から「かんむり座」方向約3,000光年の距離にある「かんむり座T星」の事です。

かんむり座T星は、星(恒星)の寿命をほとんど終えた巨大な赤色巨星と、寿命を終え恒星の進化の終末期の形態となった白色矮星から成る近接連星です。

「Image Credit:赤色巨星と白色矮星の連星系想像(NASA/CXC/Texas Tech/T. Maccarone Illustration: NASA/CXC/M. Weissより)」
一般の人が「かんむり座T星」と聞いても耳馴染みがなく、ほとんど知られていないかも知れません。それもそのハズ、普段のこの星は10等級程と、肉眼では見る事が出来ない暗い星だからです。
そんな肉眼では見えない暗い星が、ある日突然明るくなり、おそらくですが肉眼でハッキリ見えるほど光輝く姿をみせてくれそうなのです。

かんむり座T星が突然明るくなる原因は新星爆発

超新星爆発という言葉を耳にした人は多いかと思いますが、新星爆発はあまり来た事がないかと思います。
超新星爆発は、大質量恒星が寿命を終え進化の終末期に重力崩壊で大爆発を起こす現象ですが、新星爆発とは「かんむり座T星」のような恒星の終末期同士の近接連星によって起こる現象で、赤色巨星の表面ガスが白色矮星の強い重力に吸い込まれる事で、白色矮星の周りを降着円盤と呼ばれるガスが覆い続けると、溜まり続けたガスに強烈な圧力がかかり、その圧力が臨界点を超えてしまうと核融合が発生し大爆発を起こしてしまいます。

「Image Credit:NASA/Conceptual Image Lab/Goddard Space Flight Center」
これが新星爆発と呼ばれる現象で、一時的ではありますが、爆発する事によって普段の明るさより遥かに輝きを増して見る事が出来るのです。

80年毎に爆発を繰り返す「かんむり座T星」

かんむり座T星は、およそ80年毎に臨界点を超え新星爆発を繰り返す再帰新星と呼ばれる星です。
かんむりT座は18世紀頃から観測が続けられ、その明るさの周期も記録が残されており、1787年を皮切りに1866年、1946年と約80年周期で増光、すなわち新星爆発が起きている事が観測されています。

「Image Credit:過去160年間の「かんむり座T星」の増光グラフ(YouTUBEより)」
この観測記録から推測すると、80年周期で新星爆発が起こっているとするならば、おそらくは2024年~2025、2026年中には、かんむり座T星の新星爆発は肉眼で観測できる可能性があると期待され、天文学者はもとより、多くの天文ファンも固唾を呑んでこの一生に一度のビッグ天体観測イベントを心待ちにしています。
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かんむり座T星はいつどの方角にどのように見える?

さて、新星爆発が間近と言われる「かんむり座T星」ですが、気になるのは”いつ”、”どの方角”、”どのように”見えるのか?が気になるところです。
まず”いつ”については、前項でも解説したように2024年~2026年頃と漠然とした情報になりますが、一部では2024年9月頃には見る事が出来るとの情報がありますが、これについてはハッキリとは言えないのが現状です。

かんむり座T星の見える方角

かんむり座は春から夏にかけて見える星座で、6月~9月にかけては西の空天頂付近の位置にあり比較的見やすいかと思います。
【夏(8月)の星空と星座】

「Image Credit:浜松科学館みらい~ら」
「こと座」の1等星ベガと「うしかい座」の1等星アルクトゥールスの間を目印にすると見つけやすいかと思いますが、普段のかんむり座T星は肉眼では見えませんでので、かんむり座を見つける事が出来たら、大体の位置を覚えておくと良いでしょう。

「Image Credit:かんむり座星の位置(大日本図書より)」

新星爆発を起こした「かんむり座T星」の見え方

前回(1946年)の新星爆発の観測記録によると、10等星ほどの明るさだった「かんむり座T星」は2等星ほどまで明るくなったと言います。
新星爆発直後は2等星まで明るくなり、20日ほどで元の10等星まで減光したものの、2カ月ほどでまた2等星まで輝きを取り戻し、その後は3カ月ほど2等星の明るさが続いたと言います。

「Image Credit:ウェザーニュース」
なお、2等星の明るさがどれくらいか?と言うと、目安となるのが北極星(視等級2等級)ではないでしょうか?!
ただ、もし新星爆発が起こったとしても、前回と同じとは限りませんが、それでも見えなかった星が突然出現するという事は一大天文イベントと言えるでしょう。
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新星爆発は凄まじい天文現象

かんむり座T星の新星爆発は、地球から見ると2等級程の明るさですので一大天文イベントと言っても素人に視点から言うとたいした事はないと思うかも知れません。
しかし、10等級から2等級まで明るくあんるという事は、実際は1,500倍以上の増光になります。つまり、新星爆発というのはそれほど凄まじい天文現象であり、しかも肉眼で見えるという現象は滅多になく、私たちが生きているうちに見る事ができるという事はとても幸運な事ではないでしょうか。
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