太陽系から最も近い恒星系アルファ・ケンタウリ。この恒星系には3つの恒星があり、その中のひとつプロキシマ・ケンタウリに地球型惑星「プロキシマ・ケンタウリb」が発見され大きな話題になりました。
同時にプロキシマ・ケンタウリbはハビタブルゾーン圏内に存在するのではないか?と推測され、もしかしたらこの惑星には生命が居るかも知れないとの期待が寄せられ注目を浴びる事にもなります。

しかし、発見されて以降、研究が進むに連れてその期待が少しずつ薄れて行くようなのです。

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プロキシマ・ケンタウリbが発見された経緯

地球から約4.3光年離れた位置に恒星が3つ(三連星)あるアルファ・ケンタウリ星系があります。この星系は太陽系に最も近いにも関わらず、あまりその実態がわかっていませんでした。

「Image Credit:三連星のアルファ・ケンタウリ星系(Wikipediaより)」
しかし、近年の観測研究で三連星の中で最も質量が小さい星「プロキシマ・ケンタウリ」を公転する、地球型の惑星が見つかり大きな話題になりました。
しかもその惑星「プロキシマ・ケンタウリb」の軌道計算を行った結果、主星(プロキシマ・ケンタウリ)のハビタブルゾーン圏内で公転している事がわかったのです。

「Image Credit:惑星プロキシマbの想像図(Wikipediaより)」
ハビタブルゾーンとは、主星(太陽)から近過ぎも遠過ぎもしない距離(公転軌道)の事で、この公転軌道に惑星が存在した場合、水が蒸発も凍結もせずに液体の状態で維持出来、生物が生存出来る可能性が高い惑星が生まれるという、正に私たちの地球がそれであり、太陽系でのハビタブルゾーン圏内にある事になります。

「Image Credit:高校資格.com」
つまり、発見された地球型惑星「プロキシマ・ケンタウリb」も主星(プロキシマ・ケンタウリ)のハビタブルゾーン圏内を公転していたのですが、研究を進めるに連れていくつかの疑問が生じて来る事になります。

疑問その1:見えない惑星プロキシマ・ケンタウリb

実は惑星「プロキシマ・ケンタウリb」の発見にあたり、直接この惑星を視認して観測したワケではなく、惑星の重力の影響で主星がわずかに揺れ動く様子を捉えることで惑星を発見するというドップラー分光法によるモノでした。
◆ドップラー分光法の解説動画

「Copyrightc:YouTube (European Southern Observatory (ESO) All rights reserved.」
この観測方法は主星の揺らぎから惑星の位置、公転周期、質量を求める事が出来るのですが、大気の有無等、惑星の詳細情報までは観測する事が出来ないため、現段階では主星の活動状態からプロキシマ・ケンタウリbという惑星の情報を調べるしかない状況にあり、すなわちプロキシマ・ケンタウリbという地球型惑星は存在する事はわかっているが”見えていない”という事になります。
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何故プロキシマ・ケンタウリbは見えないのか?

惑星「プロキシマ・ケンタウリb」はドップラー分光法での観測によって発見されましたが、近年の観測でプロキシマ・ケンタウリbより遥かに遠い位置にある系外惑星も見つかっており、その中には大気組成まで判明している、いわゆる”見えている”惑星もいくつか存在しています。
なのに何故、地球から最も近い系外惑星であるハズのプロキシマ・ケンタウリbは見えないのでしょうか?
その理由は、地球から観測した時にプロキシマ・ケンタウリbが主星の前を横切らないからです。

近年、太陽系外惑星の探査で主に用いられる手法は、惑星が主星の前を横切る時に起きる減光を観測するトランジット分光法と呼ばれる観測方法です。
◆トランジット分光法の解説動画

「Copyrightc:YouTube (European Southern Observatory (ESO) All rights reserved.」
この観測方法であれば、減光の際に起きる惑星が恒星の背景に隠れた「食」により、惑星からの熱放射の変化で惑星の大気や温度の情報を得る事が出来るため、ドップラー分光法の観測より詳細な情報を調べる事が可能になるからであり、残念ながら地球から見たプロキシマ・ケンタウリbは主星の前を横切らない公転軌道のため、トランジット分光法では観測出来ないのです。

疑問その2:赤色矮星の悪影響が懸念

プロキシマ・ケンタウリbの主星であるプロキシマ・ケンタウリは、私たちの太陽に比べるとかなり小型で大きさは太陽の7分の1程で、質量は8分の1ほどしかない赤色矮星と呼ばれる低質量で低温の恒星です。

「Image Creditアルファ・ケンタウリ星系の三連星(Wikipediaより)」
赤色矮星は小型の恒星ですが、その多くは活動が活発な事も知られており、プロキシマ・ケンタウリもまた最近の観測研究で活動が活発な恒星だという事がわかって来ました。
つまり、公転周期が約11.2日という、主星との距離が非常に近い軌道を持つプロキシマ・ケンタウリbは、活発に活動する主星からの強烈な恒星風(太陽風)に晒されている可能性が示唆されているのです。

「Image Credit:S.Dagnello,NRAO/AUI/NSF」
ちなみに推測によるとプロキシマ・ケンタウリb、地球が太陽から受ける1000倍もの太陽風を受けている可能性があるとの事です。

疑問その3:プロキシマ・ケンタウリbの公転軌道はハビタブルゾーンではないかも知れない

前記もしましたが、惑星プロキシマ・ケンタウリbは、詳細な情報を求める事が困難なドップラー分光法によって発見されたため、惑星に大気が存在しないかも知れませんし水があるとも限りません。

また、仮に大気や水が存在し得る環境にあったとしても、主星からの激しい恒星風で大気は剥ぎ取られてしまっているかも知れない事も考えられます。
もしこのような状況に惑星プロキシマ・ケンタウリbがあったとした場合、主星と惑星の距離がハビタブルゾーン圏内であったとしても、実際はハビタブルゾーンではないと言えるかも知れません。

「Image Credit:プロキシマ・ケンタウリの磁気圏。左から順にZDIモデル・代替モデル・両方の組み合わせ(Garraffo, et.al.)」

赤色矮星の地球型惑星は再考する必要性があるかも?

観測技術の向上によって既に5,000個を超える太陽系外惑星が発見(2023年初頭時点)されており、その多くは小型の恒星である赤色矮星に見つかっています。
しかし、この恒星と惑星の関係は必ずしも私たちの太陽と地球のような関係ではないかも知れず、いくらそこにある惑星がハビタブルゾーン圏内で地球型の大きさであったとしても、そこに生命が居ると期待する事や、将来において人類が居住可能か?と考える事も早計かも知れません。
とは言っても、人類が太陽系外へ進出する事も現段階においては遥か遠い未来の話であり、実現不可能な夢物語にしか過ぎないともいえるのかも?
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