太陽系天体の中でリング(環)を持つ土星は有名ですが、土星以外にも木星・天王星・海王星の惑星も、土星程ではないですがリング(環)を持っている事は知られています。
しかし、以前も紹介しましたが、私たちの太陽系には惑星以外の天体にも、環を持つ天体がある事が最近の観測研究でわかって来ました。

そして今回また惑星以外に環を持つ天体が発見され、しかもその天体には、これまでの定説を覆すような環が存在するとの事。それっていったいどんな天体なのでしょうか。

Sponsored Link

太陽系7個目のリング(環)を持つ天体を発見

2023年2月。科学誌ネイチャーに掲載された太陽系で7個目のリング(環)を持つ天体発見のニュース。
この天体はクワオアー(Quaoar)と呼ばれる直径約1,100キロほどの準惑星に分類される天体で、既に2002年には発見されていましたが、その全貌はあまりわかっていませんでした。

「Image Credit:ハッブル宇宙望遠鏡が撮影したクワオアー(Wikipediaより)」
クワオワーは、太陽系8番目の惑星である海王星よりも遥か遠い(太陽からの距離約60億キロ)エッジワース・カイパーベルトに属する天体で、真円に近い軌道で公転しており、その公転周期は約290年、大気はほとんど存在せず、太陽系外縁天体で良く見られる氷に覆われた星ではなく、表面は岩石が主体の高密度な星ではないか?と考えられています。
また、クワオワーは「ウェイウォット」という小さな衛星も従えており、上画像でも左下に小さくウェイウォットが写っているのがわかるかと思います。

これまで太陽系には、木星・土星・天王星・海王星の4つの惑星以外に、準惑星ハウメア・小惑星カリクローに環がある事が判明していましたが、この程、クワオアーにも環が存在する事がわかったのですが、この環は、これまで定説とされて来た環が形成される仕組みとは異なっている事がわかり、惑星科学者たちを困惑させていると言います。

離れた距離にあるクワオワーの環

これまで定説として考えられて来たリング(環)が形成される条件は、物質が凝集して衛星を形成するのを防ぐ潮汐力が必要なため、環は中心天体の近くにしか出来ないと考えられていましたが、クワオワーの場合、それまで環が形成可能と考えられていた距離の2倍もの位置に環が存在すると言います。

「Image Credit:クワオアーと環の想像図(PARIS OBSERVATORYより)」
つまり、天体に環が形成されるにはロッシュ限界と呼ばれる、衛星等の天体が中心天体に近ずき過ぎる限界距離によって、潮汐力で破壊され破片が環になると考えらていたのですが、クワオワーの場合、そのロッシュ限界の2倍離れた位置に環が形成されていると言います。

「Image Credit:環が形成されるして(白線がロッシュ限界線)(Wikipediaより)」
クワオアーの環が、何故このような位置に形成されたのか?については謎ですが、この新発見によって新たな知見を得るため、謎解明に向けて研究が進んでいくものと考えられます。
Sponsored Link

リング(環)を持つ太陽系7つの天体

準惑星(候補)に環が発見された事で、これで太陽系に7つの環を持つ天体が存在する事になります。
そこでここでは、改めて環を持つ天体をご紹介したいと思います。

誰もが知る美しい環を持つ惑星・土星

まずは、リング(環)を持つ天体と言えば誰もが知っているのが土星です。

「Image Credit:土星食に撮影された土星の環の全景(Wikipediaより)」
最新の研究で、土星の環が形成されたのは比較的新しく数億年前に形成されたと考えられており、その環もあと1億年程で失わてしまうのではないか?と考えられています。

「Copyright ©:NASA Goddard All rights reserved.」

太陽系最大の惑星・木星が持つ薄い環

太陽系最大の惑星・木星。その迫力のある巨大さ故に霞んでしまいますが、木星にも希薄ながら環が存在しています。

「Image Credit:木星の環の概観(Wikipediaより)」
希薄な木星の環は、主にに塵の成分形成されており4つの主要な環から構成されています。その概観は最も内側の「ハロ環(Halo)」、比較的明るいのが「主環(Main Ring)」、幅広で厚い外側の2つの「ゴサマー環(Gossamer Rings)であり、また、それぞれの環の境界には4つの衛星がある事が確認されています。

縦にリング(環)が周っている天王星

天王星の環は独特で縦に環が形成されているように見えます。ですがこれは見た目であって、天王星自体の自転軸が横倒しになっているためであって、まるで太陽の周りを転がりながら公転しているように見えるのが特徴的です。

「Image Credit:NASA」

とても薄いけど確実に環がある海王星

海王星にリング(環)?と知らない人も多いですが、非常に希薄ながらも海王星にも環が存在しています。

「Image Credit:NASA」
上画像↑↑は、ジェームス・ウェッブ宇宙望遠鏡が捉えた海王星と環。周りに4つの衛星も写っている幻想的な一枚です。

地球から最も遠い環を持つ天体「ハウメア」

太陽からの平均距離約65億キロの位置にある準惑星・ハイメアは、現在、確認されている環を持つ天体としては最も遠い距離にあります。

「Image Credit:準惑星ハウメアの想像図(IAA-CSIC/UHUより)」
球形ではなく卵型の形状をしているハウメアは、準惑星に分類されているだけにかなり大きく長軸は約2,300キロもあるとされており、おそらく塵で形成されている環は、幅が70キロ程で中心天体(ハウメア)から1,000キロを取り巻いている事が判明しています。

小さな天体(小惑星)なのに環があるカリクロー

カリクローは直径が300キロ程の小惑星に分類される天体であるにも関わらず、環を持つ小惑星として話題になり、その環も二重になっている事も判明しています。

「Copyright ©:European Southern Observatory (ESO) All rights reserved.」
重力の小さい小惑星のカリクローが環を持つには、他の天体の重力も必要ではないか?と考えられており、その他の天体はおそらくカリクローに衛星があるのではないか?とも考えられています。

定説に該当しない環を持つクワオワー

そして最後の7つ目が、今回ご紹介したクワオワーです。

「Image Credit:クワオアーと環、衛星・ウェイウォットの想像図(ATG under contract for ESAより)」
これまでの定説を覆す環を持つクワオワーが発見された事で、宇宙の謎はまだまだ奥が深い事もわかりました。そして今後も環を持つ天体が見つかる可能性があるかも知れません。
Sponsored Link