広過ぎる宇宙には、私たちの知らない事がまだまだ多過ぎる!そんな事を改めて感じさせてくれるような”宇宙の構造物”が発見されて話題になっています。
それは人工物と見間違うような丸いカタチをしており、その姿を見た天文学者たちは「完璧な球体(Perfect Sphere)」と名付けるほど。
いったい、この球体の正体はなんなのでしょうか?実はコレ!特殊な環境で偶然に出来たあるモノの残骸だったんです。
超科学文明の異星人が造った巨大な構造物と見間違うほど完璧な球体
まずはこの画像をご覧ください。
「Image Credit:Filipović et al.,arXiv,2025」
宇宙空間に浮かび上がる泡状の構造物は、まるで人工的に造られたかのような完璧と言える球体をしています。
これは、オーストラリアのウェスタン・シドニー大学(WSU)研究チームが、2025年5月7日付でプレプリントサーバ『arXiv』にて公開された画像です。
この画像を見てある人はこう思ったかも知れません。「とうとうダイソン球が発見された!?」かと。
ダイソン球とは、地球の科学文明を遥かに凌駕する超科学文明を持つ異星人が、恒星を丸ごと卵の殻のように囲う事で、恒星から発生されるすべてのエネルギーを吸収してしまうという、エネルギー利用の究極の姿と言えるモノで、宇宙物理学者のフリーマン・ダイソンによって1960年代に考案された仮説上の人工構造物の事です。
宇宙空間に浮かび上がる謎の球体の正体はダイソン球ではなく自然に出来た球体だった
一見、人工物のように見えるの宇宙に浮かぶシャボン玉のような球体。不自然とも見える完璧な球体形状に、これを高度な文明を持つ異星人が造った「ダイソン球」と思ってしまうのも無理のない事かも知れませんが、その正体は超新星爆発が造り出した”残骸”なのです。この超新星爆発残骸を発見した天文チーム(オーストラリア・ウェスタン・シドニー大学(WSU))は、古代ギリシャ語で”完璧”の意味を持つ言葉にちなんで「テレイオス(Teleios)」とこの球形の天体を名付けています。
テレイオスは、私たちの太陽系がある銀河内(天の川銀河)にあり、地球からの距離はまだ特定出来ておらず、約7,175光年か約25,114光年の2つではないかと候補が分かれているため、その大きさも異なってしまい、地球からの距離が7,175光年なら直径は約46光年、25,114光年ならば直径は157光年の大きさになるそうです。
またテレイオスの年齢も距離によって異なり、地球に近いとすれば、推定年齢は誕生してから1,000年未満。地球から遠ければ1万年以上前に爆発を起こした残骸ではないかと推測されています。
テレイオスは何故これほどまで完璧な球体を形成したのか?
何故、人工物にも見える上下左右対称な球体(完璧な球体)テレイオスが形成されたのでしょうか?テレイオスは、可視光やX線等ではその姿を捉える事が出来ず、電波の波長で浮かび上がって来た事で、研究チムがASKAP電波望遠鏡からのデータを処理中に偶然発見できたモノでした。

「Image Credit:直径12mの36個の衛星アンテナで構成されるASKAP電波望遠鏡の1つ(CSIROより)」
そしてこのテレイオスの正体はIa型超新星の残骸である可能性が高いのではと推測され、Ia型は超新星の中でも最も明るい部類で、白色矮星と伴星から成る連星系において、強力な重力を持つ白色矮星が伴星からのガス等の物質を吸い取り続けた結果、吸い取る質量の限界を超える事で重力崩壊を起こす現象の事で、一般的には白色矮星がチャンドラセカール限界質量(太陽質量の約1.44倍)を超えた時に起こる現象だと考えられています。

「Image Credit:Ia型超新星(宇宙科学研究所キッズサイトより)」
Ia型を含め超新星爆発が起こった場合、爆発により四方八方に放出されたガス等の物質が時間とともに広がっていき巨大なガス雲(星雲)を形成していきますが、その際、周囲には星間ガス等の様々な物質があるため、それらが広がり(膨張)を妨害する事で、結果としてその形状は非対称で歪なモノになってしまうのが通常です。

「Image Credit:超新星爆発の残骸「かに星雲」(Wikipediaより)」
しかし、テレイオスの場合、重力崩壊を起こした時の状態が完全に対称であり、なおかつ周囲に何も膨張の邪魔をする物質がなかった時、均等に残骸が広がっていく。つまりテレイオスは偶然にも球体になれる環境下で広がっていったモノではないか?と考えられるのです。
天文観測史上、初めてみつかった完全球体の超新星爆発の残骸「テレイオス」。これも観測機器の急速な発展の結果のひとつであり、今後もこれまで発見されていなかった超新星爆発の残骸が見つかる可能性も高いとされており、これらが発見され続けていけば、恒星の進化の謎に迫る事が出来るとともに、銀河の歴史に対する理解も深まっていく事も大いに期待されています。