金やプラチナ等、高価な貴金属は世代や性別問わず人気があり、装飾品として利用する一方で財テク目的で所有している人も少なくはないでしょう。

でも何故、金やプラチナ等は高価な価値があるのでしょうか?
もちろんその美しさもありますが、これらの貴金属は地球上でも埋蔵量が非常に数が少なく希少価値もあり、人工的に生成する事など出来ません。
ではいったい、これらの貴金属はいつどうやって誕生し、地球に埋蔵されているのでしょうか?
この事について日本の研究チームが謎解明に挑み、そしてその研究成果を発表しています。

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金やプラチナ等の埋蔵量はどれくらい?

人類が金やプラチナ等の貴金属を資源として採掘し、利用し出した歴史は古く約6,000年はあると推定されています。
ですが、この6,000年間で採掘された総量は非常に少なく金が約17万トン程で、プラチナに至っては金より遥かに少なく約5,000トン程だと言われています。

「Image Credit:iStock」
さらにこれらの貴金属は地球全体でも埋蔵量が少なく、WGC(世界的な金地金販売促進機関)の調査によると地球上に残る金の埋蔵量は約7万トンで、プラチナは残り1万トンも埋蔵されていないだろうと推測されています。
そんな金やプラチナの利用価値は装飾品だけにとどまらず、財テクの保管目的や工業用にも広く利用されるなど希少な貴金属であるにも関わらず需要は高く、年々価値が高まり争奪戦も繰り広げられている程です。

宇宙の創成の過程でつくられた鉄より重い貴金属たち

そもそもこの天文系のサイトで金やプラチナ等の貴金属を取り上げる理由には、宇宙が大きく関わっているからに他ならないからです。
つまり、人間の手(人工的)には絶対に造る事が出来ないこれらの貴金属のルーツは、凄まじい重力による天文現象の果てに造られた副産物とも言えるからです。

「Image Credit:iStock」
現在、宇宙の始まりは約138億年前の「ビッグバン」による宇宙の膨張からだとされています。
そんな宇宙創成当時は、水素やヘリウム等非常に軽い元素しか存在しておらず、それらが重力で集まり星(恒星)を形成。星の内部で起こる核融合反応によって、徐々に炭素や酸素等、重い元素が生成され行き、最終的に鉄の元素は生まれ、核融合によって生成された元素たちは、星の最期に起こる超新星爆発で宇宙に放出されるといったサイクルが繰り返される事で、現在の物質に富んだ宇宙が創られていったと考えられています。

しかし、この段階では鉄までの元素しか造られておらず、鉄よりももっと重い金やプラチナ等の貴金属がどのようにして誕生したのかまではわかっていませんでした。
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天の川銀河を研究する事でわかった貴金属誕生の謎

私たちの太陽系が属する天の川銀河には、鉄より重い貴金属の割合が太陽の5倍以上にもなる星が多く見つかっています。

「Image Credit:天の川銀河の想像図(iStockより)」
このような貴金属に富む星々はいつ、どのようにして誕生したのか?この謎について、東北大学大学院理学研究科を筆頭とする研究チームが天文学専用スーパーコンピューター「アテルイII」を使用して、天の川銀河の誕生からのシュミレーションを行いました。

「Copyright ©:Takayuki Saitoh All rights reserved.」
このシュミレーションの結果、天の川銀河に存在する貴金属に富む星々の歴史は古く、その9割以上が宇宙誕生から40億年以内という昔に形成された可能性があると示されたのでした。

人類が金やプラチナを絶対に造れない理由

研究チームによると、金やプラチナ等の貴金属は形成途中の銀河で起こる激しい衝突で造られている「r過程(rプロセス)」と呼ばれる元素合成のプロセスだと考えられており、この”激しい衝突”とは星の最期の過程で起こる超新星爆発ではなく、超新星爆発の後に形成される中性子星が大きく関わっている事がわかって来ました。

中性子星とは、重力崩壊による超新星爆発を起こした星(恒星)の残骸(恒星の核)によって誕生した、中性子を主成分とする天体の事で非常に高密度で強重力なコンパクト天体だと考えられています。

「Image Credit:中性子星(Wikipediaより)」
ちなみに、中性子星は角砂糖1個が10億トンにもなるほどの強重力を持ち、さらに貴金属の誕生を促すには「キロノヴァ」と呼ばれる、中性子星同士が衝突・合体する時に起こる超高密度の爆発現象が必要だとされており、中性子星の衝突でベータ崩壊が起こり中性子が陽子に変換される事で、金やプラチナといった鉄より重い貴金属元素が誕生すると考えられるそうです。

「Image Credit:中性子星の衝突想像図(ILLUSTRATION BY ROBIN DIENEL; COURTESY THE CARNEGIE INSTITUTION FOR SCIENCE)」
つまり研究結果が正しければ、私たちが目にする金やプラチナ、また近年需要が大きく高まっているレアアース等は、誕生してから100億年経っている事になり、もちろん形成の過程を知れば人工的に造れるハズもなく、その希少価値はかなりスゴいという事になるのではないでしょうか?!
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