地球は7割が海に覆われており、その広大な海には生命が溢れていますが、そんな環境(オーシャンワールド)を持つ惑星は、太陽系の中では地球以外にありません。
ですが、惑星にオーシャンワールドが無ければ衛星ならどうなのか?と、それを調べに行く国際協力ミッションが始動。我が日本もそのミッションに参加し大きな役割を担っています。

そのプロジェクトのターゲットとなるのが木星の3つ氷惑星。そして、もしこのプロジェクトが成功しオーシャンワールドが見つかれば、私たちは10年以内に地球以外の生命に出会えるかも知れないのです。

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日本も参加する国際協力ミッション~木星氷衛星探査計画「JUICE」

太陽系の天体の中で表面を液体の水が覆う海が存在するのは地球だけであり、その海は多種多様な生命に溢れています。
しかし、表面に海は無くても地下に海が広がっている可能性がある天体はいくつか確認されており、人類はこれからその天体へ向けて探査機を送り本格的な詳しい調査を行おうとしています。
それが、今回ご紹介する木星氷衛星探査計画JUICE(JUpiter ICy moons Explorer)」です。

「Image Credit:JAXA(Airbus DS)」
「JUICE」は欧州宇宙機関(ESA)が主導しているプロジェクトで、日本やアメリカ等の国際協力のもとでミッションが行われます。

この計画では2023年4月に探査機が打ち上げられ、約8年かけて2031年に木星系に到着後、木星の4つの巨大衛星(通称:ガリレオ衛星)のうち、氷衛星であるエウロパ、ガニメデ、カリストの3つを最新鋭の観測機器を駆使し軌道上から探査を行う事になっています。


「Copyright ©:European Space Agency, ESA All rights reserved.」
木星氷衛星探査計画「JUICE」で使用される探査機の特徴は、広げると大型バス2台分にもなる巨大な太陽電池パネルと、探査機本体に搭載されている11もの観測機器(そのうち4つは日本が開発)であり、この観測機器を使って木星の氷衛星を上空からくまなく調査し、衛星の地下に本当に液体の水を湛える海が存在するのか?そして海があれば生命の痕跡を見つける事が出来るのか?に挑戦すると言います。

そもそも何故氷の衛星に液体の水が存在するの?

「JUICE」が探査を行うのは、木星を周る厚い氷で覆われた衛星たちで、表面温度はマイナス170℃以下になるとされる超極寒の環境なのですが、何故、このような天体の地下に液体の水があると考えられているのでしょうか?
その原因になっているのが巨大な重力を持つ衛星たちの主星である木星にあります。

「Image Credit:NASA/JPL-Caltech/MSSS/Gerald Eichstadt/Sean Doran」
木星は地球の約318倍もの質量を持っており、氷衛星たちはそんな木星を楕円軌道で3~17日という短い周期で公転する事で、楕円軌道の潮汐力の差で生じる潮汐摩擦の摩擦熱によって、地下の氷が溶け液体化し大規模な海を有しているのでは?と考えられています。
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木星氷衛星探査計画「JUICE」の探査対象衛星はどんな天体?

「JUICE」の観測対象になっている氷衛星エウロパ、ガニメデ、カリストとは、いったいどんな天体なのでしょうか?
これらの衛星について、現時点でわかっている特徴を簡単にご紹介します。

もっとも生命存在が期待されている衛星「エウロパ」

衛星「エウロパ」は、太陽系の衛星の中では6番目に大きい(月より少し小さい)天体で、表面(地殻)は厚い水による氷で覆われています。

「Image Credit:Wikipedia」
また、エウロパにはわずかながらに大気(酸素を主成分)も存在しており、表面に氷のひび割れや筋状の構造があるのもその特徴です。

そしてエウロパは地球以外の太陽系天体の中で、生命存在の可能性がもっとも高いとの声も挙がっており、その理由となっているのが、エウロパの南極付近から噴出している水蒸気と思われる間欠泉が確認された事にあります。

「Image Credit:NASA/ESA/W.Spaeks(STScI)USGS Astrogeology Science Center」
すなわち、これこそがエウロパの内部に海が広がっている証拠であり、そこには生命がいる可能性が十分にあると推測されているのです。

「JUICE」が重点的に探査する太陽系最大の衛星「ガニメデ」

衛星「ガニメデ」は、衛星の中では太陽系最大で、その大きさは惑星である水星よりも巨大な衛星です。

「Image Credit:NASA/JPL/DLR」
ガニメデは、全体をほぼ氷で覆われたエウロパとは異なり、ケイ酸塩岩石と水の氷がほぼ半々で近くが組成されています。
探査機をガニメデ周回衛星と呼んでいるように、「JUICE」ではガニメデ探査に重きを置いており、木星系に到着した探査機の行程の約1年間をガニメデ探査に費やす計画になっています。

では何故、このミッションではガニメデの探査を多く行うのでしょうか?
その理由は、地下にほぼ水の海が広がっている事が確定的なエウロパと違い、ガニメデの内部に海があるという事はまだ仮説であるため、この調査でそれを確定的にする事がひとつの目的でもあり、またガニメデには磁場も存在している事から、磁場を発生させている内部構造を詳しく調べる事もミッションに含まれているそうなのです。

謎多き未知の衛星「カリスト」

衛星「カリスト」は、太陽系の衛星の中では3番目に大きい衛星であり、4つのガリレオ衛星の中で最も外側を公転する衛星です。

「Image Credit:Wikipedia」
そんなカリストですが、ガリレオ衛星の中でもあまり探査が行われておらず、まだ謎が多い天体でもあります。
そのため、このミッションでは近接探査を行い詳しいデータを収集する目的があり、カリストの場合、木星から遠く離れている分、潮汐力が弱く地質活動が少ない事が予想され、原始木星系を造った材料が多く含まれている事が予想されており、地下の水の存在を確認する事も目的の1つですが、どのように木星系が生まれたか?を調べる事の方が大きな目的のようです。
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「JUICE」でガニメデ探査に重きが置かれている理由(考察)

木星氷衛星探査計画「JUICE」では、衛星ガニメデ探査に重点が置かれていると聞いています。
ですが、木星の氷矮星で最も海の存在と生命の痕跡が高いとされるエウロパに、ガニメデほどの重点が置かれていないのでしょうか?
その理由については考察になるのですが、おそらくは「JUICE」とは別にエウロパ探査に特化したミッションが行われる事が関係しているのかも知れません。

エウロパには特別に探査機が送られる計画が進んでおり、その計画は「エウロパ・クリッパー」と呼ばれています。

「Image Credit:エウロパ・クリッパーの想像図(NASA/JPL-Caltechより)」
「エウロパ・クリッパー」は2030年代前半にはエウロパでの近接探査が行わる予定になっており、この探査で「JUICE」以上の成果が期待されるため、もしかしたら本当の太陽系オーシャンワールドを発見するのはこの頃になるのかも知れません。
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