このほど欧州宇宙機関(ESA)が開発し打ち上げに成功した新型宇宙望遠鏡「ユークリッド」。
ハッブル宇宙望遠鏡やジェームスウェブ宇宙望遠鏡をはじめ、これまでいくつもの宇宙望遠鏡が打ち上げられて来ましたが、このユークリッドは深宇宙観測に特化した望遠鏡だと聞きます。
そしてこの望遠鏡の最大の観測目的は、未だ謎で正体がわからない暗黒エネルギーや暗黒物質を探し出し謎の解明に挑むというモノ。
暗黒エネルギーなんて聞くとスターウォーズにでも出て来そうですが、これは宇宙全体を主る重要なエネルギーだと言います。
ここでは新型宇宙望遠鏡「ユークリッド」の性能と、暗黒エネルギー(物質)とは何か?について探って行きたいと思います。
新型宇宙望遠鏡ユークリッドとはどんな望遠鏡?
欧州宇宙機関(ESA)が2023年7月に打ち上げた新型宇宙望遠鏡「ユークリッド」は、可視光カメラと近赤外線観測装置を備える高さ4.7メートル、幅3.7メートルの宇宙機で、反射望遠鏡は口径1.2メートルあり、地球から約150万キロ離れた、太陽と地球が重力的に安定したポイントであるラグランジュ点「L2」に投入され6年間の観測運用を行います。このユークリッドの最大の観測目的は深宇宙を探索する事で、宇宙の歴史100億年における銀河等の大規模構造の変遷を辿り、宇宙がどのように膨張し成長を続けて来たかを探る事にあります。
ユークリッドが解明に挑む暗黒エネルギーと暗黒物質
人類は20世紀後半以降、観測技術を飛躍的に進歩させ、だいぶの宇宙の謎を解明して来ましたが、それでも広大過ぎる宇宙はまだほとんど謎が解明されておらず、その中で究極の謎と呼べるのが暗黒エネルギー(ダークエネルギー)と暗黒物質(ダークマター)です。理論上、暗黒エネルギーや暗黒物質は存在するとされているのですが、実際は未だ発見には至らず、現時点では仮想上のエネルギーであり物質であります。
暗黒エネルギー(ダークエネルギー)とは
約138億年前に起こったとされる宇宙の誕生(ビッグバン)以降、宇宙は膨張を続けており、その膨張を加速させている未知のエネルギーを総称して暗黒エネルギー(ダークエネルギー)と呼んでいます。「Image Credit:Wikipedia」
暗黒物質(ダークマター)とは
宇宙空間~そこは真空で何もない領域だと多くの人が思っているのではないでしょうか?しかし、その真空の宇宙空間にも私たちの眼には見えない物資があるとして考えられているのが暗黒物質(ダークマター)という存在です。
例えば、私たちが音を聴く場合、音は空気を波長というカタチで伝わって私たちの耳に届きますが、それと同じように光もまた波長を持っており、私たちは宇宙からやって来る光を視覚として捕らえる事が出来るワケであり、もし宇宙が何もない空間であった場合、光の波長は何を伝わってやって来るのか?それが大きな謎でした。つまり、宇宙空間にも光の波長を伝える空気のような物質があるハズ!?そう考えて仮想されているのが暗黒物質(ダークマター)なのです。
「Image Credit:pixabay」
また、宇宙の星々や銀河等の公転運動や互いが引き合うエネルギー等強大で、重力のチカラだけでは物理的に説明が出来ません。この宇宙で重力的に支配を及ぼしているのが暗黒物質(ダークマター)のチカラではないか?と考えられているのです。
「Image Credit:ダークマタ-のチカラで集まる銀河団(Wikipediaより)」
暗黒エネルギーと暗黒物質を動画でわかりやすく解説
まだ仮説の段階である暗黒エネルギー(ダークエネルギー)と暗黒物質(ダークマター)ですが、おそらくは実在しその総量もかなりのモノではないか?と考えられており、それは宇宙全体で暗黒エネルギー(ダークエネルギー)が約70%を占め、暗黒物質(ダークマター)は約25%。残りの約5%は私たちが知覚出来る星や銀河等を含む物質たちではないか?とされ、すなわち、暗黒エネルギー(ダークエネルギー)と暗黒物質(ダークマター)が宇宙のほとんどを占めていると言っても過言ではないと考えられているのです。ですが、そうは言ってもこの未知のエネルギーや物質について、いまいちピンと来ない方も多いのではないでしょうか?
そんな中、ネットで検索をしたところ、とてもわかりやすい動画を見つけましたので、参考にしてみてはいかがでしょうか。
宇宙の立体地図を作製するユークリッド
ユークリッドの観測が実を結べば、ダークエネルギーとダークマターの解明が一気に進み、宇宙全体の謎解明へ大きく踏み出す結果が待っている事は間違いないでしょうし、ユークリッドはそれだけではなく最新の観測機器を駆使し、100億光年先に存在する数十億個の銀河を観測し、宇宙の精密な立体地図を作成する事になっています。「Image Credit:全宇宙地図(Wikipediaより)」
現在作製されている宇宙全体地図に、私たちの太陽系を中心に描かれている「スローン・デジタル・スカイサーベイ(SDSS)」があり、これは光学望遠鏡によって全天の約25%を観測し、その範囲内に含まれる銀河やクェーサー等の天体を位置や距離を測定したモノがありますが、ユークリッドはこれを立体的、そしてさらに精密に描いた地図を作製する事になっています。