土星探査機カッシーニによって発見された、土星の衛星エンケラドゥスから噴き上がる水柱。
この程、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)もエンケラドゥスに焦点を当てて観測したところ、巨大な水柱が噴き上がっているところが発見されたそうです。
この発見を受けて、エンケラドゥスには生命が存在する可能性が一気に高まったと、科学者たちの鼻息が荒くなったとの事。

いったい、エンケラドゥスから噴き上がる水柱と、地球外生命体との因果関係はどこにあるのでしょうか?

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土星探査機が発見したエンケラドゥスの水柱

最初にエンケラドゥスから噴き上がる水柱を発見したのは、2017年にその役目を終えた土星探査機・カッシーニでした。

「Image Credit:表面を厚い氷で覆われた衛星エンケラドゥス(Wikipedia)」
直径がわずか500キロほどしかない衛星エンケラドゥスは、当初それほど注目されている天体ではありませんでした。しかし、カッシーニがフライバイを行うためエンケラドゥスに接近したところ、南極付近にある「タイガーストライプ(虎縞)」と呼ばれる大きなひび割れ地形から、氷の粒や水蒸気が噴き出して間欠泉となっている事を発見。この間欠泉が噴き出す領域が高温であることなどから、土星の重力でエンケラドゥスの内部が受ける潮汐作用で発生する熱が間欠泉を発生させている事を突き止め、これによりエンケラドゥスの地下深くに液体の水を湛える、深さ40キロもの”海”が広がっている可能性が高まって来たのでした。

「Image Credit:エンケラドゥスから噴き上がる間欠泉(Wikipedia)」
また、カッシーニはこの噴き出す間欠泉のサンプルを採取。分析を行ったところ氷粒子の中から有機物の高分子の断片を発見。この事により、エンケラドゥスの海には生命が生息している可能性の期待も大きくなって来ました。

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が発見したエンケラドゥスの新事実

土星探査機カッシーニが退役した今、土星領域を探査している探査機はありませんが、開発費1兆円以上をかけ2020年に打ち上げられた超高性能宇宙望遠鏡「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(以降、JWST)」が、エンケラドゥスに焦点を当てて観測したところ、新たな発見がもたらされる事になります。

「Image Credit:JWSTが撮影したエンケラドゥスの巨大な水柱(NASA,ESA,CSA,STScI,G.Villanueva(NASA’s Goddard Space Flight Center),A.Pagan(STScI))」
上画像を見てわかるように、JWSTはエンケラドゥスから噴き上がる巨大な水柱(全長約9,600キロ)を捉えています。
この発見について詳しい分析を行ったところ、エンケラドゥスから噴き出す水蒸気は毎秒300リットルに達している事も判明。そして噴き出した水蒸気は氷となり、土星を取り巻く環(リング)を形成し、水分の約30%は土星のEリングに、70%はそれ以外の土星の環に供給されている事も判明しています。

「Image Credit:エンケラドゥスから噴き上がる水蒸気のスペクトル(NASA,ESA,CSA,STScI,L.Hustak(STScI),G.Villanueva(NASA’s Goddard Space Flight Center))」
また、さらなる分析結果によると、エンケラドゥスの噴出物には、メタン、二酸化炭素、アンモニア等の生命の誕生に必要不可欠な要素を含む有機分子が含まれていることがわかったと言います。
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エンケラドゥスの本格的調査はいつなのか?

こうなると、エンケラドゥスに対する生命存在の期待度は一段と大きくなり、一部の科学者たちの中には「(エンケラドゥスには)ほぼ間違いなく生命が居るだろう。」と確信を持っている人達もいます。

こんな高まる期待度から一気に注目の的となっている、土星の小さな衛星エンケラドゥスに、今後、この衛星探査に特化した探査機が送られる計画が進行しており、NASAのジェット推進研究所(JPL)は、このミッションに向けて、エンケラドゥスの氷を溶かして潜るヘビ型ロボット「Exobiology Extant Life Surveyor(EELS)」を開発している話題になっています。

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また「Enceladus Orbilander(エンケラドゥス・オービランダー)」という計画も進んでおり、探査機がエンケラドゥスの周回軌道を1年半かけて水柱を採取し、その後、生命の証拠を探るためエンケラドゥスの地表に着陸し調査するミッションも行われる予定だと言います。

「Image Credit:Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory」
これらの計画の実行は少し先の話になるかと思いますが、計画が滞りなく遂行されれば、近い将来私たちは、地球以外の太陽系生命体と出会える日がやって来るかも知れません。

追記:エンケラドゥスから生命の基が検出される

2023年6月14日付けのでネイチャー誌にて発表された、エンケラドゥスについての衝撃的な新情報。
それは、この天体から噴出されている水柱を、土星探査機カッシーニが採取し詳しく分析したところ、ついに「リン」が検出されたと言うのです。


「Image Credit:Wikipedia」
私たち人間を含めた全ての生物が生命活動を維持するのに必要不可欠な元素が、水素、酸素、窒素、炭素、窒素、硫黄、そしてリンの6つなのです。

これまでの分析で、リン以外の元素は見つかっていたのですが今回の発見によって、エンケラドゥスには生命活動に必要な6大元素の全てが揃った事になります。
しかもエンケラドゥスの海には、地球の海の100倍以上ものリンが含まれている可能性があるとの事。
また、エンケラドゥスにリンが含まれている事で、他の天体(土星の衛星タイタンや木星の衛星エウロパ等)にもリンが含まれている可能性があり、それが事実であれば、太陽系には地球以外にも複数の生命体が存在している可能性が濃厚となるそうなんです。
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