2026年9月以降に実施予定の有人月面着陸ミッション「Artemis III(アルテミス3)」。
以前、このミッションでの月面着陸予定地13地点を紹介しましたが、それからさらに予定地が絞られ9地点になりNASAがそれを公式に発表しています。
今回はその着陸候補地9地点の紹介と、今後、さらに絞り込まれるための条件等を考察を含め解説して行きたいと思います。

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有人月面着陸計画「アルテミス計画」の概要

既にご承知の方も多いと思いますが、人類は再び月面に人を送り込もうと計画しています。その計画の名は「アルテミス計画」。
半世紀以上前に行われた「アポロ計画」はギリシャ神話に登場する勇敢な太陽神「アポロン」♂に由来し、月に送り込まれた宇宙飛行士たちは命知らずの勇敢な軍人が中心となり、人種もアメリカ人であり白人、そして全員が男性でした。
しかし、今度の「アルテミス計画」は同じギリシャ神話に登場する月の女神「アルテミス」♀に由来し、アポロ計画とは異なり、女性であるアルテミスにも意味が込まれており、男性だけではなく女性、そして黒人を含めた有色人種も月面の地に立たせようとする、ある意味人類すべてが月面を目指そうとする、グローバルなミッションとして遂行されようとしています。

「Image Credit:アルテミス計画ロゴ(NASAより)」
なお、アルテミス計画は現時点でアルテミス1~アルテミス7まで実施が予定されており、現時点(2024年末現在)で計画が実施し、実施予定が公表されているのはアルテミス5までのようですが、ここでは詳細が公表されているアルテミス3までのミッションをご紹介します。
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  • 「アルテミスⅠ」(2022年11月実施済)
    アルテミス計画最初のミッションは、無人機による月周回実験であり、新たに開発された大型ロケット「スペース・ローンチ・システム(SLS)」と有人宇宙船「オリオン」のテスト飛行も兼ねたミッションで6日間の月周回後、地球帰還までの安全性を検証し、見事成功を収めました。

    「Copyright ©:NASA Johnson All rights reserved.」
  • 「アルテミスⅡ」(2025年実施予定)
    アルテミスⅠでの無人機試験が無事に成功し、次に実施されるのがいよいよ有人飛行試験です。
    アルテミスⅡは2025年9月打ち上げを目標としており、飛行予定はアルテミスⅠと同じ月周回試験で、女性1名を含めた4名のアメリカ人宇宙飛行士が搭乗する予定となっています。

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    「Copyright ©:NASA All rights reserved.」
  • 「アルテミスⅢ」(2026年9月以降実施予定)
    ここからが、いよいよ有人月面着陸ミッションの本番になり、女性と有色人種を含めた4名の宇宙飛行士が月へ向かい、そのうち2名が月の南極地域に着陸し約1週間月面に滞在する予定になっています。
    ちなみに、月面着陸船は民間宇宙企業「スペースX」が開発したスターシップHLSが使用される予定になっています。

    「Image Credit:アルテミスⅢミッションコンセプト(Wikipediaより)」

絞り込まれて来たアルテミス3での月面着陸予定地

アルテミス計画での月面着陸地点は、月の南極地域と特定されています。約半世紀前のアポロ計画では、とにかく人類を月面に到達される事が第一目標でしたので、着陸しやすく、地球との通信環境等を考慮した月の赤道地域に近い平地が選ばれていましたが、今回のアルレミス計画ではそのときとは全く環境が異なる地域となります。
では、何故、月の南極地域が着陸地点に選ばれたのでしょうか?
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その理由は、第一に月の極地域周辺にある一部のクレーターには、太陽光が内部に届かないという領域(永久影)が存在し、そこに大量の水(氷)が眠っている事が判明しており、今後人類が月を含む宇宙に進出する上では、この水資源はとても重要である事。
第二に、南極地域は、他の月の地域よりも鉱物資源も豊富にあると考えられており、水を含めた資源はこれからの宇宙開発には無くてはならないモノであるため、アルテミス計画では主に南極地域に重点を置き調査を行っていくものとされています。

そして、水資源探索のためにも重要なのがアルテミス3の着陸地点であるワケで、以前紹介(2022年)した時には13地点の着陸候補地が選定されていましたが、今回は少し絞り込まれ9地点の候補地に!

「Image Credit:9地点に絞り込まれたアルテミス3着陸候補地(NASAより)」 この候補地の選定は、水資源を調査しやすい場所である事は大前提ですが、何より着陸しやすく危険度の少ない場所選びも重要です。これらの候補地からミッション開始まで、さらに絞り込み最終候補地が決定するでしょうが、アルテミス3以降も継続して月探査が行われる予定ですので、将来的な事も見据えて選定が進んでいくモノと思われます。

アルテミス計画では日本人宇宙飛行士も?

現時点ではアルテミス3の搭乗員となる宇宙飛行士は発表されていませんが、少なくともアルテミス計画は5回のミッションは計画されています。
前記もしたように、このアルテミス計画のコンセプトは、アメリカ人の男性宇宙飛行士だけではなく、女性を含む多国籍で構成され、その中には日本人宇宙飛行士も含まれます。
現在、日本のJAXA宇宙航空研究開発機構に在籍する宇宙飛行士は7名。そのうち5名は既に国際宇宙ステーション(ISS)に搭乗し100日を超える宇宙滞在を経験しており、新たに宇宙飛行士に選抜された2名も今後の宇宙ミッションにアサインされる期待が高まっています。

「Copyright ©:テレ東BIZ All rights reserved.」 また、現在の宇宙ミッションはISS搭乗が主任務ですが、ISSも2030年頃には退役する可能性が高まって来ています。となると、今後の宇宙ミッションは、月面探査か、その後に実施される月周回軌道に投入される「月軌道プラットフォームゲートウェイ」でのミッション。

「Image Credit:月軌道プラットフォームゲートウェイの想像図(NASAより)」
さらには2030年代には実現すると言われている火星有人探査か?いずれにせよ、アルテミス計画を含んだミッションに日本人宇宙飛行士がアサインされる可能性は高いと思われます。
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