これまで、何人もの日本人宇宙飛行士も滞在した国際宇宙ステーション(以降、ISSと表記)。
ISSの運用限界は2030年代前半とされ、その後を担う後継機がどうなるのか?まだハッキリしていませんでしたが、ここに来て新たなビッグ構想が持ち上がって来ています。
それが、月軌道を周る宇宙ステーション構想「月軌道プラットフォームゲートウェイ」。
これは、今後人類が挑戦しようとしている有人宇宙探査や宇宙開発の拠点になるプラットフォームだとされています。

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国際宇宙ステーション(ISS)運用の問題性

「月軌道プラットフォームゲートウェイ」構想の前に、現在運用中のISSはいつ頃まで使用されるのでしょうか?

「Image Credit:Wikipedia」
ISSはアメリカを中心に、日本、ロシア、欧州宇宙機関 (ESA)、カナダ等の全15カ国が参加し1999年に建設に着手してから2011年に完成。以降、地球上空約400キロの低軌道を約90分かけて地球を一周しながら運用を続けています。
ISSでは常時3~6名のクルーが長期滞在し、交代を繰り返しながら様々な宇宙での実験や観測を行っています。


「Copyrightc:Олег Артемьев All rights reserved.」
しかし、ISSが飛行しているのは高度約400キロという低軌道は熱圏と呼ばれる大気の外層部ということもあり、微量ですが大気の抵抗で少しずつ地球の引力に引かれ軌道が下がってきており、さらに宇宙空間での強烈な放射線に晒され続ける事で老朽化も進んでしまいます。
また、国際合意により運用費用負担をしている各国が2024年までしか予算を拠出するまでにしか至っておらず、その後の運用が不透明な状況で現時点では2024年で運用を終了し退役する予定になっており、その後は大気圏に突入させて大平洋に落下させる焼却処分の運命が待っています。
※ 追記:2022年、アメリカのバイデン政権はISSの運用を2030年まで延長する方針を発表しています。
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国際宇宙ステーション(ISS)退役後の後継機の計画は?

莫大な建設費(約1,500億ドル)をかけて造られたISS。運用に当たっても年間数千億円かかるとされています。
そのため前記もしましたが、莫大な費用のかかる老朽化した施設にこれ以上の費用負担を続けるのか?が懸案事項になっており、今後、新たな宇宙ステーション建設のため、ここに来て(2017年)アメリカ航空宇宙局(NASA)が「ポストISS」というべき「月軌道プラットフォームゲートウェイ」という構想を打ち出して来ました。

「Image Credit:月軌道プラットフォームゲートウェイの想像図(Wikipedia)」
「月軌道プラットフォームゲートウェイ」とは、これからの人類の深宇宙進出を見据えた有人宇宙基地を月軌道上に建設するという計画であり、これまでの宇宙ステーションは宇宙での実験施設として運用されて来ており地球に近い低軌道に建設しても良かったのですが、今後の本格的な宇宙進出では深宇宙を目指すべく、拠点となる宇宙基地を地球低軌道に置くことは逆に利便性が悪くなると判断。
そこで、2020年代以降建設する予定の月面基地や近い将来の火星有人探査に向けての前線基地としても、この新たな宇宙ステーション構想が持ち上がったということになるようです。

「Image Credit:月軌道プラットフォームゲートウェイの概略図(Wikipedia)」

日本も参加する「月軌道プラットフォームゲートウェイ」計画

NASAが打ち出した「月軌道プラットフォームゲートウェイ」構想は、地球圏を離れた深宇宙を探査・開拓するための推薬を補給する拠点として考えられているとの事ですが、ただ、やはりISS同様またはそれ以上の費用がかかることが考えられるこの計画は、NASA(アメリカ)一国だけでは費用が賄なえず国際的な協力がないと実現は難しいとされています。
そこで、この計画に私たちの日本も協力するとの発表があり、月面基地建設に伴い将来的に日本人が月面へ降り立ち任務に従事する可能性も大きくなります。

「Image Credit:JAXA資料より」
また、月軌道プラットフォームゲートウェイの建設については、国だけではなくNASAと提携する民間企業も参加を検討しており、最終的な方針は2018年中には決定すると言われています。
さらには、ロシアや欧州宇宙機関 (ESA)の協力も必要不可欠で、ESAに至ってはこの深宇宙探査ゲートウェイを利用する事で、独自の「Moon Village」という月面基地建設の構想も掲げています。

「Image Credit:Moon Villageの想像図(ESAより)」

それでも地球低軌道宇宙ステーションは必要!?

月軌道上に造られる「深宇宙探査ゲートウェイ」も、地球からの中継が無いと実現は難しく、ISS退役後も低軌道を周る宇宙ステーションは必要となります。
しかし、今のところNASAは低軌道宇宙ステーションを新たに建設する計画はありません。

そうなるとISSに代わる宇宙ステーションはどうなるのでしょうか?
それは近年、宇宙事業を展開する民間企業(宇宙ベンチャー)が進出。これらの民間企業が新たに建設を検討しているとも言われており、また、大国となった中国も大型宇宙ステーション「天宮」を2022年に完成させる予定です。

「Image Credit:天宮の想像図(China News Service(CNS)より)」
これから人類が、月や火星などの探査や開発をするにあたり、低軌道宇宙ステーション、そして深宇宙探査ゲートウェイの2つを中継して”深宇宙”へと進出して行くかも知れません。
しかもそれは、100年、200年先の遠い未来の話ではなく、私たちが生きている時代に訪れる非常に近い未来である事も嬉しい話です。
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