前回、これから人類が向かおうとしている火星について、困難が予想される道のりについて解説しましたが、今回はその延長である『実際に人類が第二の地球として、火星に移住して住んだ場合そうなるのか?』について考察してみたいと思います。
おそらく、住み慣れた地球を離れた人類が全く環境の違う火星で生活するとなると、様々な困難が待ち受けている事が予想されます。

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火星に移住する前に火星が地球に似ているところを知っておこう

火星は地球の隣りにある惑星で、太陽系天体の中で環境が最も地球に似た惑星だとも言われています。
でも、火星はどれくらい地球に似ているのでしょうか?以下、火星のどこが地球に似ているのか?挙げてみたいと思います。

「Image Credit:国立天文台 天文情報センター」
基本的な火星と地球の違いは上図↑↑のとおりなのですが、実際に今後人類が火星の地に降り立ち生活し行く場合、そこでの環境は大きな意味を持って来ます。

火星が地球に似ているところ~「1日の長さがほぼ地球と同じ」

火星は地球のほぼ半分の大きさしかないですが、自転速度はほとんど地球と同じで約24時間でグルりと一周していますので、人類が火星に移住してもほぼ地球と同じような時間の流れで1日を過ごす事が出来るでしょう。

火星が地球に似ているところ~「四季がある」

地球の四季は地軸の傾き(約23.4度)によって1年を通して太陽の高さが変わり、春~夏~秋~冬へと季節が変化しています。

「Image Credit:四万温泉協会
火星も地球と同じように地軸の傾き(約25.2度)を持っていますので四季があると予想されます。
しかし、火星は草木一本も生えていない不毛の地です。いくら火星に四季があると言っても移住した人たちが肌でそれを感じる事は出来ないでしょう。
また、火星の1年(公転周期)は687日と地球の1年(365日)の倍近くありますので、各季節もそれだけ長くなってしまいます。

火星が地球に似ているところ~「雲が湧く」

火星にも非常に薄いですが雲が湧く事が確認されています。

「Image Credit:実際の火星の雲の様子(NASA/JPL-Caltech/MSSSより)」
ただこの雲は、地球の雲のような水蒸気で出来たモノではなく、ドライアイス(凍った二酸化炭素)だと考えられており、雨や雪を降らせるような雲ではないようです。

火星が地球に似ているところ~「月がある」

地球には月という衛星があるように火星にも月があります。しかも2つ。

「Copyright ©:NASA Jet Propulsion Laboratory All rights reserved.」
上動画↑↑は、火星の地表で探査を行っている「キュリオシティ」が撮影した火星の月の様子で、火星は2つの衛星を従えており、手前が第一衛星「フォボス」で後ろが第二衛星ダイモスです。

ただ、地球の月と違うのはフォボス・ダイモスともに非常に小さく、フォボスの直径が約22キロ。ダイモスが約12キロ程度しかありません。
また、動画で観てわかるように2つの衛星の動きは全く違います。その理由は、フォボスが火星上空約6,000キロと低軌道にあるのに対し、ダイモスは火星の静止軌道に比較的近い位置を公転しているため、ほとんど動いていないように見えています。
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本当は全然似ていない火星と地球

前記で火星と地球の似ているところを挙げましたが、実は似ているのはほぼこれだけで「地球と火星が似ている」と言っても、実際の環境はほとんど似ていないと言っても過言ではありません。
そこで、もし今後において人類が火星に移住した場合、地球との環境の違いで起きる弊害について挙げてみたいと思います。

大気圧が薄過ぎる

火星にも大気が存在していますが、その大気圧は地球の100分の1程度。当然ながらこの大気圧では生身の身体で火星の大地に立つ事など不可能ですし、何より火星の大気には酸素がほとんど含まれていません。
そのため、火星に移住した人々は密閉された宇宙服(与圧服)を着用し外に出るしか方法はなく、生活空間も密閉された建物、または地下で生活しないといけないでしょう。

「Image Credit:Wikipedia」

重力が地球より弱い

火星の重力は地球の3分の1程しかありません。すなわち移住先は低重力の世界という事になってしまうワケで、地球の重力下で進化し生活をして来た人類が低重力下での生活を余儀なくされた場合、身体における弊害は深刻になってしまう可能性が高いでしょう。

「Image Credit:Depositphotos」
それは、筋力の低下だけではなく、骨や内臓の機能にも異常をきたし、場合によっては脳機能にも弊害が出て来る可能性があると言われています。

磁場が存在しない

地球には強い地場が存在し、その磁場が宇宙からやって来る太陽風等の宇宙放射線から生命を守ってくれています。

「Image Credit:NASA」
しかし火星には移住者を放射線から守ってくれる磁場がありません。つまり、火星には有害な放射線が容赦なく降り注いているワケで、これにより火星全体が汚染されている可能性が高いと言えるでしょう。

この地に移住した人々にとって、火星にあるモノ(土壌や水)を自給自足して利用するには、まず除染してから利用しないとならず、と同時に住む建物や宇宙服も万全な対策が必要となるでしょう。

快適とは程遠い過酷な火星での移住生活

このように、火星に移住した人たちにとって地球より都合の良い環境は何一つないと言っても良く、常に閉鎖された空間で生活を余儀なくされる事によってストレスも溜まって来る可能性も高く、低重力下での身体への弊害だけでなく、太陽光の当たらない空間で長期間生活をすると肌へも悪影響が出てしまう可能性もあります。
そして最も大きな弊害となってしまうのが、このような環境で長期間過ごした場合、身体そのものが火星に適合してしまい、もう二度と地球には帰れないカラダになってしまうかも知れません。

それでも人類は火星移住を目指すのでしょうか?個人的な見解ですが、現時点では火星移住は不可能か?!課題は山積みのような気がします。
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