現在、宇宙空間を航行するのに推進剤、いわゆる燃料を必要とします。しかし、それが当たり前の時代にNASAは「燃料を必要としない画期的な推進システムを開発しているらしい」とのウワサを聞きました。
そのウワサされている推進システムの名前を「EMドライブ」と呼び、開発に成功すれば相当の低コストで宇宙を航行できるという事ですが、そんな夢のような永久機関「EMドライブ」が、本当に実現し実用化されるのでしょうか?
今回はNASAが公表したという「EMドライブ」の原理などについて調べてみました。

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従来型の宇宙航行推進システムとは?

地球を飛び出し宇宙に行くとき、ロケットが派手に打ち上がる推進システム「ロケットエンジン」を思い浮かべるかも知れませんが、今回ご紹介するのは、地上からロケットエンジンを使って宇宙空間に到達した後の推進システムについての解説です。

液体燃料による推進システム

この推進システムは、アポロ宇宙船やスペースシャトルのオービター等に搭載されていたエンジンで、液体酸素や液体水素を推進剤として利用したモノでヒドラジン系推進とも呼ばれています。
液体燃料エンジンは推進力こそ大きいのですが、燃料消費率が非常に高、長時間の推進継続には向かないため、一時的な加速や姿勢制御などに使われ、あまり効率の良い推進システムではありませんでした。
しかし、液体燃料を使った推進システムは有人宇宙船には欠かせないもので、NASAが新しく開発しているオリオン宇宙船もこの推進システムがメインとなっています。

「Image Credi:NASA」

イオン推進システム

この推進システムは電気推進の一種で、マイクロ波で生成したプラズマ状イオンを静電場で推力を得ることが出来るエンジンです。
特性は非常に燃費が良く、エンジンも小型化が可能。しかし、ヒドラジン系推進に比べ、遥かに推進力が弱く、液体燃料を使ったエンジンの1000分1以下の出力しかありません。

では、何故こんな出力の弱い推進システムが採用されているのでしょうか?その理由は、地上のような空気抵抗の無い宇宙空間では慣性飛行が可能だという事にあり、空気抵抗が無ければ、出力の弱いエンジンでも長時間推進し続ける事で加速を続けることが出来、最初は歩くような遅いスポードでも慣性の法則で加速し続け、いずれは時速何万キロというスピードまで到達することが出来るというワケです。
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なお、日本の小惑星探査機「はやぶさ」「はやぶさ2」にも、このエンジンが搭載されていることは有名です。

「Image Credi:JAXA 宇宙航空研究開発機構」

夢の推進システム「EMドライブ」とは?

「EMドライブ」とは、超簡単に言えば燃料無しで推進を得られるという、常識では考えにくい推進システムの事です。
この夢のような推進システムの構造はさぞや複雑か?と思うかも知れませんが、実は原理的には非常に簡単で、現在実験段階での構造は密封された円筒形の容器の中にマイクロ波を反射させることで電力が発生し、その電力を推進力に転換できるという事らしいのです。


「Copyright ©:PBS Space Time All rights reserved.」
その出力は液体燃料推進には劣りますが、EMエンジンで得られた電力1キロワットあたり1.2ミリニュートンの推力を得られるといい、このEMドライブを使えば、通常なら半年以上はかかる火星まで2カ月半ほどで行ける推進力を得られる計算になると言います。

「Image Credit:Wikipedia」

実は原理未解明の「EMドライブ」

密閉容器の中でマイクロ波を反射することで推進力が得られるEMドライブ。
実は、この推進力の原理は不明で謎に包まれているという事が現状のようです。
何故なら、このEMドライブで得られる推進力は物理の法則である作用・反作用の原理にまったく当てはまっておらず、例えば、作用・反作用の法則に当てはまるロケットエンジンのように、燃焼させたエネルギーを後方へ噴射させることで前へ進む推進力を得るといった原理に矛盾しているため、現時点では解明が出来ていないという事のようです。
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実用化の道のりは遠い?「EMドライブ」

実験段階では、推進力が得られるという結果を出しているEMドライブですが、やはり原理が未解明のままでは実用化は難しいようです。
しかし、推測ではいくつかの原理が提唱されており、これらが物理的に解明されれば、一気に実用化の道は開けて来るかも知れません。

燃料がいらない、言わば永久機関であるEMドライブが完成すれば、人類の今後の宇宙探査・開発の道は大躍進を遂げる可能性があり、コストが削減できる分、太陽系の隅々まで探査が出来、もしかしたら我々のような一般人も、気軽に宇宙旅行が出来る日がやって来るかも知れません。
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