開発の遅れ等、様々な事情で打ち上げが遅れていた小惑星探査機「サイキ」がいよいよ打ち上げられます。
実はこの探査機サイキは、ある意味人類の夢と今後の宇宙開発への期待を背負っているとも言え、探査の成果に注目が注がれています。

というのも、サイキが探査に向かう目的地は「黄金の小惑星」と呼ばれる特別な天体で、この探査次第では世界経済に大きな影響を及ぼすかも知れないのです。

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小惑星探査機「サイキ」とは?

小惑星探査機「サイキ」は、金属を主体として構成されていると考えられている小惑星「サイキ(英語読み)※ラテン語では「プシケ」」の探査目的で開発された宇宙機です。

「Image Credit:NASA/JPL-Caltech/ASU)」
このサイキ計画は、効率良く、そして低コストで太陽系の天体を探査することを目的とした、NASAの宇宙探査プロジェクト「ディスカバリー計画」の一環として2015年に立案され、2017年から計画がスタートし探査機の開発が進められて来ました。
当初「サイキ」の打ち上げは2022年8月予定でしたが、フライト・ソフトウエア試験等の開発の遅れにより、2023年10月に延期。いよいよ打ち上げられる事になりました。

予定では、2023年10月にSpaceX社のファルコン・ヘビーロケット打ち上げられ、火星近傍でフライバイを行ったのち、2029年8月にプシケに到着する予定で、到着後は約26カ月間軌道を周回しながら、さまざまな高度から観測を行う事になっています。

探査機は何故、小惑星「サイキ」を調査するのか?

小惑星「サイキ」は、火星と木星にある小惑星帯(アステロイド・ベルト)にある直径約226キロ程の天体です。

「Image Credit:小惑星帯の軌道(Wikipediaより)」
でも何故、一つの小惑星に注目し、わざわざ約3億キロも離れた天体に探査機を向かわせるのでしょうか?
当然ながら、それには探査に値する大きな成果を期待しての事なのです。

金属で出来た小惑星「サイキ」

小惑星「サイキ」は、金属を主成分とするM型小惑星に分類される天体で、組成は純度の高い鉄やニッケル等の金属ではないかと推測されています。

「Image Credit:小惑星「サイキ」想像図(Arizona State University/NASA)」
つまり、この「サイキ」は推測どおりだと鉱物資源が豊富に存在し、鉄はもちろんの事、ニッケル等のレアメタルで構成され、また金やプラチナといった高価で稀少な金属も多く含まれている可能性があり、冒頭で”黄金の小惑星”と呼んだように、まさに宝が詰まった天体として期待度が高まっているのです。
ちなみに、小惑星「サイキ」の経済価値を試算した場合、1,000京ドルという想像を絶する天文的な金額になり、全世界の国内総生産(GDP)約105兆ドル等、到底及ばない莫大な価値があるといい、もし「サイキ」で採掘された金が地球に持ち込まれたとしたら、当然ながら金の価値は大暴落を起こし、大袈裟かも知れませんが世界の経済は大混乱を起こすかも知れませんね?!
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何故「サイキ」のような小惑星が存在するのか?

鉱物資源が豊富に含まれているとされる小惑星「サイキ」。ですが何故このような天体が存在し、どうやって生まれたのでしょうか?

小惑星「サイキ」の起源については、これからの探査で謎が解明されて行くでしょうが、現時点の観測でわかっている事は、「サイキ」の組成は惑星のコア(核)に良く似ている事から、推測では、元々は惑星サイズの大きな天体だった「サイキ」に様々な天体衝突が起こった事で、外層の地殻やマントル等が破壊、吹き飛ばされた結果、コアの部分が剥き出しになり小惑星サイズになって残ったのではないか?と考えられています。

「Image Credit:天体衝突の想像図(Wikipediaより)」

小惑星「サイキ」探査は過大な期待をしない方がいいかも?

現時点では、大きな探査結果が期待出来そうな小惑星「サイキ」ですが、最近ではこの「サイキ」にはそれほど期待が出来ないとの研究結果も出ているうようです。

研究では「サイキ」を、可視光と赤外線のスペクトル分析を行い一致する組成を調べたところ、「サイキ」の金属組成は82.5%だったのですが、その半分近くは金属の含有量が少なく、空隙率が高い(内部のすき間が多い)物質で構成されている可能性が高いとの結果が出たとの事。つまり「サイキ」はコアが剥き出しになった姿はしておらず、表面には金属含有の低い物質で覆われている可能性があるといいます。

「Image Credit:地上から撮影された実際の「サイキ」(Wikipediaより)」
とは言っても、実際には行ってみないとその謎は解明されません。

「Copyright ©:NASA All rights reserved.」
原始惑星のコアだった可能性がある小惑星「サイキ」。
もちろん鉱物資源の期待度もありますが、この探査の大きな目的は惑星のコアを直に調査出来る可能性がある事にあり、ミッションがもたらす科学的知見は、惑星の誕生から組成までを理解する大きなチャンスでもあるのです。
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