赤茶けた荒涼たる大地が広がる火星。そこにはかつて豊富な水があった等、信じられない光景が広がっています。しかし、確実にそこには水が存在した!それを裏付けるこれ以上ない水の痕跡が見つかっています。
ですが、かつての火星にはどれだけの水が存在し、その水はいかにして火星から姿を消してしまったのか?そして、水があった頃の火星にはどのような風景が広がり、生物は住んでいたのか?その謎の解明は少しずつ進んでいるようです。

Sponsored Link

火星探査車が発見した水の痕跡

現在火星では、3台の無人探査車が稼働し(2024年現在)火星地表面の調査を続けています。
そのウチの1台、NASAのキュリオシティは2012年から火星の赤道近くのゲール・クレーターに降り立ち活動を続け、現在はシャープ山(アイオリス山)付近で調査を行っているそうです。

「Image Credit:キュリオシティが撮影したシャープ山(アイオリス山)標高約5.5キロ(Wikipediaより)」
シャープ山付近には、かつて川や湖が存在し水の流路があったと推測されており、ここを詳しく調査すれば水の痕跡を発見出来ると考えられていました。
そして見つかった波状岩のような岩石の数々。

「Image Credit:NASA/JPL-Caltech/MSSS」
上画像↑↑は、キュリオシティがシャープ山の麓付近で撮影したマーカーバンド岩層で、浅い川や湖の底で波によって形成されたと言い、まさにこれは水の流路があった証拠を示すモノだと専門家は断言しています。

火星の水はどこに消えたのか?

火星に水があった痕跡は見つかりましたが、周りは荒涼とした大地で水の痕跡はあっても肝心の水の姿はどこにもありません。
ですが、火星全体を見渡すと極冠付近には水が氷として残っており、氷の地下深くには液体の水も存在している事が確認されています。

「Image Credit:NASA/JPL/MALIN SPACE SCIENCE SYSTEMS」
それでも極冠に残った水はほんの一部に過ぎず、それ以外の水は何故失われたのか?長年の謎となっていました。
では火星に存在したハズの水の大半はどこに消えたのでしょうか?この事については長年研究が進められて来ており、原因が明らかになりつつあります。

「Image Credit:火星探査ローバー「キュリオシティ」が撮影した火星の地表(NASA/JPLより)」
水が豊富にあった時代の火星には地球のような磁場も存在していたと考えられています。しかし、時が経つに連れ磁場が消失。それに伴い、太陽から容赦なく紫外線が降り注ぐ事によって、気化した水分が宇宙に流出することで、少なくとも80%もの水が失われたと考えられています。
Sponsored Link

太古の火星は地球と良く似た環境だった!?

かつての火星には豊富な水が存在し、地球と同じような量を蓄えており現在の火星とは似ても似つかない姿をしていたと考えられています。

「Image Credit:NASA」
また、太古の火星が地球に似ていた証拠である酸化マンガンを探査車キュリオシティが発見しています。

「Image Credit:キュリオシティが酸化マンガンを発見したゲールクレーター(NASA/JPL-Caltech/MSSSより)」
キュリオシティが酸化マンガンを発見したゲールクレーターは、古代の湖の跡だったと考えられており、クレーターの底の堆積物に多くの酸化マンガンが含まれていたと言います。
つまりそこに酸化マンガンがあるという事は、かつてのゲールクレーターには多くの水があり、同時にその水によってもたらされたであろう酸素を含んだ大気もあったのでは?と推測も出来るそうなのです。
ただそれはまだ推測に過ぎず、実際には酸化マンガンがどのようにして火星の地表に蓄積されていったのかは謎で、当時の火星がどこまで地球に似ていたかはこれからの調査結果が待たれるところではあります。

太古の火星に生物はいたのか?

昔の火星が地球と似た環境だったのであれば、そこに生命が居た可能性も少なからず期待が持てそうなのですが、実際はどうだったのででしょうか?
その証拠を掴もうと本格的に調査を行っているのがNASAのもうひとつの無人探査車パーサヴィアランスです。
パーサヴィアランスは、火星で最も生命探査が期待出来るとされるかつての河口後「ジェゼロクレーター」に降り立ち調査を続けています。

「Image Credit:ジェゼロクレーターの位置(Wikipediaより)」
2021年から火星の調査を開始したパーサヴィアランスですが、まだ生命存在の決定的証拠は見つけてはいませんが、水によって変質した岩石中に有機化合物を発見しています。

「Image Credit:ジェゼロクレーターでのパーサヴィアランス探査の様子(NASA/JPL-Caltech/MSSSより)」
有機化合物は生命の構成要素として見なされることが多く、この発見は火星での生命調査にとって非常に重要な発見との事だと言います。
この発見によって、今後具体的な生命の化石等も見つかる事も期待されたりしますが、火星に水が存在し環境が地球に似ていた頃は数十億年前だとされています。
この事を考慮すると、その時代の地球には単細胞の微生物は生息していたとされ、骨格があるような複雑な構造を持つ生物は存在していませんでした。となれば、現実的に考えれば、当時の火星もその頃の地球と同じ環境だったとすれば、生命の痕跡が見つかったとしても微生物しか見つからない事も大いに考えられるかも知れません。
Sponsored Link