地球に最も近い惑星。それは金星です。しかも、姉妹星と呼ばれるほど大きさや質量が地球に似ている。なのに金星より遠い火星の方が良く知られています。
その理由は、金星の環境が大きな要因になっているようです。
今回は、あまり知られていない金星について、最新の研究で判った事に少し触れてみたいと思います。

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金星が火星より探査が進まない理由

金星も火星も同じ地球の隣りを公転する惑星ですが、地球との距離は金星(最接近距離:約4,000万キロ)の方が火星(最接近距離:約5,500万キロ)よりも近く、普通に考えれば地球により近い金星に探査の目が向きそうですが、実際は金星よりも火星に多くの探査機が送られ、現在もNASAをはじめESA(欧州宇宙機関)や中国等、各国の探査が火星で盛んに行われています。

ですが何故、人類は金星よりも火星に探査の目を多く向けるのでしょうか?
その最大の理由は、火星の方が魅力があるからに他なりません。

ではその火星の魅力とは何なのでしょうか?
火星には希薄ですが大気があり水もある。そういった環境から、もしかしたら生命が存在するかも知れないという期待がある事であり、更には、将来の人類の移住先として火星が最有力候補地である事もそのひとつです。
この2つが金星よりも火星探査が優先される理由ですが、それ以外にも金星探査が進まない大きな理由があります。
それは、金星が地球に近いにも関わらず探査が難しいという大きく分けて2つの理由があります。

金星探査が難しい理由その1「地球よりも太陽に近い」

金星は地球よりも内側を公転する内惑星のため、金星に探査機を送るとなると太陽の重力が大きく影響して来ます。
仮に、太陽の重力を坂道に例えると太陽から外側に向かって上り坂になって行き、地球より外側にある火星へ行くには上り坂を登って行くというカタチになり、一方、地球から金星に行くとなれば下り坂になってしまい、そのまま金星に向かってしまうと太陽の重力に引っ張られてしまいます。
つまり、火星に探査機を送る場合、下り坂(重力)を転がり落ちないようにブレーキをかける必要があるのですが、ブレーキをかけるにはその分多くの燃料が必要になりますが、現在の技術では金星に直接行けるほどの燃料を搭載できないため、地球等の重力を使いながら時間をかけて、軌道調整(フライバイ等)ゆっくりと回り道をしながら金星に接近する方法を取っており、技術的にも火星に行くより金星に行く方が難しいという事になるのです。
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金星探査が難しい理由その2「過酷過ぎる環境で探査が困難を極める」

金星は大きさ、質量が地球と良く似ていますがその環境は全く違い過酷そのものです。
まず、金星の大気はブ厚い二酸化炭素で覆われており、外側からでは全く地表を見る事が出来ないため、探査機は赤外線等の特殊な技法を使って金星の地表を調べています。

「Image Credit:金星地表を赤外線で探査する「あかつき(JAXA探査機)」のイメージ図(Wikipediaより)」
外側から地表を見れないなら、地表もしくは大気中に探査機を降ろし探査をする方法も?という考えもありますが金星の大気中はとてつもない過酷な環境なのです。
現在の金星では、厚い雲には金属をも溶かす硫酸が含まれており、表面温度は摂氏約450度以上。気圧は地球でいうところの深海1,000メートルに相当するほどの高圧で、実際、過去に何度か探査機を地表に降ろす試みをしましたが、いずれも短時間の探査しか行えず詳細な調査は出来ずに終わっています。

「Image Credit:旧ソ連のベネラ13号が撮影した金星地表写真(Ru.Wikipedia)」

金星も昔は生命が住める環境だった?

現在の金星の環境はとてつもなく過酷で、とても生命が住める場所ではない事が容易に想像出来ます。
しかし、そんな過酷環境の金星でも太古(数十億年前)は、非常に温暖な環境で、むしろ当時の地球よりも生命生存に適した環境だったかも知れないという研究結果が発見されています。

「Copyright ©:NASA Goddard All rights reserved.」
過去の金星では深い海も存在し、今の地球のように海洋と大陸がハッキリと分かれて時期があったのでは?と考えられているのです。

「Image Credit:太古の金星のイメージ図(NASAより)」

今の金星は未来の地球の姿か?

何故、現在の金星が過酷な状態になってしまったのか?については、地球よりも太陽に近いという事と、最大の要因は金星の昼と夜が2ヶ月毎に訪れるという、かなりゆっくりとした自転速度によるものだと考えられており、昼の時間が長いという事で、強い太陽光で海の水が蒸発してしまい、大気中に溜まった水蒸気も太陽熱で水素と酸素に別れ、やがて二酸化炭素に替わってしまう事で温室効果がもたらされ、現在の金星の環境になってしまったと考えられています。
二酸化炭素による温室効果は、今の地球の深刻な問題とも重なっており、地球の温暖化問題は必ずしも金星と同様とは言えませんが、私たち人類が金星にもたらした環境のマイナス要因を人工的につくり出している事は否めないとも言えるのではないでしょうか?

実際、温暖化により地球の環境は年々悪化しているとの声もあります。
これは、他の星の事とは考えず、もしかしたら地球もいずれはこのようになってしまうのでは?という危機感を持つのも必要になるのかも知れません。
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