月は私たちにとって最も身近な天体ですが、まだまだ解明されていない謎もたくさんあり、観測技術の向上や人類がこれから直接、月に行く事も増える事が予想されるため、今後の調査で謎の解明が期待されています。

そんなワケで今回の話題は、未だに解明されていない月の謎と、今後実施される予定の月探査計画についても少し触れてみたいと思います。

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未だ解明されていない月の謎5選

地球に一番近い天体は、誰もが知る地球で唯一の衛星「月」です。

「Image Credit:gettyomages」
しかし、地球に一番近い天体にも関わらず、まだまだ月の正体はわかっておらず、そもそも月がどうやって誕生し地球の衛星になったのかさえ不明なのです。
そこでここでは、解明されていない月の謎について5つほど挙げてみたいと思います。

何故、月は巨大な衛星なのか?

地球から約38万キロ(平均距離)の位置を公転する月。直径は約3,476キロで地球とは約4分の1の大きさで、質量は地球の81分の1ほど。
この事を聞いてもほとんどの人は当たり前の事なので、あまり何とも思わないでしょう。ですが、これはとても不思議な事なのです。
何故なら、地球以外の太陽系のどの天体を探しても、これほど巨大な衛星を持つ惑星はどこにも存在していないのです。
例えば、100個近い衛星を持つ木星(2024年現在)で最大の衛星ガニメデの直径は5,268キロと月よりも遥かに大きな衛星ですが、そんなガニメデさえも主星の木星に比べたら約27分の1の大きさで、質量はさらに小さい約12814分の1程しかありません。つまり、他の太陽系惑星に比べたら月は衛星にしては大き過ぎるのです。

「Image Credit:惑星と衛星の大きさ比率図(北海道大学より)】
何故、地球がこれほどまでに巨大な衛星を持つに至ったのか?未だ謎ですが、推測ではおそらく太古の地球に起こった大異変が現在だったのでは?とされています。

月誕生にまつわる有力説

太陽系の他の天体にはない地球にだけ存在する巨大な衛星・月。その強力な重力の影響で地球の自転軸はほぼ固定され、地球上には大きな潮汐力が働き、潮の満ち引き等、海が撹拌、また大気の対流にも大きな影響を与え、おかげで地球は生命溢れる星となり栄えています。
ですが、何故、このような巨大な衛星が誕生する事になったのか?については謎が残り、いくつもの”月誕生説”が提唱されて来ましたが、現時点で最も有力な説は「ジャイアント・インパクト説」です。

「Image Credit:ジャイアント・インパクトの想像図(Wikipediaより)」
ジャイアント・インパクト説は、原始地球に火星ほどの巨大な天体・テイア(仮想上の天体)が衝突。
その衝撃で原始地球は大きく破壊され、衝突で地球とテイアの破片が宇宙空間へと飛び散ったものの、その一部が一時的に土星の環のように地球軌道上を周回し、やがてそれらの破片が一箇所に集まり月が誕生したとされています。
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謎多き月の裏側

月は常に同じ面を地球に向けて公転しています。これは潮汐ロックと呼ばれる月の自転と公転周期が同期しているモノで、地球の巨大な潮汐力によって月の重心が少し地球側にズレる事で起きる現象で、月が地球を一周する間に自転も一周しているため、結果として地球からは月の裏側は見えていないのです。
しかし、宇宙探査が始まって以降、探査機が月の裏側に行き、少しずつではありますが謎が解明されつつあります。

「Image Credit:Wikipedia」
ちなみに上画像↑↑を見てみると、月の表側と裏側では、裏側の方がクレーターの数が圧倒的に多いのが良くわかります。その理由は、宇宙からやって来る小惑星等の小天体を月が引き付ける事によって、地球に衝突する被害を少なくしてくれている証拠とも言えると思います。
また、最近、中国の無人探査機が月の裏側に着陸しサンプルを採取する事に成功しています。

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月の内部構造の謎

月の表面は穏やか過ぎるほど荒涼で無機質な世界。そこに地球のような内部活動は起こっていないように見えています。

「Image Credit:Pngtree
実際、月では大きな活動は起こっていないのですが、「月震」と呼ばれる地殻変動が起こっている事は確認されています。
しかしながら、現時点においても月の詳しい内部構造はわかっておらず、これまでの調査の結果では、金属で出来たコア(核)があることは間違いないようなのです。

「Image Credit:月の内部構造想像図(国立天文台より)」

月の水資源は活用できるのか?

これまでの調査の結果、月にも水がある事が判明しています。しかし、荒涼とした月面の様子からだとととても水があるようには思えないのですが、そのほとんどは内部に存在しているらしく、また月面の砂(レゴリス)や岩石等にも水分子が浸透している事もわかっており、極地域の陽が当たらないクレーター等の影の部分(永久影)にも水氷が溜まっている事が観測されています。

「Image Credit:矢印の箇所が月面に溜まった水氷(NASAより)】
ただ、月にはどれほどの水が埋蔵されているのかは不明で、また、この水が人類が将来月面で活動するようになった場合に使える水なのかもまだわかっていません。
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アルテミス計画で解明が期待される月の謎

ここまで月にまつわる謎を5つほど挙げましたが、まだまだ月には多くの謎が残っており、今後人類は直接月に出向き謎の解明に挑む事になっています。
それが、1960年代から70年代初頭に行われた「アポロ計画」以降、再び人類が月面の地に降り立つ予定になっている「アルテミス計画」です。
この計画では様々なミッションが計画されており、月面に降り立つ大きな目的のひとつは月の水を調査する事にあります。

「Image Credit:月面で船外活動をする「アルテミス3」のクルー想像図(NASAより)」
そのため、アルテミス計画での月面着陸は水が豊富にあると予想される南極付近を予定しています。

「Image Credit:アルテミス計画での月面着陸候補地13か所(NASAより)」
以前のアポロ計画では、宇宙船が着陸しやすいなだらかな平地を選んでいましたが、アルテミス計画では荒れた地形の場所に降りるため、また今回の宇宙船はアポロ計画時の宇宙船よりも大型で重量も増している事もあり、着陸ミッションはかなり困難を極めるのではないかと懸念もされています。

「Image Credit:月面に着陸したスターシップHLS(SpaceXより)」
上画像↑↑は、スペースX社が現在開発実験中の大型宇宙船「スターシップ」が月面に降り立った時の想像図ですが、果たして、荒れて整地もされていない月の南極で、このような大型でバランスの悪そうな宇宙船が無事に着陸出来るでしょうか?非常に疑問に思うところではありますが、いずれにせよ着陸地点の選定はかなり慎重になるものと思われます。

月は少しずつ地球から距離が離れている

これは現実に起こっている事で”月の謎”ではないかも知れませんが、月は毎年約4センチずつ地球から遠ざかっています。
この原因は判明しており、地球の自転速度(赤道付近で時速約1,700キロ)が月の公転速度(公転周期約27.3日)より速い事で起きている現象で、この回転エネルギーで潮汐摩擦が発生し地球と月の距離関係に大きな影響を及ぼしているらしいのです。

「Image Credit:小学館の図鑑 NEO地球より」
上図↑↑を参考にしていただくと、地球の海の潮の満ち引きは月の引力で引っ張られる事で発生していますが、さらにここに地球の自転が加わると、地球の自転速度より遅い月の公転に地球の自転が月に引っ張られ、地球の自転速度は少しずつ減速して行く事になり、一方で地球の自転速度が遅くなれば反動で月の公転速度は増して行き、結果、遠心力で月は地球から離れて行く事になります。

とは言え、このまま離れて行ったらいつか月は地球の衛星では無くなってしまうのでは?と心配になってしまうかも知れませんが、地球と月の潮汐摩擦の影響は、現在の月の公転軌道が40%ほど大きくなるところまで来ると、地球の自転速度と月の公転速度が同じになり、そこで月は地球の衛星として永遠に留まる事になるのですが、強力な月の潮汐力の恩恵で地球が受けていた環境は大きく変わり、地球は生命が住みにくい場所に変わってしまうかも知れません。
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