かつては太陽系第9番目の惑星であった冥王星ですが、惑星としては極めて小さい天体であった事を理由に現在はワンランク格下げとなって準惑星という位置付けになっています。
そんな事もあってか?冥王星は、これまではあまり特徴の無い小さな氷の天体だと考えられていたのですが、NASAの探査機「ニューホライズンズ」によって、次々に興味深い新事実が発見され話題になっています。
ここでは、ニューホライズンズの探査でわかった冥王星の特徴などを最新の動画も交えて、いくつか挙げてみたいと思います。

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そもそも冥王星とはどんな星?

冥王星の特徴を挙げる前に、まずはこの天体はどんな星なのか?について解説します。

冥王星は、1930年にアメリカの天文学者クライド・トンボー氏によって発見され、太陽系9番目の惑星として認定されました。
発見当初の冥王星は、他の8つの惑星とは異なった奇妙な惑星として注目されています。
それは、他の惑星と比べ冥王星だけは非常に大きな楕円軌道で太陽を公転しており、最も太陽に近づいた時の近日点では8番目の惑星である海王星の内側の軌道まで入り込み、さらにはその軌道面が黄道面から17度も傾いていたからです。

「Image Credit:永久磁石・磁気応用製品ネオマグ㈱
さらには、衛星「カロン」は主天体である冥王星の半分ほどの大きさがあり、そのため冥王星とカロンはお互いの周りを回る連星として関係を保っています。

「冥王星と衛星・カロンの軌道図」

「Image Credit:Wikipedia」
なお、冥王星が準惑星に格下げになった要因のひとつは、衛星である月よりも小さい天体だったこともあるようです。

「Image Credit:Wikipedia」
また、観測技術の発達により太陽系外縁部に冥王星よりも大きな天体が次々に発見されたため、「冥王星が惑星なのはおかしい」との意見が多数を占め、2006年の国際天文学連合(IAU)総会にて、惑星ではなく準惑星として分類されることになった経緯があります。
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近年、冥王星が注目を浴びることになった理由

小さな天体である冥王星は、これまで巨額を投じて探査をするほど重要視される天体ではありませんでした。
にも関わらず、NASAは2015年に巨額を投じて開発された無人探査機「ニュー・ホライズンズ」が冥王星に到達し探査を行っています。

「Image Credit:Wikipedia」
では、何故NASAは巨額を投じてまで冥王星探査を実行したのでしょうか?
その理由は、ニュー・ホライズンズの探査目的がエッジワース・カイパーベルト内にある太陽系外縁天体の探査を行う事であり、冥王星もエッジワース・カイパーベルト天体であるため、探査目標としてミッションを行う対象となっていたのでした。
ですが、やはりニュー・ホライズンズの主たる探査目標は冥王星であり、この探査は人類初の試みとして冥王星とのコンタクトに成功し大きな注目を浴びる事になりました。
そして、冥王星で探査を行ったニュー・ホライズンズは、数々の発見をし大きな成果をおさめる事になります。

「Copyright ©:VideoFromSpace All rights reserved.」
なお、冥王星探査を終えた「ニュー・ホライズンズ」は、さらに太陽系外縁部に進出し、最終的には10個以上の天体の探査を行う予定との事です。

冥王星探査で発見された7つの新事実

ニュー・ホライズンズが訪れた冥王星は、単なる小さな氷の天体ではありませんでした。

小さな天体(準惑星)なのに5つも衛星を携えている

月よりも小さな天体である冥王星には、カロン以外にヒドラ、ニクス、ケルベロス、ステュクスの4つの衛星が発見されています。

「Image Credit:左からヒドラ、ニクス、ケルベロス、ステュクス(Wikipediaより)」
何故、冥王星がこれだけの衛星を持つ事となったかは明確には解明されていませんが、おそらく冥王星が小天体が密集するエッジワース・カイパーベルト天体の1つであった事で、冥王星の引力に引かれた天体が衛星になったのでは?と考えられています。

不規則な回転をする衛星

冥王星の衛星のうち、最も大きなカロン以外は自転が予測不能な回転であることが確認されています。

「Image Credit:不規則な自転をする衛星・ニクスの想像図(NASA, ESA, M. Showalter (SETI Institute), and G. Bacon (STScI)より)」
これらの衛星は、非常に小型でどれも数十キロ程度の大きさしかありません。
不規則な自転の原因は、冥王星とカロンがお互いの周りを回る連星系となっていることで、冥王星とカロンが重力のダンベルを形成し、質量の小さい衛星たちを不規則に押したり引いたりしているためだと考えられています。
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大気の存在を確認

冥王星には以前から大気があるのでは?と考えられていましたが、ニュー・ホライズンズが訪れたことによりそれが確認されました。

「Image Credit:冥王星の希薄な大気(Wikipediaより)」
大気の主成分は窒素で、冥王星の地表に影響を与えるほど厚くはなく非常に薄い大気であることが判明しています。

地下に海が存在する可能性

冥王星の地下には海が存在する可能性があると言います。
それは、衛星カロンとの潮汐力により地下の氷が温められ、液体になった海のようなモノがあるかも?と言う事。
なお、その海は地表から200キロほど地下の層に、深さが100~170キロもある海が存在する可能性が示唆されており、衛星カロンも同様の事が考えられると言います。

「Copyright ©:BBC News Japan All rights reserved.」

氷の火山の存在

冥王星で発見されたライト山とピカール山という2つの山。この山の山頂には大きなくぼみがあり、ここから氷が噴出している事が確認されています。
これは現段階では推測の域ですが、おそらく火山の下には海が存在し、そこから窒素、一酸化炭素などの凍った物質が圧力で放出されているのではと考えられています。

「Image Credit:氷の火山と思われる山の1つライト山(NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Southwest Research Institute)」
なおこの現象は、太陽系外縁天体で初めて確認された火山活動だと言います。

巨大な氷山?

氷で覆われた冥王星。しかし、その氷の上には多くの山が存在すると言います。
つまり、それらの山は氷に浮かんでおり、地球で言うところの氷山のようなモノだと考えられています。

なめらかな氷の平野

ニュー・ホライズンズが撮影した冥王星の全体像で浮かび上がって来た、メルヘンチックとも思えるハート型の平原。

「Copyright ©:NASA Video All rights reserved.」
このにはクレーターなど存在せず、非常に滑らかになっている氷の平原となっており、1億年以上前に形成されたものが現在も維持されていると言います。

巨大な裂け目の渓谷

なめらかな平原とは逆に、非常にゴツゴツろとした裂け目やひび割れも冥王星の表面で確認されています。
これは、連星系となっている冥王星が引力の影響で膨張したり伸縮した結果、裂け目などが出来たのではと考えられています。

「Image Credit:NASA」
上画像の解説をしますと。
黄色い部分は峡谷で、その中の青い部分が谷。緑色が小さな峡谷で、ピンクが谷、赤色がくぼみとなっています。
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