「1秒で地球を7周半周る」と言ったら光の進むスピードの事を指し、地球上では無敵の速さを誇る光ですが、広大な宇宙において光はそれほど速くなく、むしろ遅すぎると言っても過言ではありません。
では、宇宙で光速というのはどれくらい遅いのか?その現実を検証するとともに、光が遅すぎるのであれば、光の速さを超える物質は存在しないのでしょうか?少し調べてみました。

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現代物理学では光速より速い物質は存在しない?!

秒速30万キロの速さを持つ光。具体的にその速さを説明すると、記事冒頭でもお話したように「1秒で地球を7周半周る」速さであり、地球から約38万キロ離れた月まで1秒チョットで行ける速さを持つのが光ですが、現代物理学では光の速さを上回る質量を持つ物質は存在しないとされており、この事を説明したのがアインシュタインの特殊相対性理論です。

「Image Credit:iStock」
相対性理論では、質量を持つ物質が動くときに運動エネルギーが発生し、速度が上がれば上がるほどエネルギー量は増大されて行くとされています。つまり動く物質を光の速さに近づけていけばエネルギーは無限大に増えて行くため、その限界である光の速さに到達出来る物質は理論上存在しない事になってしまうのです。
事実、光の速さを超える物質は観測(もしくは発見)されていなため、現代物理学においてアインシュタインの理論は正しいとされているのです。

光の速さは宇宙での距離を測るのに便利?!

光の秒速30万キロの速さは、地球上では速さを表す単位としては早過ぎて使いどころがありませんが、広大な宇宙の広さを表すには光の速さをひとつの単位として用いています。
その単位の基準として一般的なのが”光年”という単位。例えば「1光年」とは光が1年間に進む距離の事で、これをキロメートルに直すと9兆4,600億キロという途方もない距離になってしまいますが、それでも広過ぎる宇宙では、光年という単位を使っても何万~何億光年という距離単位は普通に存在します。

「Image Credit:iStock」
また、宇宙での距離を測るときに、太陽と地球の距離を基準としたAU(1AU=太陽と地球の距離1億5,000万キロ)で、主にAUは太陽系内での距離を測る場合に用いられ、他に遠方の天体の距離を示す時に良く使う「パーセク」という単位もあり、1パーセクは年周視差1秒に相当する距離の事で、年周視差a秒の距離は1/aパーセクとなり、年周視差が0.3秒の3.33パーセクで1パーセクは3.26光年に該当し、天体の距離が数千光年以上の時に使われるケースが多いようです。
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秒速30万キロでも光速は宇宙では遅すぎる

地球上では光の速さをインフラに利用し、世界中どこでもリアルタイムに近い通信網を実現し、光=超速くて便利といった印象を持っているかと思いますが、この光を宇宙で活用するとなった場合、秒速30万キロでも”超鈍足”と言っても間違いではないほど遅すぎる存在なのです。
そんな光の遅さをアニメーションを使って具体的に解説している動画があります。


「Copyright ©:Interplanetary All rights reserved.」
動画を観ると光がどれだけ宇宙では遅いのかがわかるかと思いますが、英語表記という事もありますので、以下で少し抜粋して解説してみます。

隣りの惑星でも3分以上かかる

下の画像は動画内のモノですが、地球から隣りの惑星・火星まで光が届く時間を表しています。

「Image Credit:Interplanetary
動画では地球と火星の距離を5,460万キロと表記していますが、これは地球と火星の最接近時の距離で、3分2秒後に地球から放たれた光が火星に到着する事になりますが、地球と火星が最も離れると約4億キロにもなり、その場合、光が届くには20分以上もかかってしまう事になります。

私たちが浴びている太陽の光は8分前の光

続いては太陽から放たれた光が地球に届くまでの時間です。

「Image Credit:Interplanetary
太陽から放たれた光はまず、最も太陽に近い惑星・水星(Mercury)に3分11秒で到達し、次に金星(Venus)に5分59秒、そして太陽から約1億5,000万キロ離れた地球(Earth)に到達するまでには8分17秒かかります。
つまり、私たちが今浴びている暖かい光と太陽の姿は8分以上前ってことになるのです。
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美しい夜空の星々も遠い過去の姿

空気が澄み、輝く星空を見上げると眩いばかりの星空が広がり、幻想的な光景にで心を奪われる人も多いかと思います。

「Image Credit:iStock」
しかし、幻想的な星々の光は全て過去の姿で、近い星の光でも数年、遠いモノだと数千年以上前に放たれた光を私たちは観ている事になるのです。
例えば、肉眼で見える星の中で地球に最も近い星は、約4.6光年離れたアルファ・ケンタウリで、また太陽以外の恒星で最も明るい星のシリウスも約8.6光年離れており、さらには私たちの銀河(天の川銀河)の隣りの銀河であるアンドロメダ銀河に至っては約250万光年も離れているのです。

「Image Credit:アンドロメダ銀河(Wikipediaより)」

光の速さを超えられないのか?

現在の物理学の常識は、アインシュタインの相対性理論が基となる事もあり「光の速さを超える物質は存在しない」とされていますが、それは本当に正しく「光の速さを超えるモノ」は存在しないのでしょうか?
実は「光の速さを超える物質」として理論上の存在ですが「タキオン」と呼ばれる粒子があります。

「Image Credit:iStock」
タキオンとは、特殊相対性理論に反しない範囲内で存在するとされる粒子の事で、常に光速を超える速さを持ち、速くなるほどエネルギーが減ると考えられている仮想上の粒子です。
ですが何故タキオンは特殊相対性理論に反しない(矛盾)いないのでしょうか?
その理由は「質量のある物質は光速を超えられない」のが特殊相対性理論の考え方であり、タキオンの持つ質量は虚数であると考えられているため、光速より速くても矛盾しないという事になるそうなのです。

そんな考えの中でタキオンがそれに該当しているかどうかは不明ですが、実際に光速を超える存在があり、それは「宇宙の広がり」です。
現在も宇宙は膨張を続けておりその膨張速度は光の速さを超えていると考えられています。

「Image Credit:iStock」
宇宙が広がり続けている根拠は、遠い天体ほど天体どうしの距離が離れていっており、これは天体自体が動いているのではなく空間が広がりを続けているとされ、これは「物質の動き」に限定している特殊相対性理論には矛盾していない事になります。
とはいっても残念ながら、どのようにして宇宙が膨張しているか?については謎で、宇宙の膨張速度は最大で光速の3倍以上になるとされています。
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