またまたメディアで大きく報じられ話題になった太陽系外惑星のニュース。
今度は何と!系外惑星に水の存在が確認されたそうなんですが、そもそも地球から遥か遠くにある惑星に水があるかどうかってどうやってわかったのでしょうか?
それに、水があればそこに地球外生命がいるって事になるのでしょうか?
ここでは、メディアでは詳しく説明されなかった事について少し解説してみたいと思います。

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史上初の太陽系外惑星に水発見先はやはり赤色矮星だった!

久しぶりに”宇宙ネタ”で話題になった「系外惑星に水発見」のニュースは、惑星に海や湖が見つかったという事ではなく大気中に水蒸気を検出できたって事のようです。
この水蒸気について具体的な説明はありませんが、大気中に水蒸気があるという事はもしかしたらこの星には地球のような水蒸気の雲があるのかも知れません。
いずれにせよ、史上初で大発見の快挙なのですが、発見された天体は、地球から111光年も離れた場所にあるK2-18という赤色矮星を公転する惑星(K2-18b)との事で、もちろん、この惑星の大気中に水蒸気が検出されたって事は、地表に液体の水がある確率も高いワケで、ハビタブルゾーン内に位置する地球と似たような環境条件を持つ惑星である可能性もあります。


「Copyright ©:HubbleWebbESA All rights reserved.」
しかし気になるのが、惑星の主星(太陽)である恒星が赤色矮星である事であり、それは赤色矮星のハビタブルゾーンを公転する惑星は、必ずしも地球と同じ環境とは言い難い部分があるからです。

太陽とはかなり性質が異なる赤色矮星

今回、水蒸気が検出された系外惑星は、赤色矮星と呼ばれるM型主系列星を公転している惑星の1つであり、一方、私たちの主星である太陽は黄色矮星(GV型)と呼ばれるG型主系列星に分類される恒星です。
この2つの恒星の大きな違いは大きさ(質量)と温度で、太陽の表面温度が約6,000度あるのに対し、赤色矮星の場合4,000度以下とかなり低温で質量も太陽の半分以下しかなく、明るさに至っては太陽の4%ほどしかない非常に暗い恒星です。
しかも届く光も太陽が黄色を主体とした可視光が多いのに対し、赤色矮星は赤みを帯びた近赤外線が主体の光で、日中でも薄い暗い日光が差し水中まではその光が届かない環境が予想されます。

「Image Credit:左が赤色矮星が照らす地表想像図。右が地球(東京大学HPより)」
つまり、これは何を意味するか?というと、同じ太陽であってもその性質はかなり異なり、もし、赤色矮星からのエネルギーを受ける惑星に生物が居たとしても、地球の生物の生態系とはかなり異なる可能性があります。

活発に活動している変光星の赤色矮星

このK2-18という赤色矮星の恒星は、活発な活動を起こしている事も確認され頻繁に巨大な太陽フレアが発生し、それが原因で地球からは明るさが変わる変光星としても分類されている星でもあります。
もちろん、私たちの太陽も活動が活発で度々フレアが観測されていますが、太陽と地球はかなり距離があるため(約1億5,000万キロ)あるため、地球にはそれほど大きな太陽フレアの影響はありません。
しかし、小さい赤色矮星を公転する惑星のハビタブルゾーンはかなり恒星に近い距離(約2,000万キロ)にあり、この距離にある惑星は太陽フレアの影響をかなり受ける可能性も持っています。

「Image Credit:NASA, ESA and D. Player」
上画像のように至近距離で太陽フレアの影響を受けてしまった場合、いくら惑星に水があったとしても生命が生きて行くには過酷な環境である事も予想されるのです。
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系外惑星に水がある事が判明した理由

今回のニュースで多くの人が疑問に思う事。

「何で100光年以上も離れた惑星に水があるってわかったのか?」
ではないでしょうか?

その理由は系外惑星の観測方法にあります。

現在、太陽系外にある惑星の発見のため主に使われている観測方法を「トランジット法」と呼びます。
トランジット法とは、公転する惑星が恒星の前を横切り、恒星の光を一時的に遮断する事で起きる光の強弱を観測する事で系外惑星の有無を確認する手法です。

「Image Credit:トランジット法のイメージ(Wikipediaより)」
さらに、トランジット法では発見された惑星に大気が存在した場合、その大気中を通過する恒星の光を分光観測する事で、ある程度ではありますが大気中の成分分析も行う事が出来るのです。
今回、惑星・K2-18bの大気中に水蒸気が発見されたのも、まさにトランジット法の分光観測によるものでした。
ただ、このトランジット法という観測方法にはいくつかの弱点があります。

トランジット法は赤色矮星の観測にしか使えない?

トランジット法の利点は遠く離れた系外惑星を発見する事に大きく貢献していますが、反面、弱点もあります。
その弱点は、大きく分けて2つほどあり、
まず一つ目が、地球から観測する系外惑星が恒星の前を横切る軌道である事。
これは、地球から観測した場合、全ての系外惑星が恒星の光を遮断できる軌道を通過するワケはなく、それはほんの一部に過ぎません。
実際、地球から最も近い約4.2光年という距離に見つかった、赤色矮星プロキシマ・ケンタウリを公転する地球型惑星のプロキシマbは、恒星を通過する軌道が地球からは見る事が出来ず、惑星の重力で恒星がほんの少しだけ揺れる運動を観測する「ドップラー分光法」という観測手法で発見しています。
ドップラー分光法はトランジット法とは異なり、惑星の存在有無と大きさ質量まではわかりますが詳しい分析はできないのが欠点で、それが原因でプロキシマbは地球から近いにも関わらず、詳細が全くわかっていません。

二つ目は、トランジット法の観測は公転が短周期の惑星向きである事。
今回、大気中に水蒸気が見つかったK2-18bは恒星を30日程で公転している惑星です。
つまり、トランジット法の観測のチャンスが30日に1回巡って来るという事で、詳細な分析結果も比較的早く出す事が出来ます。
一方、同じハビタブルゾーンにある惑星の地球を、太陽系の外から観測すると、1年に1回しかトランジット法で観測する機会は巡って来ないワケで、そのような効率面で考えても、公転周期が短い赤色矮星の観測向きだと言えます。

水がある惑星が見つかっても生命存在には繋がらない理由

最近、系外惑星探査のターゲットとなっているのが赤色矮星です。
その理由は、必ずしも赤色矮星に生命がいる可能性がある事ではなく、前記もしましたがトランジット法の観測方法で見つけやすい事にあります。
また、赤色矮星は宇宙に存在する星(恒星)の約3分の2を占めていると言われるほど多いため、観測のターゲットにしやすいという理由もあるようです。
そんな赤色矮星に見つかった”水のある惑星K2-18b。

「Image Credit:系外惑星「K2-18b」の想像図(Wikipediaより)」
果たしてそこは、一部のメディアが報じている「人類が住める星」なのでしょうか?
それについては、まだまだ詳しい調査が必要ですが、現時点では「住める星」と結論付けるには早過ぎるでしょう。
その理由はいくつかあり、前記したように太陽系とは環境が異なる赤色矮星の恒星系にある惑星である事が第一で、その他に惑星K2-18bが地球型と言っても地球よりかなり大きい、所謂、スーパーアースと呼ばれる惑星に分類される事です。
惑星K2-18bの直径は地球の約2.4倍で、質量は8.9倍もある地球と海王星の中間にあたるサイズの惑星です。

「Image Credit:Wikipedia」
この事により惑星K2-18bはかなりサイズが大きいため、”住む”にはいくつかの懸念が生じて来ます。
  • 地球のような岩石惑星でない可能性
    地球のように表面を岩石で覆われた惑星ではなく海王星のようなガス惑星の可能性。
  • 重力が大き過ぎて住めない
    惑星K2-18bの質量は地球の8倍以上もあります。そのため、自重による重力も大きい可能性があり、もしかしたら地球の数倍もの重力があって、人類がその惑星に降りたら立てないどころか?潰れてしまうかも?
  • 潮汐ロックで生命には過酷な星
    恒星と惑星の距離が近い事によって起きる潮汐ロック。この天体の自転と公転の同期現象により常に昼側と夜側に分かれてしまい、ハビタブルゾーンの惑星であっても昼側は灼熱で、夜側は極寒の環境になってしまい生命が住みにくい星かも知れません。
といった感じで、ハビタブルゾーンに存在する惑星の大気に水蒸気があったとしても、必ずしも生命が居るや人類が移住して住める星とは言い切れず、それどころか、その可能性は限りなく低いと考えるのが妥当ではないでしょうか?
いずれにせよ、この惑星の調査は始まったばかりです。
本当にこの星に水が存在し、生命が住める環境なのか?これからの更なる調査に期待したいモノです。
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