人類が宇宙へ送り込んだ通信可能な人工物として最も遠い場所まで到達しているのが2機の探査機ボイジャー号です。
現在2機のボイジャー号は太陽圏を離脱し星間空間を飛行中ですが、あまりにも地球から離れ過ぎた事による通信の難しさや燃料が残り少なくなっている状況の中でも探査機自体は稼働しており、わずかながらにも貴重なデータを地球に送ってくれています。

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惑星グランドツアーで行われたボイジャー計画

太陽系の外惑星探査を主な目的として1977年に打ち上げられた2機のNASA探査機ボイジャー号。

「Image Credit:同型機のボイジャー1号・2号(Wikipediaより)」
この年に2機の惑星探査は実施された背景には、木星~土星~天王星~海王星の4惑星が偶然にも同じ方向に並ぶという惑星探査を行うには願ってもない好条件に恵まれた事があります。

これを「惑星グランドツアーと」呼び、スイングバイ航法で探査機が上手く軌道に乗ればコスト削減はもちろんの事、燃料を最小限に抑える事に加え4つの惑星をわずか12年ほどで巡る事が出来るという175年に一度しか訪れないというビッグ・チャンスでした。

「Image Credit:東海大学出版 新版地学教室講座「星の位置と運動」より」
さらに、この時のグランドツアーでは土星探査の後に冥王星にも行けるという選択肢もあったのですが、最終的には冥王星探査は断念し代わりにボイジャー1号は土星の衛星・タイタン、ボイジャー2号は天王星、海王星の探査を実施し、現在(2019年)においても天王星と海王星を訪れたのはボイジャー2号ただ一機のみとなっています。
ちなみに、冥王星についてはのちにNASAの太陽系外縁天体探査機「ニュー・ホライズンズ」が探査を行い大成功を収めています。

2機の探査機ボイジャー号の現在地

気になる2機のボイジャー号の現在についてですが、地球を出発したのが1977年ですからかなり遠くまで行っている事が予想されますが、まさにその通りで40年以上の歳月をけけた2019年時点ではボイジャー1号は地球から約220億キロの彼方を飛行中だとされており、ボイジャー2号は地球から約183億キロの地点でいずれも太陽圏を離脱し星間空間に突入しています。

「Image Credit:ボイジャー号の現在地(Wikipediaより)」
なお、上図↑について簡単に解説すると。
  • 末端衝撃波面
    太陽から放出される太陽風と太陽系の外からやって来る恒星間物質がぶつかり、太陽風の速度が極端に低下する地点の事。
  • ヘリオポーズ
    太陽風が進行する限界の境界線。ここで太陽風が星間物質によって完全に止められてしまう地点だと考えられています。つまり、ヘリオポーズの内側が太陽圏(ヘリオスフィア)という事になります。
但し、2機のボイジャー号が太陽圏を離脱し星間空間に突入したといっても、まだ太陽系の外に出たというワケではなく太陽系はまだまだ遠くまで続いており、最遠部にあると言われているのが彗星の故郷と考えられているオールトの雲です。

「Image Credit:国立天文台 天文情報センター
ボイジャー号がオールトの雲に到達するのに後300年はかかると言われており、オールトの雲を抜けて完全に太陽系の外に出るまでにはまだ3万年はかかると考えられています。
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ボイジャーが初観測した星間物質の謎

地球から最も遠く離れたボイジャー1号がヘリオポーズを通過したのは2012年で、一方2018年にヘリオポーズを通過したのがボイジャー2号。
2機には6年の時間差がありますが、この時間差と2機が通過した場所による観測データをを合わせる事により、太陽圏と星間空間の境界がどのような様子なのかが徐々にわかって来ました。
  • 太陽風と星間物質は水と油のような関係
    太陽系の外側の宇宙からは、様々な星間物質がやって来ます。それは時に有害であって生命存在に危険な宇宙線であると言っても過言ではありません。しかし、その宇宙線と太陽風がぶつかり合い水と油のように混ざる事なくヘリオポーズという境界線を作ってくれており、結果として太陽圏は泡のような状態になりそれが太陽と8つの惑星を包み込んで守ってくれています。
  • 強力な星間空間の磁場
    星間物質が持つ粒子には強力な磁場が存在すると考えられていましたが、ボイジャー号の観測によりそれは予想されたより10倍も強力な磁場を持っていました。
  • 星間物質は超高温だった
    ボイジャー2号は、星間物質のプラズマを計測。星間物質はヘリオポーズに近づくとプラズマが減速し密度が高くなり、それにより温度も上昇し、最大で3万度にも達する高温になっている事が判明。
  • 星間物質は太陽圏に侵入して来いる
    ヘリオポーズは太陽風と星間物質の境界ですが、それでも星間粒子が太陽圏に侵入して来ている事を確認しており、逆に太陽風の粒子もまたヘリオポーズの外側に漏れ出している事も確認しています。

これからのボイジャーの行方

ヘリオポーズを通過した2機のボイジャー号は、時速5万キロという猛スピードで離れていっています。
つまり、これからもっと太陽系の深部に向かっていくワケですが、残念ながら2025年頃には完全に燃料切れとなり地球との通信も途絶えてしまい、それ以降は宇宙を放浪するただの鉄の塊となってしまうワケですが、しかし、それはただの鉄の塊ではなく遠い将来ボイジャー号が高度な文明を持つ地球外知的生命体に発見された時に備え人類からのメッセージも携えています。
もちろんそんな事は限りなくゼロに近い事なのでしょうが、それでもロマンを込めて2機のボイジャーには「地球の音」(The sounds of Earth) というタイトルの金メッキの銅板レコード(タイムカプセル)が搭載されており、それには地球上の様々な音や音楽が収録されており地球外文明の異星人に聴いてもらえる事を期待しています。

「Image Credit:ボイジャー号に積み込まれたゴールデンレコード(Wikipediaより)」
ちなみにボイジャー1号はへびつかい座方向へ進路を取っており、約4万年後には赤色矮星「グリーゼ445」まで1.7光年の位置に到達するとみられており、一方のボイジャー2号はいて座方向に向かっており、こちらも約4万年後には赤色矮星「ロス248」の近くを通過すると予想されています。
なお、2機が将来近くを通過する赤色矮星は、今最も生命が存在する可能性があると期待されている恒星系です。
現時点ではこの2つの星に生命存在が有力な惑星は見つかっていませんが、もしかしたらここに異星人が住む惑星がありボイジャーが発見されたら人類からの友好的なメッセージが届くかも知れませんね。
ただ、4万年後に人類が存続しているかどうか?は微妙ですが。
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