木星と土星の主な探査を目的とし開発され、1977年に打ち上げられたボイジャー1号
この無人探査機は無事に任務を終え、現在太陽系を脱出すべく地球の遥か彼方を航行中です。
打ち上げから40年以上を経過した今、ボイジャー1号の現在地はどこで、さらに地球と交信するために必要な燃料残量はどれくらい残っているのでしょうか?
少し気になるところではあります。
ここではボイジャー計画の概要と、現在のボイジャー1号の状況について調べてみました。

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ボイジャー1号は、兄弟機ボイジャー2号と共に、1977年にボイジャー計画として太陽系外惑星の探査を目的に打ち上げられました。

ボイジャー計画の背景

アメリカ航空宇宙局 (NASA) は、太陽系の外惑星探査を主な目的とした「ボイジャー計画」実施し、1977年にボイジャー1号、2号の2機の無人探査機を打ち上げました。
結果、この外惑星探査は大成功!
2機のボイジャー探査機は大きな成果を残してくれ、これまで謎に包まれていた外惑星の素顔を私たちに教えてくれました。

「Image Credit:同型機のボイジャー1号(左)ボイジャー2号(右)(Wikipediaより)」
しかし、無人機とは言え惑星探査には莫大な費用がかかります。なのに何故NASAは、同時期に2機の探査機を打ち上げたのでしょうか?
その理由は、1970年代後半のこの時期は約180年に一度という、木星→土星→天王星→海王星が、ほぼ最短距離で並ぶ、探査を行うには絶好の惑星軌道配列になっていました。

「Image Credit:ボイジャー1号と2号の航路(国立科学博物館より)」
つまり、この180年に一度のチャンスを逃すまいと2機の探査機は外惑星探査に出発したのでした。

ボイジャー1号の太陽系外惑星探査ミッション概要

ボイジャー1号が、太陽系の外惑星および太陽系外の探査計画の1号機として打ち上げられたのが1977年9月5日の事。
それから約1年半後の1979年3月に第一の探査目的地である木星軌道に到達。
これまで未知の惑星だった木星と、その衛星の観測を行ったボイジャー1号は数多くの発見をし、その中でも最大の発見と言えるのが、地球以外の太陽系天体で初めて見つかった活発な火山活動をする衛星・イオの存在でした。

「Image Credit:活発な火山活動をする衛星・イオ(左)と木星の大赤斑(右)(Wikipediaより)」
木星探査ミッションを終え、次に向かったのが太陽系で木星の次に大きい惑星・土星です。

土星到達は、木星探査成功からさらに1年半後の1980年11月。
土星では、その特徴的な環の詳細な探査をし大気が存在している衛星・タイタンの調査も行いました。

「Image Credit:土星とそのリング(左)と土星の衛星・タイタン(Wikipediaより)」
この土星探査を終了したボイジャー1号は、外惑星探査任務も終了。

そして向かったのは、次のミッション。
それは、終わりのない宇宙の旅・星間ミッションでした。
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ボイジャー1号の最後の任務・星間ミッションとは?

ボイジャー1号および2号共に与えられた最後の探査ミッションとは、太陽圏を離脱し宇宙空間を彷徨う果てしなく長い旅を続ける事です。

ただ、ボイジャー号はただ太陽圏を離脱するのが目的ではなく、太陽圏を離れる際に通過する太陽風の末端衝撃面「ヘリオシース」や、太陽風と太陽系外から飛来する星間物質の磁場の境界面「ヘリオポーズ」を検出する事でした。
このミッションについては2012年8月に検出に成功し、このときはじめて太陽圏を離脱したことを示すヘリオポーズ到達が確認されました。

「Image Credit:Wikipedia」

ボイジャー1号の現在地

2012年にヘリオポーズに到達したことが判明したボイジャー1号は、現在人工物としては最も地球から離れた位置にあり、現在も時速61,500キロという超高速で太陽系を離れつつあります。
2023年末時点でのボイジャー1号の現在地は、地球からの距離約245億万キロの地点を航行中と想定されており、この距離から地球に交信(電波)するとしたら約22時間半もかかると言います。

「Image Credit:NASA/JPL-Caltech」
ちなみに、地球から200億キロ以上という距離はヘリオポーズには到達していますが、太陽系の最端部・オールトの雲に到達するまでには、まだ数万年かかると考えらています。

「Image Credit:国立天文台 天文情報センター」

ボイジャー1号のもう1つのミッションとは?

ボイジャー1号には、太陽圏外で将来遭遇するかも知れないと、期待を込めた地球外知的生命体へのメッセージが搭載されています。

【人類からのメッセージが収録されたゴールドディスク】

「Image Credit:Wikipedia」
このゴールドディスクはボイジャー2号にも同じモノが積まれており、地球外知的生命体(異星人)に向け、地球上の様々な音や世界各国の民族のあいさつ等が収録され、さらにボイジャー号が飛んできた場所・地球はどこにあるか?位置を示す簡単な地図も積まれています。
しかし本音では、搭載されたゴールドディスクを、本当に存在するかどうかもわからない異星人が見つけてくれるとは思ってはいないでしょう。
これは、あくまでも広大なる宇宙へのロマンを込めての積載物であるため、おそらくこのミッションは失敗に終わるモノと思われます。

ボイジャー1号は地球と交信出来ているのか?

40年以上も前に地球を飛び立ったボイジャー1号ですが、現時点でも地球と交信出来ている状態を維持しています。
通常の無人探査機は機体に取り付けられた太陽電池で電力を補いますが、ボイジャー号のような深宇宙を探査する探査機は、太陽光での電力供給が難しいため原子力電池を使用しています。
この原子力電池の寿命は数十年持つと言われ、ボイジャー1号に積まれた燃料もまだかろうじて残量があり、なんとか地球と交信は出来ていて、その交信も後10年ほどで燃料切れとなり交信も途絶えると思われます。
また、残念ながらこの燃料の残量では、太陽系最端部のオールトの雲まではたどり着いても誰にもわかりません。
オールトの雲に到達し、本当の意味で太陽圏を離脱する頃のボイジャー1号は、人工物ではありますが単なる宇宙の漂流物となっているでしょう。
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