ブラックホールと聞くと、何でも吸い込んでしまう怖い天体だと思っている人は多いかと思います。
私たちが夜空を見上げても、そんな恐ろしい天体なんて全く見えず、宇宙は光輝く星ばかりで「ブラックホールなんて本当にあるの?」って、その存在について疑問に思ってしまうかも知れません。
実際、ブラックホールの存在が確認されたのはつい最近で、それまでは存在自体を否定する科学者たちも多かったくらいでした。
では、ブラックホールってこの宇宙にどれくらい存在するのでしょうか?
この事について驚愕する最新の観測研究結果が発表されましたので、ご紹介して行きたいと思います。
ブラックホールってどんな天体なの?
まず、今回発表された研究結果をご紹介する前に、ブラックホールっていったい何なのか?について解説します。「Image Credit:iStock」
一般的に、多くの人がイメージするブラックホールは、上画像のような宇宙空間に開いた巨大な穴みたいなモノを想像するかも知れません。
しかし、ブラックホールは”穴”等ではなく地球や太陽と同じ丸い天体であり、それを具体的にイメージしたモノが下↓の画像になります。
「Image Credit:NASA」
この画像は、NASAが物理的見解からブラックホールをCGアニメーションで表現したモノで、中心部の黒い球状の天体がブラックホールの本体であり、その周りを取り巻く黄色やオレンジ色の渦が、降着円盤と呼ばれるブラックホールを取り巻く超高温の塵やガスの流れです。
そんな降着円盤は、ブラックホールを取り巻いて渦を形成しているのですが、ブラックホールの重力があまりにも強大なため、重力の歪みで後方部の渦まで周り込んで見えています。
つまりブラックホールとは、強過ぎる重力で空間がゆがんでしまうほど凄まじく密度の高い天体であり、その強重力により光さえも脱出出来ないため、目には見えない黒い色で表現しているのです。
ブラックホールにも種類がある
現在の考えでは、ブラックホールは太陽質量の30倍以上ある恒星が寿命を終えた時の重力崩壊で誕生するとされており、この時に形成されるブラックホールの事を「恒星質量ブラックホール」と呼び、質量は太陽の3~10倍程だと考えられています。また、恒星質量ブラックホールより巨大なブラックホールは「中間質量ブラックホール」と呼び、太陽質量の10倍~数十倍はあるとされ、その形成のメカニズムは良くはわかっていませんが、おそらくは恒星質量ブラックホール同士が合体融合して形成されたのでは?と考えられています。
そしてブラックホールには、さらに巨大なモノも存在し「超大質量ブラックホール」と呼ばれ、太陽質量の数万倍~数百億倍と想像を絶する巨大なブラックホールも宇宙には存在しています。
なお、この超大質量ブラックホールは、私たちの太陽系が属している銀河系(天の川銀河)を含め、ほぼ全ての銀河の中心に存在すると考えられており、天の川銀河の中心にも太陽質量の400万倍以上あるとされる「いて座A*」と呼ばれる超大質量ブラックホールがある事がわかっています。
「Image Credit:実際に撮影された「いて座A*」(Wikipediaより)」
ちなみに太陽の質量は地球の約33万倍ありますので、ブラックホールの質量が如何に巨大なのか?わかるのではないでしょうか。
宇宙にブラックホールはどれくらいあるの?
最近の観測研究でブラックホールは珍しい存在ではなく、むしろ宇宙には普通に多く存在している事がわかって来ており、私たちの銀河系にも数億~数十億個のブラックホールがあるのではないか?とも推測されているようです。「Image Credit:YouTUBE」
さらに2021年、ヨーロッパ各国(9カ国)にある52カ所の数千もの小型アンテナを連携させた世界最大級の電波望遠鏡「LOFAR(低周波電波干渉計)」で観測したデータを、スーパーコンピューターを用いて北天の空(宙域)をブラックホールが見えるよう可視化した星図が作成されています。
「Image Credit:LOFAR/LOL Survey」
その可視化した星図が上画像↑↑なのですが、一見、夜空に広がる無数の星々のようにも見えますが、実はここに写っている白い点全てがブラックホールであり、しかも全て超大質量ブラックホールだという事なのです。
この星図に写っている超大質量ブラックホールの数は2万5,000個以上とスゴい数なのですが、撮影された範囲は北天の4パーセントぐらいだと言います。
想像を絶する超大質量ブラックホールの数の多さ。これに恒星質量ブラックホールと中間質量ブラックホールが加わればどれくらいの数になるのでしょうか?考えてみると恐ろしくもなるのですが、幸いな事に私たちの太陽系周辺にはブラックホールは存在していないのは事実ですし、もし太陽系の近くにブラックホールがあったとしたら、もしかしたら地球に生命は誕生しなかったかも知れません。