以前もこのサイトで壮麗で神秘的な天体たちをご紹介しましたが、今回はNASAが運営している約100億ドルの費用を費やして建造された、超高性能宇宙望遠鏡ジェイムズ・ウェッブ(JWST)が撮影した最新(2023年度版)天体画像をいくつかご紹介します。
今回ご紹介するJWST撮影の天体画像は、鮮明で息を呑むような画像はもちろんですが、中には摩訶不思議な天体も撮影され公開されています。
あまりにも完璧な「?」マーク天体!その正体は?
まずご紹介するのが、冒頭でも触れました”摩訶不思議な天体”画像です。「Image Credit:NASA, ESA, CSA. Image Processing: Joseph DePasquale (STScI)」
上画像↑↑の天体は、地球から「ほ座」の方向約1,470光年離れた位置にあるハービッグ・ハロー天体「HH 46/47」です。
JWSTの近赤外線カメラ(NIRCam)」で撮影された「HH 46/47」は、誕生してからまだ数千年しか経過していない、2つの恒星から成る”生まれたての星”のため、中心で輝く星双方からガスや塵のジェットを放出しているのが見て取れます。
この画像だけでも、生まれたばかりの美しい恒星の姿を見る事が出来ますが、ここで注目していただきたいのが、上画像の赤枠で囲まれた非常に小さい領域で、この部分を拡大したのが下画像↓↓になります。
「Image Credit:NASA, ESA, CSA. Image Processing: Joseph DePasquale (STScI)」
画像の中央斜め下に映し出された、あまりにも完璧な「?」はてなマークと言えるこの天体。そのため合成画像等ではないか?と疑ってしまいますが、紛れもなく本物の天体だと言います。
これが本物の天体なら、いったいどんな天体なのでしょうか?
この天体について専門家たちは、まだ正体は不明と言いながらも「おそらく合体のプロセスにある2つの銀河」ではないか?と推測していると言います。
なお、この「?」はてなマーク天体までの距離も不明で、地球からの距離が遠くなればなるほど光の波長が赤くなる事から、赤色で輝くこの「?」マークは、かなり遠い深宇宙にある天体ではないか?と考えられるそうです。
地球から近い分子雲複合天体
続いてご紹介するのが、地球から「へびつかい座」方向約390光年の距離にある「へびつかい座ロー」と呼ばれる天体。「Image Credit:NASA, ESA, CSA. Image Processing: Joseph DePasquale (STScI)」
この天体は地球から最も近い星形成途中にある領域で、この中には若い星(恒星)が約50個含まれており、これらの星すべては太陽と同じ程度、または太陽より小さな質量の恒星が形成されつつあると言います。
ガスと星の煌びやかな銀河
地球から「おとめ座」方向約1,700万光年にあるスと星の煌びやかな集合体の棒渦巻銀河「NGC 5068」。「Image Credit:ESA/Webb, NASA & CSA, J. Lee and the PHANGS-JWST Team」
この画像は銀河全体を撮影したモノではなく、その中心付近を捉えた画像で、「NGC 5068」を形成している数多くの星々や、その内部で誕生した若い星に照らし出されたガス雲をJWSTは見事に捉えています。
約4000年前の質量放出で誕生したリング星雲
アマチュアの小口径望遠鏡でも見る事が出来るメシエ天体のひとつ。地球から「こと座」方向約2,600光年の距離にある有名な惑星状星雲「M57」。「Image Credit:ESA/Webb, NASA & CSA, J. Lee and the PHANGS-JWST Team」
惑星状星雲「M57」の正体は、寿命が尽きた恒星がその質量の大部分を宇宙空間に放出した姿がこのような形状を生み出しているといい、この質量放出が起こったのは約4,000年前と、天文的な時間ではつい最近の事で、リング状の中心部ではやがて白色矮星が誕生すると考えられています。
明瞭な渦巻腕を持つメシエ天体の銀河
地球から「うお座」の方向約3,200万光年の距離にある渦巻銀河「M74」も、アマチュアの小口径望遠鏡でも見る事が出来るメシエ天体で、「ファントム銀河」とも呼ばれています。「Image Credit:ESA/Hubble&NASA,R.Chandar)」
はっきりと目立つ”らせん”を描くような構造のこの銀河は、ガスや雲、塵、星形成領域が存在しており、赤外線で捉えられた赤色は塵、明るいオレンジ色は塵の中でも温度が高温になっている領域。そして銀河中心部分や渦巻腕に分布する星々からの光は青色で示されています。
以上が今回ご紹介したジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が捉えた最新の天体画像ですが、2021年から運用を開始されたこのJWSTは、最低でも10年は運用出来るとの事。すなわち、この宇宙天文台が撮影し地球に届けてくれる鮮明な宇宙の情報は、今後もまだまだ続くというワケです。