北半球・南半球の両方を合わせた全天の星空において、最も明るく輝く恒星である一等星は21個しかありません。
その中の一つ「フォーマルハウト」という星をご存じでしょうか?
フォーマルハウトは、日本では秋に見られる唯一の一等星なのですが知名度はいまひとつ?!その理由はこれからご説明しますが、でもこの星は想定外の宇宙の現象が見られる天体としても、科学者たちの間で大きな注目を浴びているのです。

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フォーマルハウトはどんな星?

フォーマルハウトが一等星として明るく見える理由。それは地球からかなり近い約25光年という距離にある事と、太陽よりも若く大きな恒星(大きさは太陽の約1.8倍、質量は約2倍のA型主系列星)であるため、表面温度(約8,300℃)が高く明るく輝いている事にあります。
なお、フォーマルハウトは激しい勢いで水素を放出しており、その光度は太陽の約15倍もあり、そのため太陽よりも若い恒星ですが、寿命は短く10億年程ではないか?と考えられています。

「Image Credit:フォーマルハウト(Wikipediaより)」
フォーマルハウトで2008年に世界で初めて直接撮像(可視光)で系外惑星が発見されたとの発表がありましたが、その後の詳しい観測で、フォーマルハウトを周りを囲む塵の雲(小天体)の衝突で発生した光点が惑星のように見えたのではないか?と疑問が沸き起こり、実際、現在においてその光点は消失している事から、やはり惑星だと思われた光点は小天体の衝突による一時的な輝きだったとの見方が強まっています。

一等星フォーマルハウトが知名度が低い理由

フォーマルハウトは「みなみのうお座」にある、秋の星空で見られる唯一の一等星で、全天で21個ある一等星の中では18番目に明るい星です。
一等星というと、おおいぬ座のシリウスや、七夕で知られること座のベガ(織姫星)やわし座のアルタイル(彦星)等が有名ですが、同じ一等星でもフォーマルハウトと聞いてもピンと来ない人は多いかと思います。しかも秋に見られる唯一の一等星とあらば、もっと知られていてもおかしくはないハズなのですが、何故か知名度は高くない。それはどうしてなのでしょうか?

「Image Credit:国立天文台とYahoo!JAPANきっずより加工」
その理由は上画像で見ていただければわかるように、日本の秋の星空の中では、南の空のかなり低い位置(最大で16度程の高さ)で見えるため、なかなか見つけづらいというのが知名度の低さの要因かも知れません。
しかもフォーマルハウトがある「みなみのうお座」は「みずがめ座」の下にある小さな星座であり目立たない。個人的な見解ですが、それも知名度の低さの一つではないでしょうか?
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フォーマルハウトに見つかった科学者たちが驚く光景

地球から約25光年と近いにも関わらず、まだ謎に満ちた恒星だったフォーマルハウトですが、最新鋭の宇宙望遠鏡・ジェームスウェブによってその姿が鮮明に映し出され、科学者たちを驚愕させているようです。

「Image Credit:NASA,ESA,CSA;IMAGE PROCESSING:ANDRÁS GÁSPÁR,UNIVERSITY OF ARIZONA,AND ALYSSA PAGAN,STSCI)」
上画像↑↑がジェームスウェブ宇宙望遠鏡が捉えたフォーマルハウトの姿で、この恒星はまだ生まれて4億年ほどしか経っていないと考えられ、フォーマルハウトの周りには砕けた岩石や氷や塵からなるデブリが取り囲んでおり、ジェームスウェブによって3本の帯(内側・中間・外側)が鮮明に映し出されています。
ちなみに上画像の中心にある黒い部分は、周囲の物質がよく見えるよう、あえて恒星の光を遮って撮影されたためこのような画像になっています。

この3本の帯は、これから惑星系を形成する段階で、長い時間をかけて岩石や氷、塵が衝突し惑星を形作っていくモノと考えられています。

「Copyright ©:NASASpaceNews All rights reserved.」
つまり、まだ惑星系形成の初期段階にあるフォーマルハウトにおいて、既に惑星が存在しているという事は考えづらく、今後数億年という長い年月を経て惑星が造られていくと考えられており、科学者たちも惑星系がどのように形成して行くのか?という光景を間近で見られると興奮していると言います。

もちろん、このフォーマルハウトにおいて、実際に惑星が形成されるまで数億年の年月を要すると思いますが、それでも惑星形成の謎を解明する手掛かりとなる期待度は高く、今後もこの恒星系に目が離せないのは事実のようです。
そしてまた、今後フォーマルハウトに地球似の惑星が誕生したとしても、その惑星に生命が誕生するには、主星であるフォーマルハウトの寿命はあまりにも短すぎるようです。
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