特異で究極の天体とも言えるブラックホールですが、この宇宙にいったいどれくらい存在していると思われるでしょうか?
百個?それとも千個・・・?私たち人類が把握しているブラックホールの数はその程度かも知れませんが、理論上はもっと多く、と言うか、膨大で数え切れないほど多くのブラックホールが宇宙には存在していると考えられています。
その中でも特に多いとされるのが恒星質量ブラックホールで、その多くは休眠状態にあると言います。
ブラックホールが休眠?いったいどういう事なのでしょうか?今回は最新の研究で判って来たブラックホールについて調べてみました。

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恒星質量ブラックホールとは?

宇宙には無数のブラックホールが存在しているとされており、その多くは恒星質量ブラックホールだと考えられています。
恒星質量ブラックホールとは、ブラックホールの中でも最も軽い質量に分類されている天体で、星(恒星)の重力崩壊である超新星爆発によって誕生したブラックホールの事を指します。

「Image Credit:ESA/Hubble, Digitized Sky Survey, Nick Risinger (skysurvey.org), N. Bartmann」
星がブラックホールになるのには条件があり、それは質量が太陽の30倍以上ある事で、このような大質量の恒星が寿命を終え超新星爆発を起こした際、極限を超えた重力崩壊で、限りなく星の中心へ向かって重力が落ち込んで行きます。この重力崩壊によりこれまで星だった中心部は光さえも脱出出来なくなる、極めて強重力で高密度な天体であるブラックホールが誕生し、こうして生まれた太陽質量の10倍程度以下のブラックホールを「恒星質量ブラックホール」と呼んでいます。

「Image Credit:重力が1点に集中し落ち込むイメージ図(YouTubeより)」

「Copyright ©:AstroSphere All rights reserved.」

ブラックホールはどうやって見つける?

光さえも脱出出来ないブラックホールは、当然ながら光を放つ事がないため目には見えず、見つけ出す事は極めて困難です。
それでは、広い宇宙の中からどのようにしてブラックホールを見つけ出すのか?
その方法について、史上初めて発見されたブラックホール「はくちょう座X-1」を例に挙げて解説すると。

「Image Credit:はくちょう座X-1の想像図(Wikipediaより)」
地球から「はくちょう座」方向約7,300光年の位置にある「はくちょう座X-1」という恒星系には、巨大な青色超巨星がある事は判っていましたが、詳しい観測を行っていくと、近く(太陽と水星の距離にも満たない)にかなり小さい伴星と思われる天体があり、その伴星からX線が放射されている事がわかったのですが、同時に青色超巨星が揺れ動いている事も判り、これは巨大な重力を持つ伴星の影響で揺れ動いているのではないか?と推測され、さらに青色超巨星のガスが伴星に向かって流れ出ている事も判明。
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このガスが伴星の強烈な重力で摩擦を起こし、X線が放射している事も観測の結果判明し、これにより史上初めて見つかったブラックホール候補(恒星質量ブラックホール)として知られるようになったのです。

「Image Credit:ブラックホールを取り巻く降着円盤(NASAより)」
このように、ブラックホールが取り巻くガスや塵から放たれるX線や赤外線等、または磁力線の影響によると思われるジェット放出を検出する事で、”活動的ブラックホール”は見つけ出す事が出来るのです。
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観測出来ない膨大な数の休眠ブラックホール

活動的なブラックホールは、その周りを降着円盤と呼ばれるガスや塵が高速で周り摩擦熱での電磁放射やジェット放出が起こり、それを検出する事でブラックホールの位置を特定出来るのですが、全てのブラックホールに降着円盤があるワケではなく、多くは降着円盤等が存在せず電磁放射やジェット放出も起こらない、目には見えない”休眠状態”のブラックホールであると考えられています。
ただ、この休眠ブラックホールも稀に発見する事が出来、近くに観測対象の天体があった場合等に発生する空間の歪みで休眠ブラックホールの位置を特定する事が出来ます。

「Image Credit:AFP PHOTO/EUROPEAN SOUTHERN OBSERVATORY (ESO)」
検出が極めて困難な休眠ブラックホールですが、これらは宇宙全体では無数にあると考えられており、天の川銀河内だけでも休眠を含めたブラックホールは、少なく見積もっても1億個以上は存在すると考えられています。

休眠ブラックホールは太陽系の近くにもあるかも知れない

目には見えず観測が極めて困難な休眠ブラックホール。しかし人類の観測技術は飛躍的に向上し、目には見えなくとも星の動きやわずかな重力場を検知して休眠状態にあるブラックホールを特定する事にも成功しており、その観測によって地球からたった150光年という距離に「これはブラックホールじゃぁないか?」と推測される天体も見つかっています。

「Image Credit:ヒアデス散開星団(EarthSky)」
その場所は太陽系に最も近い散開星団(ヒアデス散開星団)の中で検出されており、ブラックホール候補は2~3個はあるとの事。もちろんまだ特定されたワケではありませんので、今後の詳しい観測で明らかになっていくかと思いますが、もしかしたら休眠ブラックホールはもっと近くに存在する可能性もあるかも知れません。
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