太陽系の天体の中で、表面(地表)に水で満たされた海が存在する天体は地球だけで、他の天体たちはというと、クレーターに覆われた無機質な地表や、赤い酸化鉄の岩石や砂が広がる地表、さらには厚い氷で覆われた極寒環境の地表等、それらは海の存在など微塵も感じられない環境を持つ星ばかりです。
しかし最新研究によると、表面ではなく地下深くに海が存在している。または海が存在する可能性が高い天体が判明しており、しかもそれは意外に多いかも知れないのです。
では、そんな”地下に海”がある太陽系天体はどれくらいあるのでしょうか?そしてそこに生命存在の可能性がある期待の星はどれくらいなのか?期待度が高い順に8個ほど挙げてみたいと思います。
① 近いうちに生命が見つかるかも知れない天体「エウロパ」
まずご紹介するのは木星の衛星エウロパです。表面を氷に覆われた極寒環境のエウロパですが、その厚い氷の下には液体の海が広がっており、それを示す証拠にエウロパの表面から水蒸気が噴き出している事が確認されています。
「Image Credit:spacetelescope」
上画像↑↑はハッブル宇宙望遠鏡が撮影したエウロパの様子で、南極付近から噴き出す水蒸気らしきモノがハッキリと捉えられています。
エウロパには現在も探査機が向かっており、2020年代後半から2030年代前半にかけてエウロパを含む木星の氷衛星を探査する計画になっています。
この探査次第では、近いうちにエウロパ地下海に生命の痕跡を見つける事が出来るかも知れません。
② 最も生命存在が期待出来る地下海を持つ天体「エンケラドゥス」
土星の衛星エンケラドゥスもまた表面を厚い氷で覆われており、直径500キロ程と小さな天体ですが、その地下にも小さな天体にはそぐわないほどの広大な海が存在している可能性があると期待され、しかもエウロパ以上に生命の存在が期待されている星です。その理由は、エンケラドゥスでもエウロパ同様に地表から噴き出す間欠泉が確認されており、その高さは9,000キロにも及ぶとされています。
「Image Credit:JWSTが撮影したエンケラドゥスの巨大な水柱(NASA,ESA,CSA,STScI,G.Villanueva(NASA’s Goddard Space Flight Center),A.Pagan(STScI))」
また、エンケラドゥスの噴出物には生命の誕生に不可欠な要素を含む有機分子が含まれている事も判明しており、生命存在の期待が大いに高い天体として期待度はエウロパ以上と言われているのですが、エウロパよりも遠い距離にある土星の衛星であるため、探査に行くにはかなりハードルが高いようです。
③ 赤い大地が広がる「火星」の地下にも海がある!?
最も多くの探査機が送り込まれ、かなり詳細な情報が判って来た地球のお隣りの惑星「火星」。火星の表面自体は赤い酸化鉄に覆われた地表そのものですが、詳しい調査の結果、その地下には大量の水が埋蔵されている事が判明。その埋蔵量は火星全体を覆う程だと推定されており、今後予定されている有人探査等で採掘も検討され、もしかしたら生命の痕跡も見つかるかも知れないと期待度も高まっています。
「Image Credit:火星の全体が画像と表面下1~5mの水の氷の分布図(NASA/JPL-Caltech/Planetary Science Instituteより)」
④ 太陽系最大の衛星「ガミメデ」にも地下の海
木星最大であり太陽系でも最大の衛星「ガミメデ」。この星の地下にも海が存在し、その水の量は地球の海より多い事が確認されたと発表されています。「Image Credit:NASA/JPL-Caltech」
ガニメデにも現在探査機が向かっており、エウロパと同様に2020年代後半にはその真実が明らかになる事が期待されています。
⑤ 土星最大の衛星「タイタン」の内部海
土星の衛星タイタンには厚い大気があり、雲が湧き雨が降り、そして大地には川が流れ湖もある事が判っていますが、それは水ではなくメタンやエタンと言った、マイナス180度以下という超極寒でも液体の状態を維持出来る炭化水素の循環で生まれています。そんなタイタンでも内部に液体の水の層があるらしいことがわかったと言います。
「Image Credit:NASA/JPL」
衛星タイタンにあるとされる内部海は岩と氷の混ざったシャーベット状の層ではないかと推測されており、完全な液体も水ではない可能性が高いと考えられています。
⑥ 最果ての天体「冥王星」にも地下の海
地球から50億キロ以上と”最果ての天体”と呼んでもおかしくないほど遠い場所にある冥王星。表面温度はマイナス200度以下というこの星もまた、地下に液体の水で出来た海が存在する可能性があると言います。「Image Credit:東京工業大学H.P.より」
⑦ 準惑星「ケレス」の地下に活動中の海
火星と木星の間の軌道に多くの小惑星等の天体が集まる小惑星帯(アステロイド・ベルト)。その中に準惑星「ケレス」はあります。「Image Credit:NASA/JPL」
ケレスの表面には明るく輝く謎の領域があるのですが、NASAの探査機ドーンがケレスまで行き調査を行ったところ、輝きの正体は塩の1種である炭酸ナトリウムである事が判明。同時にこの炭酸ナトリウムはケレスの地下から湧き出している事も判り、地下には活発に活動する地熱をエネルギーとする塩水の海があると考えられています。
⑧ 意外?土星の衛星「ミマス」にも地下に海
別名をデス・スターと呼ばれる土星の衛星ミマス。別名の由来は、その姿が映画『スター・ウォーズ』に登場する宇宙要塞「デス・スター」に似ている事からで、ミマスの直径の3分の1に及ぶ巨大なハーシェル・クレーターが特徴的で、全体をゴツゴツとしたクレーターで覆われた岩石と氷で出来た天体である事が伺えます。「Image Credit:Wikipedia」
そんな衛星ミマスですが、最近の研究で軌道周回中に発生する激しい揺れ「秤動(ひょうどう)」が原因で地下に摩擦が生じている結果、潮汐力が発生し地殻の下が液体の海で占められている事が判明しています。
他にも地下に海が存在する星は多数か?
ここまで地下に液体の水(海)が存在する、もしくはその可能性がある太陽系天体をご紹介して来ましたが、他にも地下海がある可能性が示唆されている天体はあり、木星の衛星カリストや天王星の衛星アリエル、ウンブリエル、チタニア、オベロン。海王星の衛星トリトン等もその候補に挙がっています。「Image Credit:木星の衛星「カリスト」(Wikipediaより)」
生命が育まれるのは、地球のように表面に液体の海がある事が条件というワケではなく、もしかしたら地下に広がる海にも生命が生まれ進化しているかも知れません。
その証拠を掴むのはそう遠くない未来だと考えられており、一部の科学者たちは、10年以内には地球以外で生命に溢れた海がある環境「オーシャン・ワールド」は必ず見つかると断言しています。